中編3
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十年前

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 今から約十年前の話をする。場所がバレるとまずいから、あえて場所は伏せておく。

約十年前の春、俺はある地元の会社に就職した。入社してから分かったんだが、そこは大変なブラック企業だった。毎日残業だらけで家に帰れるのは週に2回程度。おまけに建物はボロボロで傷んでいた。謎の立入禁止の部屋がいくつもあって、全体的に薄暗かったんだ。

 会社には唯一の同僚がいて、仮にその名をHとしよう。Hは明るく、度重なる残業にもびくともしない強靭な精神の持ち主だった。

そんなHがある晩一緒にオフィスで残業処理をしていると、

「暇だし探検でもしない?」

と言い出した。なんでもこの建物に5年ほど勤務しているHでさえ、奥の立入禁止の部屋群には行こうとしなかったのだそうだ。今考えるとHのあの時の言動は明らかにおかしかった。やめておけばよかったんだ。

 Hと一緒に薄暗い廊下を歩く、この時点で俺はビビってたよ。どうにかなりそうな気がしてた。

かなり前に設置されたと見られる張り巡らされドアが開かないようになっている立入禁止のテープをHはビリビリと無造作に剥がしてドアを開けた。

 俺もHの後ろから中を見たんだが暗くてよく分からなかった。するとHは何かに引っ張られるように中に入って行った。俺は呆気にとられて暫くぼーっと立ってたんだが我に返って

「H!!」

と叫んだが返事がなかった。俺は何が潜んでいるか分からない暗黒の世界に同僚のために突入することが出来なかった。俺もHのようになりたくなかったんだよ、こんな人間の屑を許してくれ・・・。

 俺はドアを閉め立ち去った。いや、逃げたんだ。 不思議なことにHが居なくなってから何日たっても会社側は何も言わなかった。俺はだんだんHが可哀想になってきて、今度は昼間にあの部屋に行くことにした。何かわかる気がしたんだ。会社に置いてある懐中電灯を照らしながらドアを開ける。あの日とどこも変わっていなかった。

 懐中電灯で照らした先には、1人の人を形をした「何か」が居た。俺の心拍数は最高潮に達していた。

 その「何か」はゆっくりとこちらを向いた。そいつの頭に顔は無かった。いや、厳密に言えば真ん中に小さな点が3つほど空いているだけだった。そいつは立ち上がると訳の分からない声を発し、そこに立っていた。

「こらー!!」

後ろから大きな声が聞こえたと思うと理解する間もなく部屋から出された。ドアを勢い良く閉めたのは上司だった。全てを理解するのに数秒を要した。

 その後即日俺は解雇された。あの部屋やHについて聞いても答えてもらえなかった。ただ一つ、このことは誰にも話すな、という事だけ話されて俺は会社を出た。でも話さなければ俺の気持ちは納まらない、だから今日ここに書き込んだ。俺が書き込んだことがバレると俺はどうなるか分からない、もうすでに別の県に引っ越しているが、きっとあいつらのことだからここまで来るだろう。今でも理由は分からないが俺の事を追っているはずだ。

 場所について一つだけ言えるのはM県のI市にその建物はあるってこと。

Concrete
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