中編3
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光の誓い

近所の「霊感おばさん」から夏祭りの時に聞いた話。

霊感おばさんの相談者の女性が幼稚園時代に体験した話だそうです。

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私は幼稚園の頃に「光の誓い」という曲を歌った事を覚えている。だけれど大人になった今「光の誓い」がどんな歌だったのか覚えていない…

今でも大切に取って置いている幼稚園の頃の歌の本にも載って無いし、ネットとかでも色々調べてみたけれど同じ名前の童謡は無かった。

曲名の似ている曲を幾つか調べてみたけれど、どうもどれもメロディが違う。

「光の誓い」を教えてくれたのは私の居た、チューリップ組のU先生だった。チューリップ組ではとても人気のある歌だったが、私には何か「怖い」と感じる曲であまり好きにはなれなかった。どう怖かったのかは上手く言語化出来ないのだが、難しい歌詞となんとなく暗い音程のメロディが嫌だった。

そして私は気になる事を一つ体験している。

それは、チューリップ組全員で近所の神社の森に遠足に行った時の事。

U先生が「さあ、みんな?神社にこれからちょっとだけ冒険に行きますよ!」と急に言いだしたのだ。

私は「藁で作ったお人形」を持っており、それはU先生に手伝って貰いながら作った人形で、チューリップ組の皆も一体づつ持っている。ちなみに、この遠足で大人はU先生しか居なかったと思う。しかし、手元にあるアルバムにもこの遠足の事が書かれていない…

神社に着くと、U先生は森の奥へとどんどん入って行ってしまった。

園児は大分疲れてきていたが、その内に真黒な3本の木のある雑木林に出た。

するとU先生が釘と金槌をリュックから取り出し、「皆さん!お人形さんを木にくっつけてあげましょうね!」と言った。U先生に手伝って貰いながら沢山の「藁のお人形」が真黒い木に打ち付けられていく。

そして最後にみんなで「光の誓い」を歌った。歌いながら泣き出す子や、何かに怯えて強く目を閉じている子も居た。この歌声には、お経を逆再生した様な不気味な声が混ざっていた様な気がした…

森から出ると、もう空は夕焼けだった。神社の傍にあった公園に園児を集めて「はい!自由時間ですよ」とU先生は言った。ほんの短い間かくれんぼをしたりして遊んだ後に幼稚園に戻った。

翌日。

熱を出したり、手に怪我をしたりしてチューリップ組の園児の何人かが休んだ。私もその一人だった。

数日後に熱が引いて幼稚園に行ってみるとU先生は幼稚園のどこにも居ない。「U先生はどこ?」と私は組中の友達にU先生の事を聞いたが、皆口々に「わからない」「もう幼稚園を辞めちゃった」と言う。中には「初めからU先生など知らない」と言う子も居た。

神社の森への遠足の事も覚えている子は少数だった。

U先生は私が休んでいる数日間の間に幼稚園を辞めたのだろうか?しかし、お別れ会があったという話も聞かなければ、アルバムにもU先生の顔は写っていない。

今思うと、あれは普通の遠足では無かったのだろう。

幼稚園の他の先生達にも「U先生はどこ行ったんですか?」と聞いたが、どの先生も変な顔をするだけ。その内に何故か幼稚園ではU先生の噂をする事が禁止されてしまった。

…それも当然なのかもしれない。

何せU先生の名前、Uは「うでちぎり」と言うのだから。どう考えても人間の名前とは思えないその先生は何者だったのだろうか…

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