【祝祭】~季節外れのハロウィンパーリー~改

中編5
  • 表示切替
  • 使い方

【祝祭】~季節外れのハロウィンパーリー~改

※ この話はアワードを受賞したロビンM太郎.comに贈ります。

興味のない方はスルーしてください。

nextpage

・・

こんな事になるなんて・・・

・・ひっぐ・・

俺は、何のために・・

くっ!・・

nextpage

俺は、そっと強制的に被せられたマスクで涙を拭った。

俺の中華店。今日は貸切にしてほしい。

そう連絡が入ったのは、つい先日の事だった。

nextpage

・・あ~ちっと貸切は難しいっすねぇ~

そう答えると、受話器の向こうから聞こえてきたのは「あら・・・出来ないと言うの?」と、あくまでも静かに且つ有無を言わせない口調の女性だった。

nextpage

「困るのよね。貴方の店じゃないと、みんなが集まらないっていうのよ。」

・・俺はしばしの沈黙の末に答えた・・

「え、えと、何名様でお越しの御予定ですか?」

『貸切に出来るかどうかで人数変わるから。先にお願い』

nextpage

「あ・・はい。か、かしこまりました。座敷でよろしいんスよね?」

受話器の向こうの女性が、とてつもなく恐ろしく感じた俺は、<貸切>にすることを約束してしまった。

「・・ありがとう。ふふっ。。あとで人数は連絡するわ」

nextpage

・・そして迎えた、今日この日。

弟分の龍が、血相を変えて店に飛び込んできた。

「あ、兄貴!!大変ッスよ」

nextpage

何事か聞いてみると・・

店の少し手前にズラリと並んだタクシーから、それぞれに扮装した人達が降り立ち、集合してるのだという。

・・俺は、何やら背中を伝う汗がこれから起きることが予想され、頭をブンブンと横に振った。

nextpage

『ま。。まさかな。。』

「おい!龍!お前、ウチのお客かどうか確かめてこい!」

「え~!兄貴!そりゃナイっすよぅ~」

龍は涙目になっていたが、外へ放りだした。

nextpage

「兄貴・・お客様をご案内してきました」

なんと、龍は懐かしの特攻服を着せられていた。

背中にデカデカと名前が刺繍されていた。

nextpage

聞き覚えのある女性の声がする。

「こんばんわ。今日は貸切にしてくださって、ありがとう」

既に扮装しているのだろう。。

その女性は、昔大反響を呼んだ<積み木崩し>の主人公まがいの様相だった。

nextpage

俺の直感が騒ぐ。

この女性だけは怒らせてはいけない・・と。

続いて入ってきたのは、真っ白な特攻服にストレートロング、真っ黒な口紅をした釘バットを肩に担いだ女性。

nextpage

俺の胸の中の警鐘は鳴りっぱなしだ。

(こ、こいつも怒らせちゃいかん・・)

次々と店内に入ってくる。

nextpage

女性なんだろうが、全身が痛いのか、ミイラ男の扮装、M.ジャクソンの扮装。黄色いロボットに、俺の愛犬だったパグの扮装。双子なのだろうか?コケシの扮装の女性も二人と、猫か?ネコであろう扮装もジャクソンに寄添っている。

nextpage

更に向日葵の花冠を付けた妖精姉妹、ビジュアル系バンドに居そうなドラキュラ。鬼太郎のオヤジもいる。

可愛いのはピノキオだが、極めつけは世界的に有名なスナイパーまで‥眉間を撃抜かれそうだ。‥コワイ‥ヒ‥

nextpage

全員が、次々と座敷に上がっていく途中で、俺は背後に人の気配を感じた。

『!!!!!!』

押し殺した声が耳元で囁く。

「これ、外しちゃダメよ?ロビちゃん?」

nextpage

俺は・・俺は・・

何を被せられたのか???

顔を手探って何とか把握しようとした。

nextpage

『!!これは!!』

そう思った瞬間、背後から龍の声が聞こえた。

「兄貴・・・スクリームにされましたね・・」

・・やっぱりか。。やはりそうなのか。。

nextpage

背後からマスクを被せられた違和感と共に、何かをスッポリと全身に羽織らされたのだが・・

やはり・・・スクリームだったのか。。

nextpage

座敷の方から、あの有無を言わせない女性の声がした。

「ロビちゃ~~ん!例のカラス炒飯、人数分ね♪」

・・へ、へ~~い!!

うっかり元気よく返事をしてしまったが、俺は突き指したばかりだ。

nextpage

だが、逆らうことは出来ない。

背後に、どうしても釘バットが控えてる気がしたからだ。

案の定、また耳元で囁かれる。

「ロビちゃん?出来るよね?」

nextpage

は、はいっ!何としても仕上げます!少々、お時間掛かっても・・・

「・・掛かっても?聞こえないわぁ~?」

す・す・すぐにお持ちします。。。

そう答えるしかなかった。

nextpage

何とか注文された『カラス炒飯』を届けると・・・

それまで、ワイワイしていた座敷が、静まり返った。

・・・俺・・・どうなるんだろう・・ひ・・

nextpage

頼みの綱の龍さえ、姿が見えない。

どうすりゃいいんだ!!!この圧迫感!

次の瞬間。。

nextpage

「「「おめでとう!ロビちゃん!」」」

一斉に声が上がり、クラッカーが打ち鳴らされた。

(え。。。まさかとは思ったが。。これ。。)

nextpage

ジャクソンの扮装と、ネコ扮装が、踊りだした。

華麗なるムーンウォークで。。

ダンスの合間に「ポォウッッッ!\(゜∀。*)ノ」っと叫ぶ。

キレキレのムーンウォークだ。

そこには、愛犬まで加わってゴージャス極まりない。

nextpage

コケシ姉妹(?)は上品にジャスミンティを飲んでいる。

釘バットは、俺の背後が好きらしい。

すぐに後ろから、耳打ちする。

「ロビちゃん?解ってるわよね?」

nextpage

(まさか・・・このレディース・・とは年齢的に孫程の差があるが、、コイツは・・)

振り返ると、黒い口紅がニヤリと笑う。

「・・解ってるわよね?」

nextpage

「は、はい!解ってます!次の品を、すぐに!!」

『あ~ん?次の品ですって~~?』

声色が変わった。ヤベェ・・・

nextpage

どこからやってきたのか、龍が隣にいた。

「兄貴、コイツら知り合いなんすか?それとも弱みでm・・グフッ」

みぞおちに一発コッソリおみまいしてやった。

それ以上言うな。それ以上責めてくれるな。。

nextpage

・・俺は・・・

卑怯にも背後から襲われ、被り物をさせられ、中華鍋を振るわなきゃならん。。

自然に涙が零れる。。

・・なんで・・

・・どちて?・・

nextpage

そして、涙をマスクで拭き続ける。。

だが、違和感を感じて店先に出してあった看板の影に目をやった。

nextpage

(・・・え・・・)

目を疑わずにいられなかった。

今までは、赤い看板に白抜きで店名を出していたのに・・

nextpage

黒い看板に、金の文字で記されていた。

「アワード・ロビ中華店」

・・・切なすぎる・・・

こんなセンスのないネーミングなんて。。

nextpage

またも流れ落ちる涙を拭いながら、俺は決心した。

(コイツら、もう!催促だのクレームなんぞ、つけさせねぇ!)

nextpage

そう決心した間近で・・

「ロビちゃん。タクシー呼んで下さる?」

あの有無を言わせぬ<積み木崩し>の女性だ。

声音は非常に柔らかい。柔らかいのだが・・

イヤ・・これ以上は言うまい・・・

nextpage

俺は、人数分のタクシーを手配した。

それぞれが、俺に声を掛けていく。

「美味しかったよ~」

「面白かったよ~」

「怖かったねぇ~~」

nextpage

イヤな予感ほど、当たるものはナイ。

そう確信した。。。

nextpage

全員が店を出て行ったあと、放心状態でマスクを外し床にへたりこんだ。。

『・・約束守ってくれないから、こうなっちゃったんですよ?』

nextpage

聞き覚えのある声に力なく振り返ると、頭の上に5匹のネズミを乗せたオッサンが恨めしそうに俺を見下ろしていた。

【了】

Normal
閲覧数コメント怖い
40221
16
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意