中編3
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曰く付き

私の知人に藤井さん(仮名)という方がいる。

旧家の生まれで代々祈祷や神事に関する家柄だという。(当の本人は別の仕事をしている)

そして、彼はコレクターとして全国を駆け回っている。

そう、『曰く付き』の物を熱心に集めているのだ。

そんな彼から聞いた話を紹介しようと思う。

ある日、贔屓にしている骨董品店からこんな話を聞いた。

「何かしらの不幸を呼ぶ白装束がある。」

なんとも曖昧な話だが、とにかく色んな不幸を呼ぶらしく、

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破産をした。

何かに魅入られたように廃人になる。

所有者は死んでしまう。

と、起こる事柄が一貫していないのだ。

多少向こうが話を盛ったのだろうとは思うが、その話を聞いて藤井さんは現地へとすぐに向かった。

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場所は東海地方。

件の装束はごく普通の一軒家(空き家)にあるらしく、家主も怖くて取りに行けないとの事。

家主の話を聞いてみると

『夜になると、話し声や変な音が聞こえてきたり、家の者が体調を崩す事が多くなった。』

話し声や音、由縁に関して詳しく聞くと

金属を打ち付けるような音が聞こえる。

話し声は微かに聞こえる程度でわからない。

由縁だとかは身内から回ってきたものなのでよく分からない。

近しい身内から回ってきた事もあり処分が出来ずに困っているとの事。

そのような事が続き、家主一家は引っ越したそうだ。

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話を聞いた後、

藤井さんは祈祷の道具や効果のありそうな物(詳しくは教えてもらえず)を持ち込み、

その空き家に入った。

まず感じたのは、息苦しさだった。

首や関節にまとわりつくような気持ち悪い気配を感じた。

その気配の元を辿っていくと和室の隅に置かれた衣装箱にたどり着いた。

中には桐の箱が1つだけ入っており、その中には綺麗に折り畳まれた白装束が入っていた。

白装束に関しては染み1つない非常に綺麗なモノで、手に取ると、非常に『冷たく』感じたそうだ。

念入りに邪気を封じ込め、家から運び出すと家主の元へ向かった。

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家主の家に着いたが、家主が出てこない。

「そんなもの見たくもないから早く帰ってくれ!」

玄関の扉の奥から怒鳴り声が響く。

一応、馴染みの除霊専門の神主を紹介すると藤井さんは帰路に着いた。

その帰り道だ。

ワゴン車を運転していると、バックミラーに白装束の髪の短い女が映った。

ただ怖いのではなく、

感じたのは深い『悲しみ』と『後悔』。

それと同時にやはり、まとわりつくような気味の悪い気配も感じたのだという。

そして、家に着いた藤井さんは、まず祭壇に向かい、霊視を始めた。

この白装束の由縁を知る為だ。

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見えたのは明治~昭和くらいの20代後半と思われる女性。

金属を打ち付ける音、と白装束から予想していた通り、丑の刻参りに準ずる呪術使われた物だと言うこと。

呪いは成功したが、『人を呪い殺した』という自責の念に駆られ、池に身投げをした。

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そこまで見えたらしい。余程強い念だったのだろう。

そして、最後に見えたのは、

これを家主に渡した近しい身内とやらの

『悪意』

である。

その身内はこの白装束が『人を呪う道具』だと言うことを知っていて渡したのだ。

『まとわりつくような気味の悪い気配』というのは呪いそのものであり、それが念を込めたモノでなくとも、人に害を及ぼす。持ってるだけで呪われるのはあながち間違いじゃない。大なり小なりの不幸を呼び寄せるのはそういう理由からじゃないか、と推測した。

そして、後日わかった事がある。

この白装束はとある寺から持ち出されたモノだった。

供養目的で安置していたのだが、盗難にあったらしい。

すぐにその寺へ赴き、返却しますと伝えると、

住職は首を振り、

「あなたはその装束と縁を持ってしまった。手放す事は出来ないでしょう。」

その寺の住職はそう言った。

そして、こう続けた。

「だが、あなた自身『そういったモノ』にはかなり強いとお見受けする。あなたになら安心して預けられる。」

そういって住職は頭を下げたそうだ。

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そうして、今もその白装束は藤井さんの家にある。

「今もたまに家の蔵の中で彼女は泣いてる。何とかして解放してやりたいんだけど、呪いがそうさせてくれない。30年は続くんじゃないか?

『人を呪わば穴2つ』。

呪いってのはそういうモノだ。」

藤井さんは酒を飲みながらそう私に語った。

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