長編13
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ヒルマウント

『痛い!痛いよ!やめて!お母さん、お母さん‼』

強いライトの光を背景に、幼い私の顔の上に覆い被さってくる男のシルエット。

私は近くにいるはずの母親に、声の限りに助けを求める。

しかし救いの手は差し伸べられず。

私は――、

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……

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……

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「瑞希(みずき)ー、遅刻するわよー」

階下から聞こえてくる祖母の声に、私の意識は覚醒する。

寝ぼけ眼(まなこ)をこすりながら上体を起こすと、額にズキリと鈍い痛みが走った。

私の偏頭痛歴は長い。この痛みとは幼少の頃からの付き合いだ。

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枕元の時計を見ると朝の、9時!?

――ヤバイ!

急いでパジャマを脱ぎ捨て、ハンガーにかけてある制服に着替える。

鏡を覗くと寝癖がついていたが、今は直している時間はない。

階段を転がるように駆け降り、居間の祖母に声をかける。

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「もう!おばあちゃん!なんでもっと早く起こしてくれないの!」

「何度も起こしましたよ」

祖母は少し困った顔をしながら応える。

私は地団駄を踏みながら、祖母に何か文句を言おうとしたが言葉が出てこない。自分が悪いのがわかっているからだ。

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「~~~!とにかく行ってきます!」

そう言って玄関へ向かおうとすると、祖母の背後、店と居間を隔てる障子がスッと開いて、祖父が顔を覗かせる。

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「瑞希!朝メシも食わないで出掛けるんじゃねぇ!」

祖父が怒鳴る。

「だってじいちゃん、時間が!遅刻しちゃう!」

私が泣きそうな声を出すと、

「ならこれでも持ってけ!」

と、祖父は店に並ぶ商品の包みをひとつ、私に投げてよこした。

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――またこれか……。

私は少々うんざりしたが、ここで抵抗するとさらに時間を取られるため、おとなしくそれを鞄に入れて家を出た。

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キーンコーンカーンコーン――

「ゼヒー……間に合った……」

私は自分の席に着くと机にグッタリと突っ伏した。

「瑞希ちゃん、朝からお疲れ様~。大丈夫?すごい汗……」

前の席の志穂が振り返っておずおずと声をかけてくる。

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重そうな胸が机の上に鎮座しているのが、突っ伏している私の視界に入る。

私なぞは例えうつぶせになったとしても、胸が邪魔で苦しいということは……ない。

世の中は不平等。これぞ胸囲の格差社会。

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「寝坊しちゃって……朝御飯も食べずに飛び出してきちゃった……」

「え~大丈夫?お腹空かない?」

「あ、うん……。その、一応これがあるから……」

そう言って私は鞄から包みを取り出す。じいちゃんが持ってけと言った、店の売り物。

私は正直、あんまり好きじゃないんだけど……。

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「お、何だ瑞希、また団子か?」

圭介がニヤニヤしながら近寄ってくる。

百田(ひゃくた)圭介。私の彼氏。

「団子屋の娘ですからね。なんか文句ある?」

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私は団子を頬張りながら応える。今日はこれが朝御飯代わりだ。

じいちゃんが朝暗いうちから仕込んで作っている団子だ。味は好きでなくとも粗末にはできない。

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「いいじゃない、百田君。私、瑞希のうちのお団子好きだよ」

「俺も俺も」「素朴な味がいいよな。角田(すみだ)さん、俺にも1個くれよ」

圭介と同じ、サッカー部に所属するクラスメートの犬飼健と遠田浩司が話の輪に加わってくる。

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「なんだよお前ら。俺だって別に悪いとは言ってないだろ。瑞希、1個もらうぞ!」

「あ、ちょっと!」

私が止める間もなくひとつかすめ取られてしまった。

「あ、俺も俺も!」

「いやー朝練後で小腹空いてんだよねー」

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――ヒョイヒョイ

「コラ!犬飼君!遠田君!」

私の貴重な食料を奪っていく、無慈悲なハイエナ達。

「瑞希~、私も~」

志穂までが手を伸ばしてきたところで、ついに私は残りの団子を無理矢理口の中に詰め込んだ。

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……

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……

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『ーーこんなもの、こんなものがあるから!』

『まあまあ、角田さん。ひとまず大丈夫だ。あとは瑞希ちゃんもうまくやっていけるさ』

『……ありがとうございます、先生』

母親の手のひらが私の頭を優しく撫でる。

お母さん――、

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……

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……

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「――この文章に出てくる鳴釜神事というのは、釜の上に蒸篭(せいろ)を置いてその中にお米を入れ、蓋を乗せた状態で釜を焚いた時に鳴る音の強弱・長短等で吉凶を占うという……」

どうやら眠ってしまっていたらしい。

今は5限目の授業中。昼食後の、苦手な古典の授業とあって、私は睡魔の誘惑に打ち勝つことができなかったようだ。

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「では岸田、続きを読んでくれるか」

「はい――」

教師に指名されて、クラス委員の岸田君が立ち上がる。真面目で教師の受けは良いが、クラスメートの私たちと一緒に馬鹿をやったりはしない。

大人というか、冷めてるというか。

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――ズキン!

また、偏頭痛だ。後で薬を飲まなくては。

幼少期から続くこの偏頭痛だが、最近特にひどくなってきた。

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昔からお世話になっている、近所のかかりつけの老医者は、「瑞希ちゃんも成長期だから体も変わってきてるし、知らず知らずに心がストレスを溜め込んでいることもあるんだろ。痛いときは無理せず薬を飲みなさい」と言っていた。

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放課後、水のみ場で薬を飲んでから教室に戻ってくると、私の席の回りに志穂、圭介、犬飼君、遠田君が集まっていた。

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「あ、お帰り瑞希ちゃん。待ってたよ~」

「どうしたの皆?今日部活は?」

「今日はグラウンド整備で部活休みなんだよ。だから皆でカラオケ行こうと思って、瑞希のこと待ってたんだよ」

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――カラオケ、か。

「でも私今、金欠だしな~……」

今、というか、万年金欠な私だ。

両親がいなく、団子屋を営む祖父母に育ててもらっている身なわけで、おこづかいの額もささやかなものだ。

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「瑞希、たまには彼氏を頼れよ。おごってやるし」

圭介がそう言うが、私はおごられるのは好きではない。まして圭介はバイトとかしてないし。彼の家が金持ちだから、小遣いを多くもらっているだけ。そんな金でおごってもらっても。

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「それにそのカラオケ屋、俺たちの先輩が働いてるから融通効くしよ」

圭介がねばる。志穂も行きたそうな顔をしている。

――ハア。

「なら持ち合わせがある時、ちゃんと返すから」

私はそう言って了承した。

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……

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……

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日直の仕事があった私は、圭介にカラオケ屋の場所を聞いて後で合流することにした。

教室で一人残って日誌を書いていると、岸田君が顔を覗かせた。

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「あ…、あれ岸田君。まだ残ってたの?」

「……角田さんこそ。……日直?」

目が合ったから黙っているのも気まずいかな、と思い声をかけたが、相手の反応が嫌々という感じでこれはこれで気まずい。

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「う、うん。もう帰るけどね」

早めに会話を切り上げよう。

「……角田さんさ、たまに頭押さえて薬飲んだりしてるよね?……頭痛持ち?」

向こうから会話を引っ張ってくるとは。

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「うん。わりと昔から。そんなひどくはないよ?薬飲めばおさまる位」

私は日誌を書きながら応える。

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「――でも、最近は変な夢見るし、頭痛も頻繁だったりする?」

「え――?」

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予想していなかった言葉に、私は思わず顔を上げて岸田君を見る。

彼の方も私の方をじっと見ていた。

しばし視線が交差し、沈黙が流れる。

「……今日は百田君たちとどこか行くの?」

「……う、うん。カラオケ……」

なんでそんなこと聞いてくるんだろう。まさか自分も連れていけ、とか言い出さないだろうな?そう警戒していたが、

「……そう。ならまた明日」

短く別れの言葉を口にすると、彼は教室から出ていった。

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……

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……

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学校から出ると、圭介に教えられた商店街の外れのカラオケ屋に向かうため、最寄りの路面電車の停留所を目指す。

道すがら、先ほどの岸田君の言葉が気にかかってしょうがなかった。

変な夢――

頻繁な頭痛――

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おかしな夢も頭痛も、ある時から始まっていた。

幼少期、両親が突然いなくなったあの日―――。

離れて暮らしていた祖父母が家を訪れ、

『今日から儂たちと暮らすんだぞ』

と言われ、訳もわからないまま連れていかれたあの日から。

『お父さんは?お母さんは?』

そう問う私に祖父も祖母も応えなかった。

以来――。

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路面電車に揺られながら、車窓を流れる街並みをぼんやりと眺める。

私の住むこの地方都市も、この十年で様々変わった。

しかしこの街の持つ、一種の閉塞感のようなものは変わらない、ように感じる。

――どこへいっても。どこを見ても。

――あれが、ある。

――ここは○○○○○の土地なんだ。

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路面電車を降り、アーケードを進むと古く小汚い雑居ビルにたどり着いた。

ビルの前には圭介が言っていたカラオケ屋の名前があった。

「――ここ…?」

私はいぶかしげに思いながらも、ビルの中に足を踏み入れた。

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古いエレベーターに乗って、三階で降りる。

入り口のドアの開けると、店内は薄暗かった。

受付に人影はない。

受付の奥には細長い廊下があり、その両側には曇りガラスのはめられたドアが並んでいた。

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「――すいませーん……」

受付の奥のバックヤードに向かって声をかけると、大学生と思しきガラの良くない青年が現れた。

「ハイ。おひとりで?」

店員は制服姿の私を、嘗め回すように眺める。いやらしい。

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「いえ、先に友達が来てると思うんですけど……」

「ああ、百田の彼女か。うん、来てるよ。一番奥の部屋だから」

店員はそう言って廊下の奥を指さした。

「ありがとうございます」

一礼して進もうとすると、

「ごゆっくり~」

とニヤニヤしながら私を見送った。

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……

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……

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「遅くなってごめ――、」

そう言って部屋のドアを開けた私の目に飛び込んできたのは、

圭介、犬塚君、遠田君、そして、

下着姿で目を閉じた志穂だった。

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不意のことに、私はその場に立ちすくんでしまった。

犬塚が素早く私の背後の扉を閉め、私の身体を部屋の中に押し込む。

「遅かったじゃねえか、瑞希」

圭介が下着姿の志穂の肩を抱きながら、にやつきながら声をかけてくる。

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「ちょっと圭介、何やってんのよ……?アンタ志穂をどうしたのよ!」

「でけえ声出すなよ。ちょっと強い酒飲ませたら寝ちまっただけじゃねえか。多少薬も入ってたけどな。前から思ってたけど、コイツ胸でかいよな~。お前とは大違いだよな」

そう言って、圭介が志穂の胸を乱暴に揉む。犬塚と遠田がゲヒヒと下卑た笑い声を立てる。

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「薬、ってアンタ!ちょっとどうしちゃったのよ!犬塚君も遠田君も、アンタらそんなキャラじゃないでしょ!」

「聞いたかよ?俺たちそんなキャラじゃないってよ。俺たちどんな人間だと思われてたんだろうな?」

少年たちがゲラゲラと嗤う。

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「そう言ってやるなよ、犬飼。俺たちが結構な役者だったって、お褒めの言葉と受け取っておこうぜ」

「ああ、お前の親友のこの女、今から俺たちが犯してやるから。お前の目の前で。その次はお前の番だ。二人で仲良く俺たちにヤラれろよ?」

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その言葉に、私の全身を恐怖を、それ以上に怒りが包み込んだ。

と、その瞬間――

頭の奥が熱くなり、頭が割れるような強烈な頭痛が襲う。

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――グググ…

――メキリ

肉を裂くような生々しい音が身体の内側に響き、その後、額に違和感。

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私は恐る恐る額に手を当てて、違和感の正体に触れる。

「ーー角?」

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「どうして……?」

「やっと出たな。なら、もう教えてやってもいいかな。

瑞希、お前とお前の両親は『鬼』の一族なんだよ」

「……鬼?」

突如、圭介の口からお伽噺の登場人物のような言葉が出て、私は混乱した。

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「お前が片頭痛と思っていたものは、お前たち『有角類』の特徴であるところの『角』の成長痛さ。

高校位の年齢が一番伸びるらしいぜ。そして、その前後は精神的に不安定になりやすく、変な夢も見やすくなるんだと。全部親父に聞いた話だがな」

圭介は得意そうに話す。

――親父?どうして圭介の父親がそんなことを?

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「瑞希、『ここ』はどこだ?」

「……岡山」

私はポツリと応える。

「そう、岡山。

この街にいれば、右を向いても左を向いても目に入ってくるよなあ?

――まだわからねえか?俺がこんなこと、ペラペラ話す理由。お伽噺の鬼の天敵はなんだ?」

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――昔々、あるところに。おじいさんとおばあさんが。

――おばあさんが川で洗濯していると、川上から大きな桃が。

――桃からは元気な男の子が。成長した男の子は、やがてお供を連れて鬼が島に。

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「犬塚健。犬な」

「遠田浩司。ホントは『猿田』て書く。隠し名ってやつさ。猿だよ」

「そして俺、百田(ひゃくた)圭介。百って『もも』とも読むんだよな」

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「キジもいるぜ?今、ここにはいねえけど。

俺たちの家は代々この土地で、お前たちみたいな『鬼』を狩ってきたんだよ。

でも、いつしか『鬼』たちも知恵をつけてな、幼少期に『角』を切って、人間のふりして隠れて暮らす奴らが出てきたんだよ。

それから先は鬼ごっこさ。お前たち『鬼』が隠れ、俺たち『人間』が探す、あべこべのな。

瑞希、お前が同じクラスになってある程度親しくなった頃、『頭痛がひどい』『変な夢を見る』って漏らしてたよな。

もしかしてと思って、お前と付き合ったってわけだ。なあお前ら、俺の勘も大したもんだろ?」

「さすが桃太郎の家柄っす!」

「よっ!俺たちのボス!」

犬塚と遠田が囃す。

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「――もしかして、私のお父さんとお母さんがいなくなったのって……」

「ああ、きっと捕まったんだろうな。俺たちの親兄弟の誰かに。

それでもお前がこれまで捕まらなかったのは、さて、どうしてだろうな。

通常、鬼の両親からは鬼の子供が生まれる。そうしたらその子供はいずれ捕まるさ。『角』が出るからな。

やっかいなのは、『混じりもの』の家系さ。例えばお前の家系の中で、例えばお前の祖父母や曽祖父母の代で、鬼と人間と混じっていた場合、『鬼』も『人間』も生まれてくる可能性があるんだ。

『人間』は捕まえられないからな。ま、お前は『鬼』だったわけだが」

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「そんな……」

私は膝から崩れ落ちる。

自分の家の正体。信じていた恋人、クラスメイトに裏切られていたこと。両親の失踪の理由。

様々なことが頭の中で渦巻いて、私から思考と言葉と気力を奪った。

そんな私の元へ、圭介がにやつきながら近づいてきて、顔を寄せる。

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「なあ瑞希、この街は『俺たち』の街なんだよ。

道にも、建物にも、土産物にも、全てのものにいたるところに『桃太郎』の名が載っている。この街で俺たちの目を逃れて生きていくことはできないんだ。

ああ、告発なんかしようとしても無駄だぜ?お前らの正体もバレるし、俺たちの親族は国のお偉いさんたちともガッチリくっついてる」

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「岡山駅から伸びる『桃太郎大通り』、あの地下にお前たち『有角類』の強制労働施設がある。

街中を走る路面電車、岡山電気軌道をはじめ、街中の電気はお前たちの労働でまかなわれているんだ。

お前の両親もきっとそこにいるぜ?親子ともども俺たち人間のために、しっかり働いてくれよ?

ああ、その前にそこの女と一緒に犯してやるのは本当だから。ひひひ」

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「……鬼畜」

「バーカ。そりゃお前のことだってぇの」

圭介の声が遠くに聞こえた。

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……

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……

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……

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と、その時――

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バン――!

扉を乱暴に開いて、一人の男性が入ってくる。

思わず目を向けるとそれは――、

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「……岸田君?」

急なことに驚いていた圭介たちだったが、入ってきたのが岸田君だとわかると安堵の色を浮かべる。

「なんだ、岸田かよ。脅かすな。

ああ、ちょうどいい。瑞希、さっき言ってた『キジ』な。こいつの家だ。遠田と同じ、『岸田』は隠し名だな。

岸田、お前も混ざりにきたのか?真面目な委員長さんよ?」

「いや――」

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岸田はそう言うと、

ーーバキッ!

圭太の顔面を拳で吹っ飛ばした。

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「な、なにしやがる‼」

犬塚と遠田が吠える。

そんな彼らの顔面に、岸田は素早い動きで拳をヒットさせていく。

「――がっ‼」

「――ぐっ‼」

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「お前たちに知らせがある。百田家、犬塚家、遠田家の三家は今日、つい先ほど国からの一切のバックアップを失ったよ。国との渉外の一切を任されていた俺たち岸田家が、お前たちを裏切ったからだ。

『有角類』への理由なき迫害の咎で、お前たちはこれから裁かれることになるだろう」

圭介、犬塚、遠田の三人はぽかんとしながらその言葉を聞いていた。

やがて岸田の背後から大勢の大人が踏み込んできて、暴れる三人を拘束して連れて行った。

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私は呆然としながらその様子を眺めていた。

「大丈夫?」

岸田が声をかけてくる。

「……うん、平気。ねえ岸田君、教えて。一体どこまでが本当のことなの?『有角類』とか『鬼』とか『桃太郎』とか『キジ』が裏切ったとか……私、もうわからなくて……」

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「全部本当のことだよ。ここ、岡山には昔から角を持つ『有角類』の人たちがいて、彼は『鬼』と呼ばれていた。

でもね、別に人間に危害を加える存在ではなかったんだ。共存をしていたんだよ。

でもいつからか、『桃太郎』の一族が『鬼』の一族を身体的特徴から差別しはじめ、ついには地下へと追いやった。

隠れて暮らす『鬼』たちを権力を盾に追い詰めたのさ」

「でも、どうして貴方たち『キジ』は裏切ったの?『桃太郎』を」

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岸田は前髪を手で押し上げて、額を露わにする。

その額には、

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「――角?」

「僕の母親はね、僕が小さい頃に亡くなっている。自殺したんだよ。

母は『有角類』だった。『キジ』の一族である父親は、それをわかったうえで結婚したんだよ。そして、周りにそれを隠して暮らしてきた。

でも、いよいよ母の正体がバレそうになったとき、母は父や僕に迷惑をかけまいと、自ら命を絶ったんだ」

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「以来、僕と父はね、復讐を誓ったのさ。この岡山の『桃太郎』という因習にね。

時間はかかったが、それはかなえられた。

さあ、今地下の強制労働施設からたくさんの『鬼』が解放されている。君の両親もいるはずだ。

そこの娘は僕が介抱しておくから、早く家にお帰り」

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「……ありがとう」

失ったと思っていた両親に、再び会うことができる。祖父母と両親と一緒に暮らすことができる。

私の目からは涙が止まらなかった。

そんな私を見て、

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「やれやれ、鬼の目にも涙だね」

岸田は優しく微笑みながら、そう言った。

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うわぁ
よもつさんのコメ読むまでヒルマウントの意味に全く気付いてなかった!
とことん鈍いな私…

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