短編2
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しあわせ

何年か前のお話。

私と友人がとある心霊スポットのある地方まで出掛けると、

目の前に真っ赤な帽子に黒いワンピースの女が居た。

丁度道に迷って、

なんせムード作りの為に夜に

その不気味な場所に居た為

困り果てて居た私達だったが、

私はその女のおかしな風貌と

こっちを見てニヤニヤ笑う姿にとても私は道を聞く気になれず、

見て見ぬフりをして居た。

しかし友人は

『大丈夫だって~』

と笑いながらその女に近付くと、

二、三言会話してから戻って来た。

と、思ったら女に腕を掴まれて、

何か聞かれて居た。

友人がそれに頷くと女は友人を開放した。

『大丈夫だった!?』

心配して聞く私に友人はキョトンとした顔で

『うん、あっちに出たらコンビニあるって?』

と、答えれる。

その一部始終をずっと見て居た女は私と目が合うと

こっちに近付いて来て、

『ねぇ?あなたシアワセになりたい?』

と、聞いて来た。

私が意味も分からず首をかしげ返事をためらうと、

『あなたもシアワセにしてあげようか?』

と、聞いて来る。

でもその女の月明りに照らされ見える笑顔が無性に怖かった私は、

『いえっ!結構です!!』

そう言うとサッサと友人の手を引き車に乗り込んだ。

とても後ろなんて振り向けなかった。

女が舌打ちをして居たのを聞いたから、

さっきから湿った地面を歩いて居る筈なのに、

その女の足音が全くしない事に気付いてしまったから。

その日は特に何もなかった、

けれども数ヶ月それは起きた。

友人は自宅マンションの一室で死んで居た、

凄惨な死に方で

壁には彼女の血で「死遇わせ」と書いてあった。

しとしとと雨が降る日、

彼女の葬式は行われた。

茫然とする私の耳に、

あの日の女の言葉が残った。

『シアワセにしてあげようか?』

幸せでは無く、

死遇わせ

もしもあの日私が頷いて居たら…

雨と線香の匂いの中、

庭を見ると

女の裂けた口で笑う顔が不自然な角度から一瞬覗いて居る気がした。

怖い話投稿:ホラーテラー とちおとめさん  

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