廃墟から連れ帰ったもの-前編-

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廃墟から連れ帰ったもの-前編-

「おー、こ、ここだ、ここ!」友人である祐太郎は興奮気味に叫びました。私はというと、早く家に帰ってTVでも見て風呂に入って寝たい!という直前までの思いも消し飛んで、1人戦慄していたのを覚えています。

目の前には廃ホテル(ラブホ)があり、いかにもという感じで、私は気が気ではなかったのですが・・・

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これはかれこれ1年も前になる話ですが、社会人になってから久しぶりに学生時代の友人である祐太郎に会うことになり、仕事の話やら、女の話やらで盛り上がっていました。

そろそろ帰るかというときに、祐太郎は面白い話を持ち掛けてきました。

「学生時代に一度はやってみたいと思っていたんだけど、肝試しやらないか?」

私も確かにやったことが無かったので、酒が入っていたせいかやってみてもいいかなという気持ちになり、二つ返事で了承してしまいました。

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「男2人で肝試しとか既に寒い気もするけど、どこか行きたい場所でもあるのか?」

「実は、俺が今住んでいる家の近くに、廃ホテルがあるんだよ。まぁ、ラブホだ。」

「コンドームでも落ちてるかもな(笑)しかも使用済みの(笑)」私は陽気に答えました。決行日は来週の土曜日の夜にしようということで話がまとまり、その日は解散しました。

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決行日の日、私は朝から体調がすぐれず、肝試しを止めようかと思っていましたが、祐太郎から毎日のように電話で催促されていた私に断る選択肢はありませんでした。

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「おー、こ、ここだ、ここ!」友人である祐太郎は興奮気味に叫びました。

廃ホテルはすでにツタが傍若無人に張り付いており、傍目からかつてホテルだったと判断はつきませんでしたが、唯一駐車場に立っている看板が確かにホテルであったのだと示してくれていました。

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「良し入るぞ、わくわくさんだーい!」祐太郎は上機嫌で柵を乗り越え中に入っていきました。

「はしゃぎすぎだろ、やだなぁ二階とかで床が抜けて落ちたりしたら。」

もう、すでに幽霊とかではなく、ケガをしないかが心配でした。

祐太郎に急かされ私も柵を乗り越え敷地に入った瞬間、ぞわっーっと形容しようがない嫌な空気を感じ取りました。

・・・「ここはやばい」本能がそう告げていました。しかし、祐太郎はどんどん先に進むので、私は付いていくしかありませんでした。

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ホテルの中には意外にも普通に正面から入れました。

鍵も掛かっていなかったので、おそらくはすでに同じことを考えた馬鹿者たちがいたのでしょう。

中に入ると、空気は一層重くなり、そのころには私は帰りたくて仕方なくなっていました。と、祐太郎が

「おい、こんなん見つけた(笑)」祐太郎が手に持っていたのは、使用済みのゴムでした。しかもまだ生乾きです・・・

だれか忍び込んでやったのか。祐太郎のおかげで重苦しい空気は多少軽くなりましたが、嫌な感覚はまだ残っていました。

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祐太郎は私のことなんかお構いなしでどんどん、部屋に次ぐ部屋を見て回りました。

そして2階に上がり最初の部屋に差し掛かったところで、祐太郎は神妙な顔つきで私に言いました、

「この部屋、なんかやばい気がする。」と。

私に至っては既にずっとやばい気がしていたので特に何も感じませんでしたが、彼が言うのだから「あーやばいんだろうな」と思っていました。

そして祐太郎はゆっくりとドアノブを捻り中に入っていきました。

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私もそれに続いて中に入っていきましたが、、、

・・・特に今までの部屋と変わることなく、壊れかけのベッド、割れた鏡、乱雑とした毛布や布団があるだけでした。

「何もなかったな、まぁなんかあったらいやだけどさ」私は祐太郎に言いました。すると、

「いいもの見つけた!これみてみ!」祐太郎が私に小さな金属を見せてきました。

「指輪?か?」

「そうそう、これ本物ならいいおこずかいになるかも(笑)」祐太郎はすっかりトレジャーハンター気分で、その後も部屋という部屋を物色して回りました。

その時はこれから起こる恐怖を知る由もなく、肝試しを彼は楽しみました。

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