長編20
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義理父の実家

1週間が過ぎた

今回は車の移動ではなく新幹線・電車・バスと公共機関を使っての移動になってしまった

義理父の実家は東北の山奥にあり駅からバスで1時間もかかるところにある

まぁ・・・はじめての長旅となった

子供たちは新幹線に乗るのが初めてで特に葵と楓は大はしゃぎをしていた

総勢10人の大所帯

子供たちのうれしそうな顔は一生忘れられない

新幹線から電車に乗り換えて駅からバスに乗りおよそ1時間

やはり疲れが出たのかバスの中では子供たちは居眠りをしていた

バス停から降りてさらに30分ほど歩くとやっと義理父の実家だ

本当にすごい旅となった

義理父の兄が私たちを迎えてくれた

完全な百姓の屋敷

とにかく敷地が広い

周りは田んぼと藪がたくさん生い茂っていた

隣の家までは100メートルも離れていた

静寂さは和尚様のお寺と同じ程度

本当は和尚様も連れていきたかったけれどお寺の行事が多くて無理と言われてしまった

オヤジも付いていく気満々だったがおふくろの一声でオシャカになってしまった

「あんたが行くと私たち家族の恥をさらすからダメ」と言われていた

大正論だ

しかし、私は内心オヤジも来てほしかった

義理父の本当の目的であるトイレから出てきた老人の正体を探るためにはオヤジがどうしても必要だった

相手は間違いなく霊だ

悪霊なのかどうかはオヤジがいないと無理なのだ

そして和尚様もお祓いのためには必要なのだ

とりあえずは様子見をすることにした

居間に案内された

大広間という感じだ

落ち着いた感じの和室で部屋からは庭がよく見えた

日本庭園の落ち着いた感じのいい庭

さっそく我が娘、葵が庭のあたりを散歩しだした

庭いじりのプロである葵はなにかブツブツと言いながら歩き回っていた

それを見ていた義理父の兄はポカンとした顔をしていた

「パパ、ここの庭はすごいんだぞ、あたちの中庭もこういう感じで作りたいんだぞ」と満足げな顔で私に言ってきた

といっても我が家の中庭は狭すぎる

おふくろの実家なら実現はできるかも

それを聞いていた義理父の兄は嬉しそうな顔で葵の話を聞いていた

すぐに葵の才能に気付いて葵に庭作りの基礎を教えていた

長旅の疲れか段々と眠くなってきた

2時間ほど眠ってしまった

全員が寝ていたらしく義理父の兄は冷たいお茶とお菓子を用意していた

「皆さん、相当なお疲れでしたね、冷たいお茶でもどうぞ」と言われて

お茶を飲んだ

おいしい!!!

濁りのないお茶の味

「このお茶は自分のところで栽培してるお茶なんですよ、水はこの家の裏にある湧水を使ってます」

和尚様の所の湧水とは別の意味で違うなんか清々しい味がする

東北の気候のせいだろうか

なんとなく疲れが飛んだように思えた

子供たちは早速庭で遊び始めた

「いいですね、私たち兄弟も小さいときにこのような感じで遊んでいたんですよ」

と義理父と義理父の兄はうなづいていた

義理父の兄はF子を見て不思議そうな顔をしていた

F子はすぐに気づき義理父の兄に理由を聞いていた

「あのぉ・・・私になにか・・・」

「いや・・・そのぉ・・・なぁ・・○○(義理父の名前)、この娘さん、俺たちの姉によく似てないか?」

「やっと気づいたか、兄さん、俺もF子ちゃんの見ててっきり姉さんが生き返ったと思ったよ」

義理父の話だと義理父の兄弟には姉がいたらしい

だが幼少のときに病気でその姉は急死してしまった

まだ10歳という年齢で亡くなっていた

S君兄妹と知り合いはじめてS君の家へ遊びにいったときに

義理父はF子を見てびっくりしたらしい

「姉に似ている」と内心思ったとか

だからなのか義理父はF子をすごくかわいかっていたのは

亡き姉とよく似ていたからなのか

「いやぁ・・・おそらく姉さんもF子ちゃんのようなお年頃になってたらきっとF子ちゃんみたいな美人さんだったに違いないと思う、そうだよな○○(義理父の名前)!」

「たしかに・・・姉さんは本当にかわいかった、俺たち弟の面等をよくみてもらったし

「そうそう・・・流行り病で・・・」と言いながら義理父の兄は涙を流した

「兄さん・・・泣くのはよしてくれ・・・」と義理父も目に涙をためていた

F子は顔を真っ赤かにして下を向いてしまった

「ごめん、ごめん、俺たちのせいで・・・湿っちまったね」

「さぁさぁ・・・もうそろそろ夕飯だよ

今日はうちでとれた野菜とお魚とお肉だよ

たくさんお食べ」

と今日の夕飯のメニューを満面な笑顔で説明してくれた

贅沢とは思えないがボリューム感たっぷりの夕飯は和気あいあいな雰囲気でおいしい食事だった

特に育ち盛りの匠と仁はごはんを何度もお代わりしていた

それを見てますます義理兄夫婦は私たち家族に親近感を持ってもらえたようだ

いつのまにやら緊張感も解放されてなんか自分の家にいるような心地よさになっていた

私は用を出しに例の便所へ行ってみた

とにかく遠い

周りは明かりもない

家の窓からの明かりを頼りに慎重に歩いた

田んぼからのカエルや虫の鳴き声でさらに恐怖感を増す

空気的にひんやりとしてあんましいい雰囲気ではないことは霊感のない私でも感じた

さて・・・例の便所・・・

とりわけ特別な感じのトイレではない

電灯が一つついている普通のボットントイレ

中へ入って用を出した

別にとうのこうという感じではなかった

時間帯が夜の20時だからなのかな・・・

これが深夜だとまた雰囲気が変わるのかもしれない

用を出して外へ出たときに遠くから楓の声がした

「パパ~~~」

楓一人かと思っていたがS君が後ろからついてきていた

「パパ、一人でここへ来ちゃだめだよ、楓、すごく感じる

ここはあんまし空気がよくないよ」

「そうなの?パパはそんなに感じないんだけどね」

「私は感じるからSおじさんと来たよ」

「そっか・・・」

「パパ、待ってて用を出すからね」

楓は便所へ入っていった

すぐに出てきた

「パパ・・・私、ここ嫌、あっちのトイレでしてくる」

「そのほうがいい」

S君はそのまま用を出してきたようだ

「F!俺もあそこの便所はよくないと感じた

ここの便所は使わないほうがいいぜ」

「そうだな・・・たしかに」

居間へ戻った

私は早速便所の使用を禁止を言い渡した

屋敷の中にあるトイレを使うようにと言い渡した

それと例のごとく一人で外へ出ないようにとも言っておいた

夜も9時を過ぎた

外からはカエルや虫の鳴き声がよく聞こえていた

子供たちはお風呂へ入りこの家の浴衣を着て喜んでいたが

昼間の疲れが出たのかもう寝てしまった

子供たちが寝ると一気に静かになる

「静かになったね、パパ」

「子供たちが寝ると嘘みたいに静かになった」

みんな、それぞれの部屋へ行ってしまった

この居間には子供たちとS子、F子

隣の部屋には義理父夫婦

さらに隣の部屋は私とS君

この居間に私とS君が交代でいることにした

居間から見る日本庭園は風情があって落ちつく

隣近所には家はなく隣の家までは100メートルも離れている

居間にあるTVを見ながらS君と雑談をしていた

1時間ごとに各部屋のチェックとパトロールをすることにした

もう0時過ぎ

昼間の疲れが出たのか眠ってしまった

なんとも不思議な夢を見た

夢の中で「楓が危ない」と聞こえたときに目が覚めた

夢か・・・と眠い目をこすりながら部屋を見回した

「楓・・・」

「楓!!」と言いながら子供達を見た

楓がいない!!!

「匠、仁、起きろ!楓はどこ?」

「え・・・パパ・・・なに?」

「楓がいないけどどこ行った?」

「え!楓がいない・・・・ほんとだ、楓がいないよ、匠兄ちゃん」

S子とF子を起こした

「楓がいないけどどこいった?」

「おっちーー・・・えええ、楓ちゃんがいないの・・・パパ、どうしよう」

「とりあえず、S子とF子と子供たちはこの部屋にいてくれ、探してくる」

夢の中の「楓が危ない」の意味がよくわからないが楓がいなくなっていたのは間違いなかった

S君も疲れが出たのだろう寝ていた

S君を起こし楓がいなくなったことを伝えた

「しまった・・・寝てしまった・・・すまん」

とりあえずはS君は居間にいてもらい私は楓を探しにまずは屋敷の中のトイレへ行ってみた

しかし、いなかった

わたしはまさかと思い例の外の便所へ向かった

便所の横で

楓が倒れていた

「楓!!!大丈夫か?」と楓の体を揺さぶった

返事がない

「楓、パパだよ」と言いながら楓を抱き上げた

気絶してるだけだった

S君が来た

「F!!!、楓ちゃん大丈夫か?」

「気絶してるだけだよ、居間へ戻ろう」

「そうだな」

楓を抱えて私は広間へ戻った

楓を布団に寝かせた

「楓!!」

「おっちーーー、おっちーー、楓ちゃん・・・」

「アニキ、楓ちゃん大丈夫なの?」

「気絶してるだけだよ」

「楓姉ちゃん、起きるんだぞ!!」

葵が心配そうに楓の顔を見ていた

体には傷はついていないようだ

単に眠ってるような感じ

義理の両親がびっくりした顔でやってきた

「F君、楓ちゃん倒れていたって?」

「はい、例の便所の横で倒れていました」

「え・・・・なんで・・・一人であんな所へ行ったんだろ・・・

楓ちゃんが黙って一人で行くわけがないと思うけど・・・」

「よくわからないんですけど・・・日頃から「夜中には一人でどこへも行っちゃだめだよ」と言ってるんですけれど」

義理父は顔が青くなっていた

義理父の兄も慌ててやってきた

「楓ちゃん大丈夫かい?」

「はい、気絶してるだけだと思います」

「F君、楓ちゃんはどこで倒れてた?」

「例の便所の横ですけれど・・・・」

「なに!!!なんで!楓ちゃん一人で行かせたんだ!!」

とすごい剣幕で怒ってきた

「兄さん!!!楓ちゃんが一人で行ったようなんだよ」

「一人で・・・そっか、ついカッとなってしまった、すまん・・」

義理父の兄は楓を見て明らかに動揺した顔になった

「これは・・・○○(義理父の名前)・・・これって・・・姉さんもこんな感じで

寝てるような・・・感じだったよな、そのあとにすごい発熱と嘔吐で姉さんどんどんやせ細っていたんじゃなかったけ」

「ああ!!・・・・そうだよ、兄さん、思い出した、そのとおり・・・

俺たち、なにが起きているのかよくわからなかったけれど姉さんがどんどん弱っていくのはわかった」

「なぁ・・・これは非常にまずいだろ、俺、すぐに医者を叩き起こして連れてくるわ」と

義理父の兄は飛び出していった

義理父が義理父の姉の様子を思い出しながら話してくれた

いつものように3人でこの部屋で寝ていた

何時頃だったが父親が血相を変えて部屋に入ってきて姉の名前を呼んでいた

その姉がいなかったのだ

父親は慌てて部屋から飛び出していった

しばらくしたら父親が姉の名前を連呼しながら戻ってきた

父親は姉を抱えていた

そぉーと姉を布団に寝かせた

父親は何度も何度も姉の名前を呼んだのだが返事がない

俺たち兄弟は何が起きているのが全然理解できずに姉を見ていたんだ

数時間後に医者が来て姉を診ていた

父親が医者にいろいろと尋ねていた

父親の顔色がどんどん悪くなっていた

俺たち兄弟もオヤジの顔色が悪くなっていくのを見て姉になにか重大なことが起きてるんだと分かった

そして・・・姉が発熱と嘔吐でどんどんやせ細っていったんだ

医者の薬が全然効かなかった

そして・・・1年後の10歳の誕生日を迎える前に亡くなった

父親と母親はすごく落胆していた

特に父親の悲しみはすごかった

姉の花嫁姿を見たかったと父親が死ぬ前に遺言のようにボツリとつぶやいたんだ

母親も父親同様憔悴していた

医者は流行り病だったんだろと言ってたのだが父親はそれを認めようとしなかった

明らかに父親はそのなにかを知っていたに違いない

そのなにかを言わずに死んでしまった

姉の本当の死の原因は病じゃなくなにか祟りみたいな感じだろうと親戚の連中が話しているのを聞いたんだ

兄もそういう気がするといった

ドタバタと走ってくる足音がした

義理父の兄が医者を連れてきた

医者は楓の容態を見てすぐに検診をはじめた

医者は楓の体をあちこちみて頭を振り義理父の兄になにか話していた

義理父の兄の顔色が険しくなっていった

「F君、医者の言うには原因がさっぱりわからないという話だ

とりあえずは朝になるまでこのまま様子を見よう

朝になったらすぐに大学病院へ連れて行くからな」

と義理父の兄は今にも泣きそうな顔で私に話してきた

「おっちーー、おっちーーー、私の娘なんだぞ、私の!!!!」

S子の動揺ぶりは私たちを完全に沈黙させた

義理父夫婦も沈痛な顔で楓を見ていた

わたしは楓に薬を一粒飲ませた

わずかな希望を捨てるわけにはいかない

朝方になった

相変わらず楓は眠ったまま

だけど・・・少し顔色が良くなったような気がした

もしや・・・とおもいつつ私は楓の手を握っていた

楓の小さな手の温もり・・・・この感触は・・・オアキちゃんを握ったときの感触とよく似ていた・・・いや錯覚だろう・・・

<<大きなお兄ちゃん!!!!楓ちゃんは大丈夫!!!オアキ姉ちゃんと私で守るからね

楓ちゃんは私たちの大事な子孫だから!!!私たちの希望だからね

大きなお兄ちゃん、絶対にあきらめちゃだめだよ、私たち姉妹を大事に育ててくれたお兄ちゃんたち、絶対にあきらめちゃダメ、楓ちゃんの手を握っててあげて・・・>>

ふと頭の上からオハルちゃんの声がした

楓が希望!?なんのことだろう

私は言われた通りに楓の手を握った

「葵、楓姉ちゃんの手を握ってあげて」と葵にも楓の手を握るように言った

「うん、楓姉ちゃんの手を握るんだぞ、あたちは絶対にあきらめないんだぞ」

「え・・・あきらめない・・・葵、いやオハルちゃん、ありがとう」

「うん、パパ、今ね、オハルちゃんがあたちに「あきらめちゃダメなんだぞ」と言ってきたよ」

葵・・・

巧と仁も傍で楓の様子を心配そうに見ていた

私はもう一粒の薬を楓に飲ませた

気休めかもしれないが少しでも楓が生きようとする力があれば・・・親として何でもする覚悟だ

朝の8時

病院へ行く準備ができたと義理父の兄が呼びに来た

「パ・・・・パ」

一同、一斉に楓を見た

「楓!!!起きたのか」

たしかに「パパ」と聞こえた

ゆっくりと楓の瞼が開いた

「パパ・・・」

「パパだよ」

「パパ・・・ママ・・・」

どうやらうなされてる感じだ

「楓ちゃん、気づいたのか・・・うなされてるな

どんな夢を見てるんだ」

また静かに眠るように瞼を閉じた

私は楓の手を放し

和尚様に電話をかけた

「F君、今そっちへ向かっているわい

わしゃの夢枕にオアキ・オハルちゃんが立って「楓ちゃんが危ないからすぐに助けに行ってほしい」と言われたですわい

もう少し待っててほしいですわい」

「はい!!」

オアキ・オハルちゃん、ありがとう

珍しくオヤジからの電話だ

「F!!!テメェ!!何してるんだよ、それでも親かよ

しばくぞ、こらぁ!!!

後1時間で着くからな、待ってろよ、楓ちゃん」

「オヤジ・・・・」

オヤジも来てくれる

「和尚様とオヤジがこっちへ向かってるよ」

と言うと

子供たちが歓喜の声を上げた

「やったーー、じいちゃと和尚様が来る!!これで楓は助かる!!!」

「じいちゃが来たら誰にも負けないんだぞ」

義理父の兄は子供たちのあまりの大喜びにびっくりしていた

義理父も安堵の顔になった

「兄さん、楓ちゃんは助かるよ」

「意味が分からん・・・和尚とオヤジとやらが来てなんで助かると分かるんだよ?」

「兄さん、すぐに意味は分かるよ」

およそ1時間後にオヤジがやってきた

いつものトンチンカンオヤジではない

その証拠に誰もこの実家の住所は教えていないのにちゃんと来たから

和尚様は2時間後にやってきた

「おい!!!誰もいないんか!勝手に上がるぞ」

おやじの大きな声が響いた

「じいちゃーーーー」と葵が走っていった

オヤジは葵を抱えて居間に来た

義理父の兄はオヤジを見て悲鳴を上げた

義理父が

「兄さん、F君のお父さんだよ」

「え!?・・・○○(義理父の名前)やくざが乗り込んできたかと思ったぞ、びっくりした・・・そっか」

「おい!F!!!クソ坊主はまだか!!」

「和尚様はもう少しでつくと思うよ」

「そっか!!よっし」

オヤジは楓の顔を見ていた

「なるほどな、こいつは・・・おい!!F!!!この辺になんか古びたトイレがあるだろ

「オヤジ、あるよ、どうしてわかった?」

「そりゃわかるさ、楓ちゃんの体によ、地縛霊!?いや・・・こいつは・・「じじぃ」が憑りついてるな」

「えええ、オヤジなんでわかるんだよ」

「F!おまえは俺の子だろ、いくら能力がないって言っても感じないのかよ

俺の家系は神主の家系だと言ったことあるだろ」

「あぁ・・・たしかに」

「原因はトイレだよ

いろいろな悪霊が集まってるぞ

その中の親分的な悪霊が「じじぃ」だよ

それとな・・・ここの家で幼少時の少女が死んでるだろ

それもこの悪霊ともの仕業だよ」

「オヤジ殿、今幼少時の少女と言いましたな

どうしてわかったのか教えてほしい」

「その少女が今でも助けを求めてるんだよ

悪霊に囲まれてそこから出てこれなくなってるんだよ

クソ坊主が来ないとその少女の開放は無理だよ」

「そんな・・・姉さん・・・」

「兄さん・・・いまだに姉さんは成仏してなかったんだ・・・」

「遅くなり申したわい!!!」

「あ!和尚様だ、和尚様が来たんだぞ」

葵が玄関まで走っていった

「和尚様、楓姉ちゃんを助けてほしいんだぞ」

和尚様は葵に連れられて居間に来た

「いやぁ・・・どうにか間に合ったようですわい

これから除霊の準備をしますわい

オヤジ殿も手伝ってほしいですわい」

「もちろん、クソ坊主、失敗したらどうなるかわかってるだろうな」

「オヤジ殿・・・今回は今までのレベルとは違うことは百も承知ですわい

・・・」

今回はオヤジと和尚様はすごい相手だと言っていた

というのも悪霊の数はともかくこの「じじぃ」の正体がわからないということだ

この土地に縛られた地縛霊なのかそれとも大昔に何かあってそこの土地に住みついたものなのか

とにかく楓と囲まれている少女だけでも助けないとね

まずはオヤジと和尚様は例の便所を見に行った

「クソ坊主、こりゃ・・・なんでこった!だれだよ、ここに便所を作ったバカはよ」

「むごいですな・・・よりによって便所とは・・・こりゃ怒るわけですわい」

2人は口々に文句を垂れていた

和尚様の話だとこの便所あたりは元は小さな祠があった場所

それをおそらくここの一族の誰かがその祠をどこかへ捨てて便所を作ったんだろうと話してくれた

これがこの一族での不幸の連続のはじまり

まずはこの便所をよそへ移して新しい祠をここに置かないと絶対にその少女は成仏はできない

だが祠と「じじぃ」の関係はいまのところわからないとのこと

すぐに和尚様はこの家主である義理父の兄に詳細に説明をしていた

「なんと・・・そうでしたか・・・早速業者を呼んでこの便所をよそへ動かしましょう

明日の朝にでも業者が来るように頼んでおきます」

まずは少女の成仏を先にすることにした

それとこの「じじぃ」の正体を早く知ること

便所の前に和尚様は座禅をしお経を唱え始めた

お経を唱えて30分くらい経った時に

和尚様は相手が誰なのかわかったようだ

すぐにオヤジの耳元でヒソヒソ話を始めた

「くそ坊主、こりゃ・・・手強いぞ・・・」

「オヤジ殿、今までのレベルとは桁違いですわい

腹をくくりましょう」

「とりあえずは明日、この便所を移して新しい祠を建てます

そして、ここの土地の神様の力を借りてここに巣くう悪霊たちを退治して

少女を成仏させますわい

そのあとに楓ちゃんの魂を元の体に戻すという流れで行きますわい

今晩は、おそらく何かしらの異変が起きるかもしれません

ですので心の準備だけはしておいてください

なるべくなら居間にはS君とF君が交代で部屋にいてほしい

それと薬とお守りだけは絶対に身に着けておいてくだされ

もし体の異変があれば薬を一粒飲んで様子を見てくだされ

と和尚様は全員に注意を促していた

とんでもないことが起きそうだ

子供達には再三、一人で部屋を出ないように言っておいた

S君と私は交代で居間にいることにした

義理父夫婦は部屋にずっといてほしいと頼んでおいた

もう夜の11時になっていた

早速子供たちには寝るようにと言った

F子とS子も寝るようにと言っておいた

「おっちーー、パパたち、無理しないでほしいんだぞ

楓ちゃんの横で私は寝るからね」

「あたちも楓姉ちゃんの横で寝るんだぞ」

「アニキたち、無理しないでね」

義理父夫婦は頭を下げて居間を出て行った

午前0時を回った

子供たちとF子は疲れてたんだろうな、よく寝てる

「何も起きるなよ」と言いたい

静かだ

相も変わらず楓は眠ったまま

横にS子が楓の手を握りながら見つめていた

和尚様が言っていた「魂」が抜けているのだろう

早く楓の魂を元の体へ戻さないと大変なことになると和尚様は言っていた

魂が抜けた体は悪霊の格好の住処になると言っていた

幸いなことに楓の魂はオハル・オアキちゃんたちが守ってくれてるらしいとも言っていた

しかし、そんなに時間はないとオヤジと和尚様は真剣な顔で話していた

「じじぃ」の正体は教えてもらっていないので今は何もわからない

やはり・・・ここへ来ることは「運命」だったんだろうな

私たち一族の力を借りて少女を成仏させてほしいという誰なのかわからないが

導かれたのだろう

時折、楓は目を開けては目で周りを見渡すような感じで目だけが動いていた

口元は閉じたまま

そのたびにS子は楓に話しかけていた

「おっちーー、パパ、楓ちゃんが目を開けたんだぞ、意識が戻ったのかな・・・」

「いや・・・単に目を開けただけだろう・・・」

「おっちーーー・・・・楓ちゃん・・・」

S子の目に涙があふれてきていた

特異体質の楓はいろいろな霊現象や怪現象にあってきた

見ていて本当に辛い

普通の子供として生まれてきてほしかった

しかし、運命には逆らえない

夜中の2時が過ぎた

私はふと背中に寒気を感じた

何かが来る!!!

嫌な空気が流れてきたように感じた

「おっちーー・・・パパ・・・何か得体の知れないものが来るような気がするんだぞ」

S子も同じように感じていた

「俺もだよ・・・霊感のない俺も感じる・・・」

S君がパトロールから帰ってきた

「おい・・・何か・・・来そうな・・・」

「S君も感じるのか・・・」

ふと楓を見た

何気なく表情がもの悲しそうな感じに見えた

魂が抜けているようには見えないのだが・・・

意識が全然戻ってきていない

和尚様が居間に来た

「そろそろ・・・連中が動き始めたようですわい

色々な現象が起きるですわい

ですが、絶対に声を出さないでほしいですわい

もし声が出そうならば手で口を塞いでほしいですわい」

と和尚様は静かな口調でしゃべりはじめた

オヤジも居間に来た

「奴らな・・・ここら辺の地縛霊で古い時代からこの土地あたりに住み着いていやがる

ここら辺の土地に色々な災厄を起こしてきた

「じじぃ」がそのボス的存在でな

ここら辺の土地の守り神も手を出せないほど強くなっている

俺たちを呼んだのもここら辺を守ってる神様たちだよ

神様が俺たちを呼ぶということはもはや最悪な状態だということさ

くそ坊主!あいつらに負けたら俺らはすべて地獄行きだぞ

閻魔も手を出せない地獄の奥底へ行くことになる」

「オヤジ・・・その地獄の奥底ってなんだよ?」

「俺に聞くなよ・・・俺のじいさんから聞いただけだ

詳しいことはわからんさ」

「F君、その地獄の奥底というのは光も時間も闇も混在した世界ですわい

つまり一生その空間に閉じ込められ死ぬことも無いかつ生きてることもない

摩訶不思議な世界ですわい

意識と肉体だけが朽ち果てることも無く1億年いや何十億年も苦しむことになりますわい

つまりはこの太陽系が消滅するまでその空間に浮かんでるということですわい

豊臣秀吉や徳川家康もその空間に追いやられているという話ですわい

天下泰平の世を作ったのはいいのだがその安泰期に人に対していろいろな悪さをしたことで閻魔様の裁量で地獄の奥底へ落されたようですわい」

と和尚様は真剣な顔で説明をした

よくわからん話だ

ギシッギシッ

廊下を歩く足音が聞こえてきた

「え!!誰の足音?パパ?ママ?・・・」

「いや・・・違うぞ、S子、パパやママはぐっすりと寝てた

今さっき見てきたから」

とS君は否定した

私の腕に鳥肌が立っていた

「奴らだよ!おまえらは布団の中に潜ってろ

絶対に顔を出すなよ!あいつらを見たら間違いなく精神がおかしくなるからな

この世の者じゃないんだ

おい!くそ坊主!お経をあげろよ」

とオヤジはきつい口調で注意を促した

和尚様はお経を唱え始めた

オヤジも小さな声でなにかブツブツ言っていた

私たちは布団の中に隠れた

子供たちを布団の中に隠した

もちろん楓もだ

子供たちを起きるなよ

布団の中でスマホのライトを点けた

お互いに手をつないだ

F子も目を覚ましたようだ

「え・・・何か起きてるの?アニキ」

「そうだよ、F子、絶対に布団から出るなよ

楓の手を握っててくれ」

「うん・・・わかった、楓ちゃんの手を握ってるよ」

子供たちが目を覚ましてしまった

「パパ・・・何してるんだぞ?」

と葵が私に質問してきた

「葵、絶対に布団から出るなよ、声を出しちゃだめだぞ

お兄ちゃんたちもだぞ」

子供たちはうなずいていた

和尚様のお経がさらに大きく聞こえてきた

どのくらい時間が経ったのだろう

オヤジと和尚様の声が聞こえなくなった

え?声が聞こえないけどもう終わったのかな?

時計を見たら朝の5時過ぎになっていた

私を意を決して布団から顔を出した

和尚様とオヤジは疲れた顔で座っていた

「クソ坊主!もう一息だったのにな・・・

やはり手ごわかった・・・奴ら・・・」

「オヤジ殿・・・すまんのぉ・・・まだまだわしゃ修行不足ですわい

わしゃのオヤジが言ったとおりに東京で遊んでた罰ですな

早くお寺へ帰ってオヤジの手伝いをすればよかったと今更ながら後悔してますわい

しかし・・・あやつらは強すぎたですわい」

「クソ坊主!弱音を吐くとあいつらにつけこまれるぞ

それよりもあいつらの正体・・・俺もあいつら相手では無理だぞ」

「ですわい・・・なんとか追い払ったにすぎませんわい

ここの土地の念は相当なものですわい

お経をあげていて脳裏にここの土地の業を見ましたわい

あれはひどすぎますわい

人を人と思ってませんわい

弱い者への締め付けはいつの時代でも同じですわい

オヤジ殿、もう1度だけ除霊をして帰りましょう」

とりあえずは少女の霊は成仏できましたわい

後は楓ちゃんの魂が戻るのを待ちましょう」

話を聞いていると少女の霊は無事に天国へ昇天したらしい

楓はまだ魂が体へ戻るのに時間がかかるらしい

「おいF!、楓ちゃんの魂は必ず戻ってくるから安心しろ!」

「そっか・・・よかった・・・オヤジ、和尚様、ありがとう」

「お礼はいいですわい!!」

朝に業者が来てトイレを移動させ新しい祠を祀った

お昼すぎに近所の人や関係者が集まり供養のお経をあげた

楓は実家に預け私たちは一旦家へ帰った

もちろん和尚様とオヤジは実家に残り楓の様子を見てもらった

1週間後に楓の魂は元の体に戻ってきた

「F君!楓ちゃんが意識を戻したですわい

これで安心ですわい

楓ちゃんを連れてそちらへ戻ります

それと・・・オヤジ殿はすこしここに残るといってますわい」

と和尚様の明るい声が響いた

家族に楓が帰ってくるというとS子が大泣きをした

特に葵は楓のことが心配でよく寝れなかったようだ

巧と仁もほっと一息入れて安心した顔に戻った

義理父母にも連絡をした

義理母は電話越しに大泣きをしていた

やはり親子だな・・・

義理父は何も言わなかったがその夜に一人で泣いていたと後日義理母から教えてもらった

さて・・・あのオヤジが残るとは・・・

おふくろがいつものように文句を垂れると思っていたが・・・・何かしら不安そうな顔をしていた

珍しいな・・・・

これはひょっとすると・・・・

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