中編3
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夢の後追い

これは私が14歳の時に見た夢の話し。

あの夢から20年以上が経ち、特に何か起きたかといえば、何も起きてはいないが 何故に今でも

鮮烈に鮮明に覚えているのか・・・

〜 夢の後追い 〜

北陸地方に住む私の家の近くは日本海に面した海岸があり、夏には海水浴で賑わう小さな田舎町である。

そんな田舎町も夏の繁忙期も過ぎ、秋になりかけた頃、

地震が起きた。 津波の心配はそこそこにあっただろうが、特に大きな被害もなく、私は海岸沿いを何か昨晩の大きな波が持ってくるのではないかと地震が起きた次の日の昼間に海岸沿いの砂浜を歩いて探索していた。

そして、砂浜を歩いていると 錆びついた金色の懐中時計を見つけ、手に取った。

何処からか流れ着いたのか、 そう思い

あまり不思議な感覚はなかったが それを開けた

次の瞬間に それが何処か遠い波場から来たものでなく、異界の物だと分かるほど強烈な悪寒に襲われた。

身体の毛穴が全て開いたかのような感覚と

辺りに何故か誰もいない砂浜。

穏やかすぎる波間と雲が一つもない晴天すぎる空が

異様な怖さだった。

誰もいない・・・ いや、いなくなったようだ。

懐中時計の時針、分針は壊れていて 勿論 動かない。

今の状況 そのものであるかのように。

私はその懐中時計をまじまじと調べていた。

手のひらサイズで重量感もあり、今思えば

海の底に沈みいくものが何故に砂浜にあるのだろうか?

それは、手にする者を待っていたような気がした。

その時だった

懐中時計のケースとリューズが崩れ落ちた

崩れ落ち、ぐちゃぐちゃに分解されたその中から、切手サイズより少し大きなシールくらいの一枚の写真が出てきた。

古びたセピア色の写真には 小さなオカッパ頭の

女の子が写っていた。

私はそれが何か全く理解できなかったが

直感で触れていいものでない事は理解できた。

すぐに恐怖心が全ての感情を押しのけ、頭から身体まで旋律のように走り駆け、砂浜を後にした。

走りながら、家に帰ろうとしてる時に

分解された懐中時計をみると 足が止まった。

いや、止められたようだ。

あり得ない事に さっきのセピア色の写真の他にも写真があった。

あの時は一枚しかなかったハズだ。

錯覚でなく、写真が分解された懐中時計から

手の平で踊るように溢れて増え続けている。

時針と分針は壊れている。

ただ 秒針だけが動き始めた

恐怖心と好奇心が赤色と青色を混ぜ合わせたような

混沌とする感情の中で増え続ける写真を見ていると

セピア色の一枚目 以降 増え続ける写真はセピアからカラーに変わり、少しずつ 少しずつ どこか懐かしい人物が写真に写り始めた。

両親の若い頃の写真や、近所の人など、田舎町の風景などなど。

そして、私の生まれた時の写真や家族写真

何処か 懐かしく 微笑ましくも思えた瞬間に

溢れて続けた写真の流れが止まったような気がした。

そして 秒針が壊れた。

次の写真を手の中でめくった時に アレはやはり

異界の物だと再認識した。

昨日の地震の時に揺れて 困惑していた私の写真

今日 海岸に行こうと家を出る私の写真

砂浜を一人 晴天の中 無音に感じる前の私の写真。

勿論 そんな写真は撮っていない、存在もしない。

ただ 間違いなく 事の1時間前に満たない私の写真が今 手の中にある。

撮られているのか?

誰がいつから?

生まれた時からなのか? その前なのか?

誰かがいる

確信した時に写真は残り一枚だった。

その最後の写真を見たら

今 その写真を見てる 私だった。

後ろに誰かいる ・・・

Concrete
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