「あなたは生きていますか?」2

中編3
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「あなたは生きていますか?」2

(何?何で微笑んでるの?)

と思った瞬間、または瞬きした瞬間

その子は居なくなっていた。

コップに入った炭酸水も満タンだった。

でも唇の跡は消えていなかった。

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その日は普通に過ごし

職場と悪友に電話で帰ってきたと報告したり

家で大人しく過ごした。

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その日は夢を見なかった。

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目覚めた私は再度職場に電話した。

社長の温情でしばらく休んでから来い、と

あるはずのない冬休みをもらい

久々に地元をあてもなく歩いた。

自分のこれからを見つめ直す。と言えば聞こえはいいのだろうが

私はあの子の事で頭がいっぱいだった。

(結局あの子は…霊なのか?)

なんとも言えない切ない気持ちになりつつも

帰宅した私は一直線に冷蔵庫に向かう。

もしかしたら…と期待していたのは当然の話。

でもあの子はいきなり横に立っていることはなかった。

落ち込みながらも自室に戻ると電気が付いている。誰だ?

窓際の木彫りを見つめているあの子がそこに居た。

そして振り返り

「これ何?」

と言った。

安心感からなのか脱力した私は

「魔よけのなんかだと思うよ」

「…」

仮にこの子が霊だとしたら皮肉になるのかな。

と思い話題を変える。

「昨日は急に消えたけどどこに行ってたの?」

「ずっといたよ」

まじか。やっぱり霊なのか、この子は。

または自覚がない超能力者で危険な組織に追われてるのか?

とわけのわからない妄想をしたが可能性が高いのは超能力よりは霊。前者だろう。

ここで確信にせまる少し皮肉な質問をしてみる。

「あなたは生きていますか?」

その子は俯き

「わからない」

やっぱりか。これは死んだことに気付いていない

いわば浮遊霊というやつか。

というより何で俺はこんな冷静なんだ?夢で会っていたからと言って

相手は霊で確定したんだぞ?

いつ消えるか(見えなくなるか)わからない。

この子の事を知っておかないとな。

「夢の中で君によく会っていたんだけど俺のことわかる?」

「わかる」

「何で夢に出てきたの?」

「わからない」

まあそりゃそうか、夢っていっても俺の都合だもんな。

いやまて、俺の脳が作り出した幻覚か?

そうだ、そうにきまってる。

「君の名前は?」

「わからない」

確信した、これは幻覚だ。

窮地に立たされて俺の脳が作り出した幻覚だ、そうだ。

「でも」

?何だ?

「あなたがわたしをひっぱってきたんだよ」

(何を言ってるんだ?)

「どうゆうこと?」

「わたしがずっと暗いところにいたらあなたにひっぱられた。」

「暗いところって、どこ?」

「トンネル」

そうか、そういうことか、やっぱり霊だったのか。

多分トンネルってあの淵に向かう途中にあったトンネルだよな。

そういえば入口に花瓶が置いてあるの見て「可哀想」と思ったんだ。その気持ちがこの子をひっぱってきてしまったんだな。

「そっか。わかった気がする。」

「なにが?」

「何でもないよ。あそこに君は帰りたい?」

「よく覚えてないけど」

と俯きしばらく黙った後

「まだここに居たい」

とこの子は言った。

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続く

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