長編12
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ウスイさん 完結

皆様、ご無沙汰しておりました。

ダラダラと続いてしまった作品で申し訳ありませんでした。

今回でしっかりと完結しようと思います。

誤字脱字があると思いますがご了承ください。

お付き合い頂ければ幸いです。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

《~♪~♪~♪~♪~♪》

『はい、南でございます。』

香山『あ、南さんしばらくですね。警視庁の香山ですが』

『あぁ香山さん、お久し振りです。

先日は色々お世話になりました。今日は何か?』

香山『ちょっとお話したい事がありましてね、

電話では何なのでこれから伺ってよろしいですか?』

『主人が5時頃帰ってくるので、それ以降なら。』

香山『わかりました。じゃあ5時半に伺います。』

電話を切った私は色々考えていた。

1年前、私達の勘違いで探偵の伊吹さんを巻き込んだ。

そしてその4ヶ月後に香山さんの紹介もと、天之真神社の義想様に呼ばれ、伊吹さんを助け出したと知らされた。

今は衰弱しているが、しばらくしたら会えると言われたが断った。

そしてその半年後に香山さんからの電話。。。

何か嫌な予感がする。

というより嫌な予感しかしない。

不安を抱えながら主人の帰りを待った。

.

.

.

.

『ただいま!』

『お帰り、ねぇあなた、警察の香山さんて覚えてるでしょ?

あの人から電話があって、話したいことがあるから今日の5時半頃に来るらしいわ。』

『香山さんが??』

『うん… 電話じゃ話せないみたいで、私も一人じゃ不安だからあなたが帰ってからって伝えたの』

『そうか。

じゃあそろそろ来そうだな。お前はコーヒーの用意してやってくれ』

主人に言われ、私は台所で主人と香山さんの分のコーヒーを作っていた時

《ピンポーン》

『あ、俺が出るからいいよ

~~はい、あぁ香山さん、お久し振りですね。』

香山『いきなりですいませんね。』

『妻から一通り聞きました。まぁ上がってください』

香山『お邪魔しますね』

主人が香山さんをリビングに案内し、私は丁度出来上がったコーヒーを運んだ。

香山『あ、すみません。ありがとうございます。』

『それで、話というのは?』

香山『ええ、義想さんのことなんですがね。

ここ最近会われたりしましたか?

または義想さんに変わった事とかありませんでした?』

『半年程前に会いましたけど。

伊吹さんを助け出したのと、今回の事を話すと。』

香山『そうですか。因みに事の内容を教えてもらっていいですか?』

私は主人と共に義想さんが話した内容を香山さんに伝えた。

救い出した伊吹さんは衰弱状態

隙間から見ていたのは伊吹さんの念から出た者

つまり伊吹さん

全てを話した。

話を聞き終えた香山さんは、腕組みしながら何やら考えているようだった。

『香山さん??どうかしたんですか?』

香山『実は一昨日、義想さんが殺されましてね…』

『…え!?』

香山『身内の方から通報がありましてね。

お宅(神社)の裏手で発見したんですが、喉をかっ切られていました。』

『そんな… 誰か義想さんを恨んでる人が??』

香山『あ、犯人はすぐに捕まえましたよ。

ただ… その犯人なんですが、、 伊吹さんなんですよ。』

『伊吹さんが!? 本当なんですか!?何かの間違いじゃないんですか!?』

『遺体の近くに犯行に使ったと思われる刃物を持った伊吹さんが立ち尽くしていました。

残念ですが、間違いなく伊吹さんの犯行です。

話そうか迷ったのですが、あなた方にはやはり話しておかねばと思ったんです。』

『そんな… それで伊吹さんは何かおっしゃってるんですか??』

香山『それが何も話さないんですよね。

何を聞いてもニタニタ笑ってるだけなんですよ。

もちろん南さんの事も聞いてみたんですが駄目ですね。』

『じゃあやっぱり人違いじゃないんですか?

それに義想さんも《衰弱している。回復まで時間がかかる》って言ってましたし』

当然私達には信じられない話だった。

あの伊吹さんが… 人を助けることに誇りを持っていた伊吹さんが人殺しなんてするわけがないと。

しかし、香山さんから返ってきた言葉は悲しくもそれを裏切った。

香山『私も最初は彼女でないと信じたかった。

ですが、当時押収したカメラに写っていたままの服装、顔、全て一致してるんです。』

それを聞いて何とも言えない感情が襲い、涙してる私を主人が抱き寄せながら香山さんにお願いした。

『香山さん、伊吹さんに会わせてもらえませんか?』

香山『ええ、南さんならそう言うと思ってました。

それにそれも含めて今日伺いましたから。

では明日、私から連絡しますので中央署まで来てください。』

そう言って香山さんは一礼して帰って行った。

その後、私達はほとんど何も話さなかったがお互いに考えてることは同じだったと思う。

伊吹さんは私達に会ったら全てを思い出してくれるだろうか…

少しでも変化を見せてくれるだろうか… と。

その日は主人と寄り添って眠りについた。

~♪プルルル! ~♪プルルル!

電話だ。

時計に目をやると朝の4時過ぎ。

隣では主人がスヤスヤ寝ていて起きる気配はない。

不安だったが、主人を起こしたくなかったので仕方なく電話に出た。

『はい、もしもし』

香山『あ、お、奥さんですか!?香山です!』 

電話口の香山さんは焦りと恐怖が入り交じったように声を荒げた。

『どうしたんですか?こんな早くに』

香山『詳しい話は後で!

今からそちらに向かいますのですぐにご主人を起こしてください!』

そう言って香山さんは一方的に電話を切った。

私は何故か震えが止まらず、おぼつかない足で主人の元へ向かった。

『あなた、あなた起きて!』

最初は目を擦り眠そうにしていた主人だったが、よほど私の震えが強かったのだろう、目を見開き私の背中を擦ってくれた。

『どうした!? 何があったんだ!?』

『香山さんから電話があって… 何か凄く焦ってて…

今から家に来るって。。』

『わかった!

俺が出るから、お前はここにいろ。じっとしていろよ!』

座り込んでる私に布団をかけてくれ、主人は台所で煙草を吸いながら待機していた。

《ピンポーン》

チャイムの音に一瞬ビクッとした私に、主人は【静かに】と指でジェスチャーして玄関に向かった。

『どうしたんですか、こんな時間に!

とにかく上がってください』

話し方からして、どうやら香山さんが到着したようだった。

香山さんは私を見るなり、すみませんと言わんばかりに深々と頭を下げた。

香山『すいません、こんな時間に。

実は刑務所に伊吹さんの姿がなくてですね。

周辺を探したんですが見当たらなくて、もしかしたらあなた逹のところへと思って、連絡したんです!』

『いない!?

まさか… 脱走??』

香山『それが… 本来なら脱走しかあり得ないんですが、ちょっと常識では考えられないんですよ。』

『どういう意味ですか??』

香山『こういう話は本当は駄目なんですが、あなた逹は話します。

刑務所内の部屋は鉄扉に顔一つ分の鉄格子しかないんです。

中は一面コンクリートで天井に窓がありますが、高さ3メートル、周辺に掴まる物もありません。

それに一番不可解なのが、抜け出した痕跡がないんですよ。

窓も割れてない、鉄格子も外されてない。。』

『じゃあ伊吹さんは幽霊みたいに忽然と姿を消したと…?』

香山『……』

主人の問いに、香山さんはただただ考え込んでいた。

香山さんと主人の話を聞きながら、私は恐怖と不安でガタガタ震えていた。

『お前は何も心配しなくていいから休んでろ。』

主人は震える私を抱え、寝室まで運んでから再び香山さんのところに戻った。

どれくらい時間が経ったかわからないが外はすっかり明るくなっていた。

朝がきたという安心感からか、震えは止まり気分も少し落ち着いたのでゆっくり身体を起こそうとした時、丁度主人が寝室に入ってきた。

『起きて大丈夫なのか?』

『うん、少し落ち着いた。ありがとう。』

『良かった。

あ、それから俺今から香山さんと出てくる。』

『どこに??』

『伊吹さんの事務所だよ。

もしかしたら手掛かりがあるかも知れないし、少なくとも俺達にも関係あることだろ?』

『でも……』

『お前は来なくていいし、ゆっくり身体休ませといたらいいから。』

『… わかった。

気を付けてね。』

出ていく主人に手を振り、心配そうに覗きに来た香山さんが深々と頭を下げたので私も頭を下げ、二人を見送った。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

香山さんの運転で1時間弱程走り、伊吹さんのいた事務所に着いた。

外見はあの当時のまま。

今にも優しくて元気で笑顔の伊吹さんが出てきそうな雰囲気さえ漂わせている。

そう思ったからか、自然と涙が出る。

香山さんは何も言わずに俺の背中を擦ってくれた。

『…すいません。』

香山『気持ちはわかりますよ。

伊吹さんを見つけたらゆっくり話しましょう。

出来る限りの力になりますから。』

香山さんの心強い言葉を胸に、事務所に入った。

一階はロビーで二階が伊吹さんの事務所だ。

だが階段を上がり始めた時、とてつもない異臭が鼻をついた。

思わず口に手をあてた。

香山『…!?まさか!』

香山さんは異臭に耐えながら原因となる場に入った。

続いて俺も後ろから付いていく。

香山『な… 何てことだ…』

後ずさる香山さんの背後から覗きこんだ

そこには……

まるで泥棒にでも入られたかのように物が散乱していた。

いや、問題はそれじゃない。

その中央… 天井から垂れ下がってる何か…

それは首を吊っている伊吹さんだった。

『うわぁぁぁ…!!』

香山『南さん!!見ちゃ駄目だ!!』

香山さんは怯える俺を強引に外に連れ出しながら何処かに電話をかけていた。

香山《香山だが至急応援を。現場は○○区○○伊吹探偵事務所内だ!》

香山さんは電話を終えると俺を車に乗せて、近くの自販機で飲み物を買って渡してくれた。

香山『南さん、気を確かに。落ち着いてください。

私はこれから所轄の刑事と現場検証と遺体確認に入ります。』

香山さんのこの言葉に、俺が見たものが錯覚でなかったことに確信を持った。

『…やっぱり伊吹さん一人じゃなかったんですね…

あと一人か二人いましたもんね…』

香山『…とにかく、絶対にここから出たら駄目ですよ!』

香山さんの忠告に深く頷き、俺はうずくまった。

しばらくして2台のパトカーがやってきた。

俺が乗ってる車の前に止まり、降りてきた警官が香山さんと切羽詰まった様子で話した後、事務所に入っていった。

30分くらい経ち、香山さん一人が降りてきて車に乗り込んだ。

香山『南さん、これから遺体の検死と身元の確認をしますので今日はお宅にお帰りください。

送りますので。』

『身元?遺体は間違いなく伊吹さんだったでしょ!?』

香山『腐敗がかなり進んでますが一人は伊吹さんで間違いないと思います。

しかし残りの二体が性別がわからないほど酷いので。』

『二体…?』

香山『もしかしたらあの二人かも知れません。

覚えてるでしょ、行方不明の女子高生二人の事件を。』

『あの時のニュースの二人が…?』

香山『とにかく今日はお宅に送りますし、充分に周囲に注意してください。』

香山さんに家まで送ってもらい、入る前に【奥さんには黙っといた方が良い。全てがわかったら自分が話す】と耳打ちをしてきた。

俺もそれには同感した。

別れ際に俺の携帯番号を伝えといた。

真実を言えば妻はおかしくなるかも知れない。

部屋に入った俺は妻に上手く話を取り繕った。

妻も《無事だと良いね》と返してきたので話を信用してくれた。

後ろめたさはあったが…

その後、特に何かが起こることなく日々は過ぎ10日後の日曜日、俺の携帯に電話が鳴った。

《♪~♪~♪~》

『はい、もしもし』

香山『香山です。

今からそちらに伺って良いですか?』

『ええ。今日は休みなんで良いですよ。

何時頃になりますか?』

香山『じゃあ12時くらいに伺います。』

電話を終えた俺は家事をしてる妻の元に向かい、香山さんが来ることを伝え、またコーヒーを用意するよう頼んだ。

そして12時前…

《ピンポーン》

チャイムの音に足早に玄関に向かい、ドアを開けると香山さん、それと何故か白装束を身に纏った男性がいた。

『香山さん、そちらの方は??』

香山『義想さんのお弟子さんです。

この人の協力もあって、今回の件も解決したので今日全てを話しますね。』

『本当ですか?

とにかく上がってください。』

二人を客間に通して、コーヒーを持ってきた妻と一緒に話に入った。

義想さんの弟子に当たるという人は神詞(かんじ)と名乗った。

義想さんには何人か弟子がいて、その中でも神詞という人は特に力があり信頼をよせていたらしい。

そして、事の全てを話し始めた。

神詞『色々と大変でしたね。

事の発端は義想様からお聞きしてると思いますので、その後の全てを話しますね。

まず亡くなられた義想様、あと刑事さんから聞いてる伊吹さんという方、それから高校生のお二人、これらは全て自殺です。』

神詞様の言葉に俺は驚いたが、それ以上に驚いていたのは妻だった。

そりゃそうだ、俺は妻に嘘の話をしたのだから。

妻は《何で黙ってたんだ》と言わんばかりに俺を睨んできた。

『ごめん。お前の事が心配で事実を言えなかった。

でも死の原因は俺も初めて聞いた。』

香山『奥さん、旦那さんを責めないでやってください。

黙っとくように頼んだのは私なんです。事の大きさを考えて、解決するまては…と。

すいません。』

香山さんの言葉に妻は渋々納得し、神詞様が続きを話し出す。

神詞『まず結論から言います。

これらを引き起こしたのはドッペルゲンガー(自己象幻視)、生霊の類です。

同じ人物が同時に別の場所に現れ、遭遇すると死に至ると言われています。

遭遇した者の死に方は様々ですが、大体が自殺と思います。』

『同じ人間…?

じゃあ義想様が最初に言ってた伊吹さん自身がどうのって話は…』

神詞『ええ、ドッペルゲンガーで間違いないでしょう。

それから高校生の子達も同じだったと考えます。

稀にですが、ドッペルゲンガーは複数現れる場合もあります。何故そうなったか、何故あの場所に現れたかは不明です。』

『伊吹さん、高校生達はさぞかし苦しかったんでしょうね… 私達が殺したも同然ですよね…』

神詞『あなた方の責任ではありませんよ。

信じられないと思いますが、義想様はもちろんのこと、伊吹さんという方も高校生達も幸せそうな顔をしていました。』

『どういう意味ですか?』

神詞『これもドッペルゲンガーによる呪いと言うべきか、あの日遺体を確認しました。

腐敗が進んでてもどういう表情だったか、どういう経緯で自殺をしたかくらいはわかります。

全員、恐怖というより《死ななければならない》という念を埋め込まれたと思います。

私なりに霊視を試みた結果、義想様は微笑みながら喉を刈っ切り、伊吹さんも嬉しそうに首を吊った。また死しても笑顔のままでした。

残りの二人は爪を立て、ひたすら全身を掻きむしりまるで面白いテレビを見てるかのように笑いながらその行為を続けていました。』

『もうやめてください!!』

限界に達した妻の叫び声に一同ビクっとしたが、神詞様は続ける。

神詞『奥さん、私は嫌がらせで話してるんじゃないんです。

これは亡くなった方々の心の声でもあるんですよ。

誰もあなた方を恨んでいません。

真実を聞いてほしい。それだけなんです。』

神詞様の温かい言葉に妻は落ち着きを取り戻したが、ずっと泣いていた。

神詞様の話も終わりに差し掛かり、香山さんも含めた話し合いで全ての遺体は神詞様の持つ神社で《清めの炎》というので焼却することに決まった。

その後、それぞれの墓を神社の片隅に建てるので毎年必ずお参りに来るように言われた。

今回の事は当然ながら事件として扱われず、香山さんの話では事の発端から管理していた書類全てを破棄したそうだ。

あれだけ長かった恐怖の日々は終わり、2年が過ぎた。

香山さんは来年で定年退職を迎える。

俺達もまた県外に引っ越し、少しずつ普通の生活を取り戻している。

お参りも俺達、香山さんの3人で必ず行っている。

これは俺達が死ぬまで続けなきゃならないこと。

何故って??

あの方々がずっと見ていてくれてるから。

裏切ったら駄目だって。

ずっと… 約束だよって。。

                    (完)

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月舟さん、初めまして!
今作品に怖い、コメントまでありがとうございます!
三作に渡って完結にしたつもりが、あやふやな終わり方になってしまい読者の方々に申し訳ない気持ちが…
そんな中怖いと感じて下さって本当にありがとうございますm(__)m
今後も怖話に精を出したいと思います!

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沙羅さん(^^)
ありがとうございます!
読みにきて下さってとても嬉しいです(*^^*)
そうなんです、、今回は不特定多数の犠牲者といいますか… 共通点があるとすれば、あのアパートといったところですかね(>.

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はとさん、こんにちは!お久し振りです!
ちゃんとした完結編になったか微妙な作品なのに、怖い、コメントつけて下さりありがとうございます!
今作は最初から最後まで謎… 最終的に正体がわかったにも関わらずモヤモヤが残る終り方になってしまいました。
なかなかこれといったアイデアも浮かばず、情けない限りです。。
もっと皆様のために頑張ります!

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mamiさん、こんにちは!
続編にして完結編に怖い、コメントありがとうございます!
事の発端はやはりあのアパート、または呼ばれたか、あるいは既にあの場所に存在していたのか…
謎が謎を呼ぶ話に仕上げたんですが。。
【ウスイさん】に関して私も読み直しましたが、なかなか納得のいく完結に繋げるのは難しいですね(^^;
しかし、mamiさんからこのシリーズが好きだと言ってもらえて感謝とともに作って良かったと思います!
読んでいただいて本当にありがとうございましたm(__)m

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むぅさん、お久し振りです!
いつもいつも私の作品をご愛読してくださるむぅさんには本当に感謝していますm(__)m
今回は自分自身による怖話で締めてみました(^^)
結果は残念ですが……
また良い作品を考えますので今後も宜しくお願いします!

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