中編3
  • 表示切替
  • 使い方

影が増える

俺の会社は家の最寄りから3駅離れた所にある。

近いから毎日残業したりしてるんだが

今もそんな残業帰りだ。

時間は21時。

夏とはいえ暗いけれど、駅から自宅マンションまでは街灯もしっかりついてる住宅街。

人通りはほとんどない。(予備校とか塾の終了にかぶったりすると学生がめっちゃ歩いてるくらいで、他の人は歩かないなーって感じ)

しーーんとした道を歩いていると

「おーーい」

と後ろから声がする。振り返ると誰もいない。住宅を見ても顔出してる人とかいない。

聞き間違いか?それにしてはかなりハッキリしてたし、自分もびくってなったんだけど。

見間違いと思い、前に向き直ると、あるはずないものがあった。

俺の横にもう1人、人の影。

もちろん誰も隣にいない。

たぶん男の人で、背丈も同じ。

ハットみたいなのをかぶってるみたい。

振り返ってもやっぱり誰もいない。

俺が左右に頭を揺らすとそいつも揺れる。

なんなんだこれは。

歩いてみても影はついてくる。

疲れてるのか?

この影を持ち帰っていいかわからないけれど、そのまま家に帰ってみる。

部屋についても影はいるが、影の持ち主は現れない。

まあ、よくある話だと、入浴中にお化け出るとか、鏡に何か映るとか、ラップ音とかそういうのに繋がりそうだが、意外にも1週間くらい何もなかった。

まあ、影はそのまま横にいるけど。

ただ、その影は俺しかみえないみたいで、電車でも職場でも誰かに不審に見られたりしなかった。

こいつはなんなんだ?なにしにきたんだ?

って思いつつも、一人暮らし寂しかったし、俺と全く同じ動きを常にしてくるもんだから、何か俺も可愛くなってきちゃったんだよね。(病んでたのかな)

影がいることに慣れちゃった頃(慣れるものでもないけど)、また残業帰りだった。

「おーーい」

背中がびくつく。この感じ、この間と同じ?振り返っても誰もいない。住宅から顔を出す人もいない。向き直ると、影が増えてる。

今度は髪をふたつにしばった女の人みたいだ。

ハットの男より少し背も低そうで、やっぱり俺と同じ動きをする。

ちなみにハットのやつが俺の右、女は俺の左にいる。

さすがに引いたけど、また家に帰ってもなにも起こらなかった。

男ならいいけど、女はどうも落ち着かないなあ。

それから何となく、影に話しかけたりしてたけど、影はなにも言ってこないし、俺と同じ動きしかしない。

「おーーい」しか言えないのかな。

影は本当に何か悪いことしてくるわけでもなく、俺を見守るように常に横にいた。

なんなんだろうか。

違和感が慣れてきた頃、またもう1体影が増えた。

今度はまた男の人っぽかったけど、ロングコート羽織ってて長身だった。

ハットの男の横に立つようになった。

俺を含めて4人の影が並ぶようになると、さすがに幅とってて気持ち悪くなってきた。

しかもみんな同じ動きだし。

何度か話しかけてるけど、やっぱり返事もないんだよね。

「あのさ、影が4つってさすがに多くない?お前らなんなんだ?」

仕事帰り、電車を降りたあたりで影に話かける。返事はない、予定だった。

「じゃあ減らす?」

ビックリして足が止まる。

スマホを覗いていた手を下ろし、足元の影を見る。

影が3つになってた。

女の人、ハットの男、ロングコート男の影。

3人しかいない。

俺は体を右に揺らす。

3人とも右に揺れる。

右手を上げる。

3人とも右手を上げる。

声を出す。

声は帰ってこない。

スーツ姿の俺の影はなくなってた。

俺の影はこの3つのうちどれなんだろう。

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
5631
4
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意