中編4
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ちきゅうがさいごのひ

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この街は、平和な街だ。

交通も利便性があり、栄えているのにもかかわらず、殺人は勿論のこと、万引き等比較的軽犯罪と呼ばれる犯罪も、ここ40年起きたことがないらしい。

観光できる場所はないが、穏やかな日常が流れている街だ。

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私は幸せになれない気がしている。

現状に不満足だとか、そういうんじゃない。いつかこの、側からみたら「小さな幸せ」も崩壊してしまうんじゃないかと思ってしまう。

私には家族も親友も恋人もいる。

全く喧嘩もしないわけでもないが、仲良く暮らしている。ただ、時折ふと「ああ、いつかガラガラと崩れてしまうんだろう」と思ってしまうのだ。

私には、他人と壁をつくる癖があるらしい。本人の全く意識していないところで、見下しながら壁を作っている…そう評価されたことが度々あった。本人の無意識のうちにだからこそ、タチが悪い。

ただ、恐れ多くも、多くの方々は、自分より劣っている者を見つけて安心するだろうし、上ばかり見ていたら息苦しくなるのは事実だ。私に石を投げても良い者は、私や私以外の人間を一切見下した覚えがない者だけである。

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ああ、被害妄想甚だしい…

俺は彼女のことを思った。

彼女は、自分のことを悪く言われているような被害妄想がひどい。

普段は大丈夫なのだが、情緒が不安定なとき、「アイツが私を悪く言う」などとなかば血走った目で、低い声で呟くのだ。

気色悪い…

彼女は愛嬌があり可愛いな、と思って付き合い始めたのだが、最近特にその傾向が強まって、別れようとまで思わないが、正直冷めてしまっている。

あいつの悲しむ顔までは見たくないし、「別れよう」とは、言えないけど…

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私は今年で50歳になり、娘は21歳になる。利口でしっかりしている娘だと周囲からはよく褒められたが、娘には堅苦しい部分もあって、なにより頭でっかちでときたま考えすぎなんじゃあないの?机の上のお勉強よりも大事なことはあるわと言いたくなることも多い。

なによりなんとなく暗いのだ。いや、わりかし懐いたら愛想は良いらしいが、娘なりに心を赦した相手でないとムスッとした感じで、社交的とは言えない。

正直、訳の分からない論文のようなものを書く能力より、愛嬌をつけてほしい、女なら…と思っている。

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僕は浮気をしている。

出会い系サイトで知り合った女と…。

妻はまだ知られてないが、どうやら娘に知られた…のか?

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私の両親は、いわゆる仮面夫婦で、どちらも家の中に見知らぬ誰かを招き入れていた。お互い知っているのに知らぬそぶりをして、私の存在は忘れてしまったかのごとく振る舞う。「〇〇ちゃん、久しぶり」なんて声をかける能天気な見知らぬ男…と、笑う母親。

親友は、よく愚痴をこぼすけれど、私の家庭の方がよほど酷いし、甘ったれだとしばしば考えてしまっている。私には、まさか家庭のことなんて口外できない。

親友は、まるで自分が悲劇の主人公のように振る舞う。そういう面では、バカだな、なんて。他は趣味も合うし一緒にいて楽しいんだけれど。

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突然アラームが鳴った。

目覚まし時計のアラームではない。

テレビから聞こえてくる、聞いたこともない、騒々しい音。

「ただいま、重大発表がありました。宇宙関係者によるところ、巨大隕石が地球に向かっているとのことです。繰り返します。巨大隕石が地球に向かっているとのことです」

ニュースキャスターの声はいつもより震えていた。

映画でしか見たことがなかった状況だった。

どこもかしこもテレビもラジオもそればかり。総理大臣も出てきた…。

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「今日が地球最後の日です」

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静かに述べて、礼をした。

私は訳がわからなくなった。

しばらく呆然と立ち尽くしていたが、

すぐに家族…私の父母は私の元駆けつけた。

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「地球最後の日って…」

しばらく話し合いをした。1時間ほど経って、会いたい人に会いにいきましょうという話になった。

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でも、

私の恋人は、「被害妄想女」だと私を罵った。私の親友は「甘ったれくそインキャ」と私を罵った。

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家に帰ってから私の両親は取っ組み合いの喧嘩をしていた。

母親は「頭でっかち!愛想なし!こんなときもぼーっとみてるだけなの?!」と私を罵った。父親は母親の胸ぐらを掴んだ。

「お前がヒステリー起こすから浮気したんだよ!!!!!」

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24時なった瞬間

「今日はエイプリルフールです」とニュースキャスターが笑顔で告げた。

「本当は午前中に収めないといけないらしいですが、ここではエイプリルフールの由来を…」

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私の住んでいるこの街では、ウソの地球最後の日でも窃盗も殺人も強姦も起きなかった。暴動らしいことはあったものの、怪我人はでなかった。

でも、私は二度と取り返せない何かを失った気がした。

私は、心から願った。

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「神さまどうか今日を地球最後の日にしてください」

Concrete
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