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第三回リレー怪談 鬼灯の巫女 番外編 中編

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第三回リレー怪談 鬼灯の巫女 番外編 中編

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「そっかー、もう大学生なんだ。どう、やりたかったデザインの勉強、出来てるの?」

「うん、思ったよりも大変だけど、頑張ってるよ。最近、パソコンとか使いだしたんだ」

「へええ、あのメカオンチの渚がねえ」

「あ、ひっどーい。今じゃ立派なマカーですからね。いつまでもアナログじゃありませんよーだ」

ステップに座り、他愛のない会話を続ける二人を、東野は校舎のドア付近で、腕を組みながら眺めていた。

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(洋子とやらに、おかしなそぶりはない)

ひょっとして、なにかの力で、渚を自分の世界へ連れて行こうとしているのではないか、などとも思ったのだが、どうもそのような様子は見えない。

本当に、ただ渚の願いに呼ばれて、この場に具現したように思える。

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(・・・・・・笑っている方が似合うな)

そう思わず感じてしまうほど、屈託なく笑う渚は、先ほどまでの緊張と不安に満ちた表情とはうって変わって、東野の目にも魅力的とすら思えた。

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どれぐらい時間がたっただろうか。

洋子が、つ、と立ち上がった。

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「ごめんね、渚。私、そろそろ・・・・・・」

「・・・・・・もう、行っちゃうの?」

渚もその場に立ち上がる。

「洋子。もう、会えないのかな」

「ううん、きっと会えるよ。また会える。

でも、私、行かなきゃいけないから・・・。

だから・・・今度会えるのは少し、先になると思う」

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「・・・・・・やだ、よお」

渚が嗚咽を漏らしながら洋子の胸に顔をうずめた。

洋子が、両手を渚の肩に延ばす。

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(連れて行く気か?)

一瞬、東野に緊張が走った。

彷徨う魂が現世の人間を巻き込みたいなら、今が絶好の機会だ。

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だが、洋子は、震える手で渚の肩に手をかけると、ぐっと二人の体を引き離した。

「ごめんね・・・・・・ごめんね。渚。

でも、きっとまた会えるから・・・その時まで、少しだけ、バイバイ」

「洋子・・・洋子お・・・・・・」

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洋子の体が少しずつ光に覆われていく。

やがて朧げな鱗粉のように、その光が虚空へと溶け始めた。

「洋子、待って。お願い。一つ聞かせて。

どうして死んじゃったの?ここから飛び降りたのは、やっぱり私が・・・・・・」

必死に問いかける渚に、洋子は微笑みかけた。

「違うよ」

「・・・洋子」

「渚のせいじゃないよ。絶対に渚のせいじゃない。ただ、あの時の私は、こうするしかなかったの。

ゴメンね。渚にまで心配かけちゃって。弱い私で、ゴメン」

渚は激しくかぶりを振った。

洋子の体が薄れていく。

下半身からぼんやりと、まるで蛍の乱舞のように光の粒になり、夜空の星々と同化していく・・・。

「最後に、もう一つだけ。もう一つだけ聞かせて。

私たち、今でも、友達かなあ」

嗚咽でほとんど聞き取れないような渚の声掛けに、洋子はほほ笑みを返した。

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「ずっと、ずっと、友達だよ」

一瞬、ひときわ光り輝いたのち、そこには洋子の姿はなかった。

星空と、防水シートに覆われた屋上に、渚の泣き声が響いていた。

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「行こうか」

しばらくして、東野が渚に声をかけた。

渚はこくりと頷くと、ゆっくりと立ち上がった。

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「あ、ありがとうございました」

まだ若干の嗚咽をしながら、渚が礼を述べる。

「気は済んだか?」

「・・・はい」

渚は、そっと鎖のついた石を握りしめると、胸のポケットにしまった。

「そうか、よかった」

東野は鉄の扉を開けると、校舎の中に戻ってく。

渚も後に続いた。

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「あ、でも」

階段を降りながら、渚が話しかける。

「ん?」

「東野さん、一つだけ間違ってました。願いを叶える石なんて存在しない、って言ってましたけど、あれ、違ってましたね」

渚は、こぼれる涙をそっと人差し指で拭うと、微笑みを浮かべた。

「私の願い、叶いました」

「・・・・・・ああ、そうだな。参ったよ。

俺の知識もまだまだだった。本当に存在するんだな。そんな物が・・・・・・」

本心だった。

「私、でも、少し怖いんです。これから、高校時代のこと、忘れちゃうんですよね。

仲間たちの事も、洋子も、ひょっとしたら、潮君のことまで・・・・・・」

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「・・・・・・シッ!ライトを消せ」

不安を払いたいのだろう。饒舌に語る渚を、東野が止めた。

二人が降りていく階段の先に、薄ぼんやりとした明かりが見える。

人工的な光、恐らく、懐中電灯か何かの光だ。

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(まさか、この時間に見回りか?)

二人は階段の影に隠れ、そっと様子を窺った。

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(・・・・・・おかしい。光が動かない)

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東野は、渚に物影に隠れているように指示を出すと、階段を慎重に降りて行った。

3階のフロア、階段の登り際の所が、薄黄色に光っていた。

その光に、何かが照らされていた。黒い、洋服のジャケットのような・・・・・・。

(・・・・・・)

東野は息をのんだ。

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人間が倒れている。ジーンズに身を固め、大の字になって仰向けになって倒れている、大柄なその男は・・・・・・。

「・・・どういうことだ」

思わず口に出てしまった。

そんなことはありえない。そう何度自分に言い聞かせても、目の前の現実は変わらない。

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東野の前で倒れていたのは「南田 潮」だった。

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「・・・っ!」

空気が変わった。重苦しい、まるで溶解した鉛の海の底にいるような、鈍重な感覚が周囲を取り巻いた。

星空の明かりが感じられない。

酷く喉が渇く。全身の毛が逆立ち、肌が泡立つ。

全身のあらゆる感覚器官が、身に迫る危機への警告を発していた。

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(まずい。まずいぞ)

この場所にいてはいけない。

東野は渚に合流しようと、身を翻し、階段を登った。

踊り場に、窓があった。

窓ガラスから、何かがこちらを覗いていた。

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逆さまになった女の顔だった。

酷く青白い顔に浮かんだその口が、ニイイっと醜く歪んだ。

(見 ツ ケ タ)

女の口が動いた瞬間、その体は一瞬で窓から下に向かって姿を消した。

そう、まるで、屋上から飛び降りたかのように・・・。

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次の瞬間、地上の方から、ぐしゃり、という不快な音が響いてきた。

沈黙が辺りを覆った。

東野の心臓が、早鐘のように胸を打つ。

コツ・・・コツ・・・・・・コツ・・・・・・・・・

小さな物音が聞こえてきた。

何か、靴音のようなものが・・・。

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何者かが、登ってくる。

コツ・・・コツ・・・コツ・・・・・・

靴音は、少しずつ大きくなってきた。

ベシャリ、ズルズルという何かを引きずるような音が混じって聞こえ始めた。

何かが、決して出会ってはいけない何かが、こちらに向かって進んでくる。

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(ここにいてはいけない!)

窓に向かうのは躊躇されたが、今はそんなことを言っていられない。

(一刻も早く渚と合流しなければ)

東野は足を速めた、が、足が震えている。うまく走れない。

(・・・バカな?この俺が?)

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歯噛みしながら、足を殴打すると、なんとか少し思い通りに動くようになった。

今まで怪奇現象にはいくつか遭遇してきたが、こんなことは初めてだった。

経験したことのないほどの脅威が身に迫っているのを感じた。

必死の思いで階段を上り、4階へのフロアから少し登ったところに、渚がうずくまっているのが見えた。

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「渚、行くぞ。此処にいてはいけない」

周囲を警戒しながら渚の身を起こす。

直後、違和感を感じた。

重さを感じない。

渚の体が、服を着ているのに、まるで氷のように冷たい。

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「・・・渚・・・・・・?」

東野は渚の方を振り返った

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渚の顔が陥没していた。

目があるべきところには大きな穴が穿たれ、ヘドロのような脳漿が、ねっとりと滴っていた。

べっとりとした血液にまみれた髪には、ちいさなピンク色の髪留めが覗いていた。

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「貴様、渚じゃ・・・」

渚じゃない。そういいかけた瞬間、女の髪が蛇のように蠢き、東野の首に巻き付いた。

「・・・っ!!」

髪は凄まじい勢いで首を締め付け、ぎりぎりと体が宙に浮く。

と、同時に、髪から濁流のように黒い感情の渦がなだれ込んできた。

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怒り、嘆き、絶望、恐怖、妬心、憎悪、殺意・・・・・・。

気が狂いそうになる異常な感覚。一人の人間に受け止めきれるものではない。これは・・・

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『怨霊』

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過去一度だけ遭遇しかけたことがある。

1人の負の感情を核に、様々な悪霊が集合した妖魔だ。

これを超えるのは神のみ、と言っていい、通常出会いうる中での最悪の魍魎。

今、ここでそんなものに遭遇するとは・・・・・・。

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(とにかく、一旦距離を取る!)

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東野は、首を締め上げる髪に手をかけながら、もう片方の手で、ポケットから水晶を取り出した。

常に身に着けているアミュレットだった。

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東野がアミュレットに「力」を送った刹那、水晶は音もなく崩れ、放たれた光が一瞬目もくらまんばかりに辺りを白く染めた。

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次の瞬間、東野の首を絞めていた髪の力がふっと抜け、体が地面に叩きつけられた。

辺りに女の姿はない。

「・・・っぐ、がはっ」

東野は激しくせき込みながら、床に落ちた懐中電灯を拾い上げると、階段を昇って行った。

視界の端に、潮のライトがかすかに見える。

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(南田潮・・・お前は・・・・・・)

未曽有の危機にありながら、東野の脳髄は冷静に今の状況を分析していた。

(知っていた。気づいていたんだ。

洋子の魂と、渚が出会ってはならないことを・・・・・・)

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そして、身体を張って、渚をこの場に来ないように仕向けた。自分は一切の悪役を引き受けて、そして万が一渚がここに来てしまったとき、自分が盾になろうとして・・・・・・。

(潮、あいつは見た目ほどバカじゃない。あいつはあいつなりに考えて、自分なりの最善手を打っていたんだ)

東野は自分を恥じた。

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(あいつも助けてやらなきゃな。だが、今は渚だ)

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酸欠に視界がぼやける中、必死の思いで階段を登る。

渚に隠れているように指示を出した物影が見えてきた。

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懐中電灯の光を当ててみる。

ロッカーの影から、そろそろと顔を出す人影があった。

渚だ、今度は間違いない。

「渚、少し状況がまずい。ここから一旦出るぞ」

話しかけながら近づいていく東野の方を見ながら、渚の顔がみるみる恐怖にゆがんでいく。

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「・・・?どうした?」

渚は、わなわなと震わせながら、指を東野の方に向けた。

いや、正確に言うなら、東野の、少し後ろの方を・・・・・・。

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「きゃ、きゃあああああああああああああああああああ!!!」

渚の絶叫が響いた。

東野は背後を振り返った。

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後ろには、巨大な闇が広がっていた。

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視界の端に、黄色く濁った塊が不揃いに並んでいるのが見えた。

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それが、視界をはるかに超える大きさの、何者かの口が東野を飲み込もうとしているのだ、と認識したとき、東野の体は、巨大な闇の中に吸い込まれるようにして消えた。

からん、という音がして、何かが床に落ちた。

東野が今の今まで持っていた懐中電灯だった。

「あ・・・あ・・・・・・」

渚は、がたがたと震えながら壁の際まで後ずさった。

目の前には、黒い塊が、廊下いっぱいにまで広がっている。

赤黒い肉塊がその闇をこじ開けるように蠢くと、渚の方に濁った黒い球体を向けた。

渚の方を見ているように見えた。

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「あ・・・ひ・・・ひい…・・・」

腰が抜けたようでうまく立てない。

渚は震える体で、階段に向かって這いつくばりながら進んだ。

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コン、という音がして、胸ポケットから、鎖のついた石が転がり落ちた。

コン、コン・・・

乾いた音を立てながら、石は階段を転がり落ちていった。

階段の先に、人影が見えた。

渚の瞳は涙でぐしゃぐしゃになり、視界は霞んで、最初それが誰かわからなかった。

人影は、足元に転がった石を拾い上げると、唐突に口を開いた。

「あら、あら、まあまあ、よくも俺の渚を泣かしてくれたもんだな。オイコラ!」

言いながら、渚たちの方に向かって歩いてくる。

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「おい、てめえら、知ってるか?

ヒーローってのはなあ・・・・・・」

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手にしたライトの光を、影の塊に向けてびしっと照射した。

「遅れてくるもんなんだよ!!」

とうっ、と一言声を上げると、階段を3段飛ばしで、一気に渚の目の前に立つ。

「渚、洋子、待たせたな!

スーパーヒーロー、潮様登場!!」

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筋肉質の体をゆらりと揺らすと、渚の前にいる、黒い塊に対峙した。

「さっきはよくもびっくりさせてくれたな。コノヤロウ。ああ?死ぬかと思ったじゃねえか。

俺様が死んだら、てめえ俺様と同じ土俵だぞ。ああ?

てめえ、ただで済むと思ってんじゃねえぞコン畜生!」

啖呵を切りながら、ポケットから、今拾った石を取り出す。

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「渚、これかい?あんたがいってた、『願いを叶える石』ってのは?」

潮は石を高く掲げ、息を一つ吸い込んだ。

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「やい、くそ石!よく聞けよ。

俺様の最も最も、最っっっとも大切な気持ち。『渚への熱い思い』をくれてやる!

さあ、洋子に取り憑いたへなちょこ亡霊共を、丸めてウンコごと便所から地獄にでも叩き落としてやれ!!」

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「・・・・・・潮、君?どうして」

渚は、やっと口を開いた。

潮は、がははと豪快な笑い声を上げた。

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「なあに、心配するな!俺様が渚への気持ちを消せるわけねえだろ?石の魔術なんざ、ぶっちぎって・・・・・・」

「ごめん、そうじゃなくて・・・どうしてここに?」

「ああ?そりゃ、まあ、俺は渚のガーディアンエンジェルだから・・・・・・って、熱っち!!」

潮がぶんぶんと手を振った。

真っ赤に染まった鎖のついた石が、コンコンと音を立てながら転がり落ちる。

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shake

オオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

洞穴から響くような重い、呻き声のような音が辺りに響き渡った。

廊下に広がっていた顔が、ぐにゃぐにゃと揺蕩い、一瞬小さく縮んだと思うと、次の瞬間、爆発するように膨れ上がった。

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闇の中から、いくつもの髑髏や、腐りかけた男女が飛び出してきた。

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髑髏たちは、弾丸のような勢いで、空中を一直線に飛び、虚空へと消えていく。

そのうちの何体かが、渚と潮に向かって飛んで来た。

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「いいいいいいいい?」

カタカタと歯を鳴らしながら、潮の首に咬みつこうとする髑髏を引き離しながら、潮が妙な声を上げた。

「渚!大丈夫か!?」

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渚に向かい、ずりずりと這い進む男の上半身と思われる肉塊を踏みつけると、潮が渚に声をかける。

渚は、ほとんど失神しかけながら、かすかに頷いた。

徐々に、徐々に廊下を占拠していた闇が薄れていった。

そして、ほぼ霧のようになった、その中心にいた黒い塊が、潮の方に倒れこんできた。

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「おっと」

潮は、その塊を抱き留めた。

「洋子、おひさ」

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艶やかな髪に、ピンクの髪留めをした少女が、潮に倒れかかっていた。

その様子を、渚は少し複雑な表情で見つめていた。

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