中編3
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トンデオジサン

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これはある地方の話です。

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私はある駅前の駐車場で警備員をしています。仕事は交代制で、毎日朝から夕方が勤務時間です。

この駅はどこにでもある、田舎の寂れた駅です。ホームは1つ、電車は20分ごと、駅前には数件の商店が並ぶ、ありふれた駅といえます。

ただ、妙な人を除いて・・・。

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“トンデオジサン”は決まった時間、決まった場所にやって来きます。朝の通勤ラッシュ時、こんな駅でも一番人が集う時間帯です。

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道路を挟んだ私の前に場所を陣取り、駅と道の間を塞ぐ金網フェンスに両手を掛け、ひたすらホームに立つ人に呼びかけています。

「トンデ、トンデ。」

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黒ずんだ白い半袖シャツにジーパン姿で

金網をガシガシ鳴らしながらじぃーっと、ホームに立つ人を見つめているのです。オジサンは必死に呼びかけます。

「トンデ。トンデ。トンデ!。トンデ。」

が、誰からも声は返ってきません。

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それは、変な人に関わりたくないという現代人の性格だけでなく、こんな噂がありました。

“トンデオジサンと目があうと、電車に飛び込んで死んでしまう。”と・・・。

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トンデオジサンはひたすら金網を揺らし叫びます。

「トンデ!・・飛んで!!」

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そんな奇妙な噂もあってか、この駅で電車に飛び込む人は多く、一部の人達からは“飛び込み場”と噂されるようになりました。

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ある雨の日、いつものように私はレインコートを着て駐車場に立っていました。雨のせいで、電車が遅れていたことを覚えていまス。

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ホームには多くの人が立っていました。その中に、友人がいるのを見つけました。

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私は遠くから友人に手を上げ、合図をしました。しばらくして友人も私に気づき、同じように手を上げようとした

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その時です、友人は斜め左に視線ズラしました。すると、穏やかな友人の顔が急に恐怖の表情へ変わり、何故か小刻みにジャンプをはじめたのです。

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トン・・トン・・トン・・トン。

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気付いた時、友人は黄色い線を越え、少しづつ線路へ近づいていました。

トン・・トン・・トン・・トン。

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異様な光景に私は一瞬躊躇しましたが、『このままでは線路へ落ちてしまう』そう思って、私は金網に駆け寄り、友人の名前を叫びました。

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「飛んで!!」

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・・・。

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驚きました。自分でも何を言っているか、私はまた呼びかけました。

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「飛んで、・・飛ンデ!!」

どう声に出しても“飛ンデ”しか言えません。

その時、私はすぐ真横に気配を感じ、ふり向きました。

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そこには全身濡れ姿で私を見つめるトンデオジサンがいました。垂れた髪の毛の隙間から不気味に光る眼はニコォっと私に笑いかけていました・・・。

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次の日からトンデオジサンは駅に現れなくなりました。

私は仕事を辞めました。

もう何も考えられマセン。

でモ、私は今日も駅に向かイます。

そしてホームに向かッてこう呼ビかけるのデス。

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「トンデ。・・・トンデ!!」

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