中編3
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ブラックバイトキラー

music:4

『はぁ〜、マジでウチのバイト先ブラックだわ…。』

ある日の午後、高山 凛は部室でため息をついていた。

「へぇー、凛ちゃんのバイト先って、そんなにひどいの?」

そう声をかけてきたのは、同じ部活の羽山 達馬だった。

『うん、サービス残業なんて当たり前だし、ノルマ未達成分は時給から引かれるし、この前は授業あるのにシフト入れられてたし、もう単位落としたらどうすんの〜。』

「そっか…、ところで凛ちゃん、ブラックバイトキラーってサイト知ってる?」

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『ブラックバイトキラー?何それ?』

初めて聞く名前だった。

「うん、僕も偶然見つけただけなんだけど、これは絶対ブラックバイトだって思うバイト先の名前を書き込んだら、近い内にそこは潰れるらしいんだ。僕は書き込んだことないけど、そんなに酷いなら、凛ちゃん書き込んでみたら?」

『う…ん。考えてみる…。』

何気にものすごい話を平然と語る達馬

に妙な感覚を覚えながらも、凛はとりあえずそのサイトを検索してみることにした。

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『へえ〜、こんなサイトあったんだ。全然気づかなかった。』

ブラックバイトキラーというサイトには、【あなたがブラックバイトだと確信した店舗の名前を書き込んでください。2ヶ月以内に閉店に追い込みます。】と言う物騒な文面の下に名前を書き込むための欄と送信ボタンがあった。

凛は半信半疑だったが、バイトに対するストレスからか、彼女のアルバイト先のファミリーレストランの名前を書き込み、送信していた。

(つい送信しちゃったけど、大丈夫だよね?まあもともと酷いとこだったし、潰れちゃった方がいいかもしれないけど。)

music:6

送信から一週間ほど後、変化があった。

凛のバイトの同僚たちの間で店長が不倫をしているという噂が広まりだしたのだ。これまでそのような類の噂は全くなかったのにも関わらずである。

さらに送信から二週間後、どこからか店長が店の売り上げ金の一部を着服しているのではないかという噂が流れてきた。

いずれの噂も証拠はないのだが、アルバイトの信用は著しく落ち、すでに数人がバックれたり、辞めたりしていた。

そして、送信から1ヶ月、店が廃棄予定の食品を使っているという噂が、ネットを介して広まり、店の売り上げが急激に落ちた。そして辞めたアルバイトは半数を超え、ついに凛もバイトを辞めた。

送信から1ヶ月半、凛がバイトをしていたファミリーレストランで料理に異物が混入していたという事件が起こり、ニュースになった。

その後の捜査で、この店の様々な不祥事が明るみに出た。驚くことにそれらは凛がブラックバイトキラーに店名を送信してから聞いた噂とほぼ同じであった。

music:4

そして送信してから2ヶ月がたとうかという

ころ、凛が働いていたファミリーレストランは店を閉めることとなった。

『ねぇ達馬君、あのブラックバイトキラーってサイト、一体何なの?』

ブラックバイトキラーについて達馬が何か知っていると感じた凛は達馬にそう問いただしていた。

しかし達馬の答えは

「ブラックバイトキラー?何のこと?僕そんなの言ったっけ?」

というものだった。

『とぼけないでよ!何か知ってるんでしょ?教えて!』

「本当に知らないんだよ。そのサイトの名前だって、今日初めて聞いたし。」

達馬がそう真剣にいう様子から、凛は達馬がとぼけているわけではないと感じた。

「疲れて変な夢でも見たんじゃない?凛ちゃんの前のバイト先、かなり酷かったんでしょ?」

『う〜ん…。』

(一体何だったんだろう。本当に夢だったのかな。)

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『ふわ〜ぁ、オレのバイト先マジブラックだわ。』

ある日の朝、橋本 拓哉は愚痴をこぼしていた。

「へ〜、拓哉くんのバイト先ってそんな酷いんだ。ところでさ、ブラックバイトキラーってサイト知ってる?」

Concrete
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