短編1
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浅草

あれは数年前、浅草は浅草寺近くの人形屋の二階の空き部屋に引っ越した日、

ダンボールやら冷蔵庫やらを積み込んでいる最中から、もう何度も何度も、

その「音」は聞こえていた。

日も暮れて荷物も運び終わり、手伝ってくれた仲間達と、その場で即席の引越しパーティーが開かれた、

みんなでビールを片手に、さっきまで鳴り響いていたあの「音」は一体なんだったのだろうか?

なんて話になった。

ほろ酔い気分で、ふと目をやると備え付けのベッドから伸びた奇妙なコードとその先にボタンが、

よく病院のベッドにあるナースコールだ。

この部屋は前の住人がご老人でなにかの病気で既にお亡くなりになっていることは大家さんに聞いていた。

きっとそのなごりであろうと思った。

興味本位で仲間のひとりがそのボタンを押すと、

さっきまで不定期に何度も鳴っていたその「音」が、

部屋中に鳴り響いたのだ。

私は浅草のその部屋に二年間住んだが、

結局その日以来「音」は一度も聞いていない。

きっとその日、その部屋の住人に私はちょっと歓迎されただけなのだろうと、今はそう思っている。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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