中編4
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カラオケ店

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人は大人に成長した時に

子どもの頃の感受性が衰えてしまい

幽霊などの存在が見えなくなることが多い。

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いつだったかお寺の住職を父に持つ友人に

そんなふうに言われたことがあります。

とはいえ

「見えなくなることが多い」

だけであり、そうでない人もいます。

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僕はつい最近まで前者だと思っていたのですが

どうもそんな存在に縁があるのか

一昨日、ちょっとした体験をしました。

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1週間ほどの連勤が終わり、連休をもらって

最初の1日を外出して暇を潰していました。

ふらふらと散歩を満喫していると

ふと、カラオケ店が目に入りました。

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「そういえば最近全然行ってなかったな」

次の日も休みということで

どうせなら思いっきり羽を伸ばそうと

そのカラオケ店に入っていきました。

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フロントへ行くと店員さんの元気な声。

特に問題もなく、5分ほどの待ち時間で入室できました。

ただ、待ち時間の中で4人ほどの女の子グループが

部屋に案内されていたのですが

その時の店員さんの反応が少し暗く聞こえました。

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入室してから2、3曲歌ってノリにノッてきて

次は何を歌おうかなーと考えている時に

なんとなく背筋が寒くなったのを覚えています。

冷房がついてるわけでもなく僕自身もそれなりに着込んでいたので少し不思議に思いました。

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気のせいだろと思いつつ歌を入れようとしたとき

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shake

今度は、明らかに視線を感じました。

視線はちょうど真後ろ。

真後ろは壁であり、視線なんて感じる筈がない

とは思いつつも僕は振り返りました。

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そこは、何の変哲もないただの壁です。

ただ僕が気になったのは

その壁に掛けられていた絵画でした。

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見たことのない画風で

花の束が広がる真ん中で

寝ている赤ん坊がいるという

少々不気味に感じる絵でした。

なんとなくそのまま背を向けているのも嫌なので

そこから僅かにズレた場所に座って歌いなおしました。

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約1時間ほど経った頃、ジュースを取りに行き

部屋に戻ると

待ち時間に見かけた女の子グループがいました。

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部屋を間違えたかと思い慌てて番号を見ても

自分の部屋番号だったので、泥棒かと思い

確認しましたがなにも取ってないと言います。

じゃあどうしてここにいるのかと尋ねると

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その子らは僕の隣の部屋に案内されて

さっきまで普通に歌っていたそうです。

しかし、歌い終わって休憩しようとして

4人のうち3人が悲鳴をあげて部屋を出て

1人もびっくりしながら着いてきたそうです。

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その3人によると

お菓子を注文しようとしてメニューの方に目をやった時

3人が同時に女を見たそうです。

それもへんな方向に首が折れた女が

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こちらをじっと見ていたと言います。

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そして怖さで部屋を飛び出し

部屋が明るく、アニソンのかかった僕の部屋へ

避難したそうです。

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その話を聞いて

とりあえずフロントへ行くよう促しました。

ただ、怖くて元の部屋の前を通れないとのことで

結局フロントまで付いていくことになりました。

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受付の店員に説明すると

妙に慣れた感じでお詫びと料金無料での退出を提案して

対応をしていました。

女の子グループが帰っていったあと店員さんが

「お客さまも別の部屋に移動なされるか、退室された方がよろしいかと・・・」

と言ってきました。

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店員さん曰く

僕の部屋とその女の子達の使った部屋は

「出る」らしく、女の子達の部屋は

大抵のお客さんが入って1時間前後で

退出を希望するそうです。

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僕の部屋に関しては

大したことはないものの

多少霊感があればなにかしら影響があるとのことで

僕の感じた視線などもその類だそうです。

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僕の途中退出も無料にしてくれるとのことで

お言葉に甘えて退出させてもらうことにしました。

そのために部屋に戻り仕度していたのですが

また、あの視線を感じました。

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早足で出ていきながらふと絵画に目をやると

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絵画の赤ん坊と目が合いました。

うわっ、と思って部屋を出ていき

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階段を降りる時、微かにですが

赤ん坊の泣き声のようなのが聞こえました。

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そそくさとカラオケ店を出ていった僕は

店先に先ほどの女の子達を発見しました。

その子らも僕を見つけたのか

「さっきはすみません、ありがとうございました」

と言って近くのミスドのドーナツをくれました。

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次の日に友人にその話をすると

友人曰くそのカラオケ店が建つ前に

妊娠中の女性が事故で首の骨を折って亡くなった

ということがあったそうです。

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ドーナツは美味しかったですが

正直大人になっても

実際にこんな体験することになるとは思いませんでした。

最初に言った通り、やっぱり僕はそういうのに縁があるのかもしれません。

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>むぅさん

れっきとした男でございます故...!

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