中編6
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地獄の案内係

最愛の妻を亡くした。自殺だった。

私は自殺の原因になった、妻の会社の上司を殺した。

私は関係ない!と言っていたが、遺書が全てを物語っていた。レイプにより精神的な理由だった。

復讐を果たし、妻が居ない世界は生きている意味がなく、私は今、ロープを首に掛け、足元の踏み台を蹴り飛ばそうとしている。

「ごめんな。奈央子。守れなくて....許してくれ」

ガタッ

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「お待ちしておりました!さあどうぞこちらへ。」

「ここは……?」

「はい。此方は地獄でございます、お客様」

「地獄? ああ私は地獄に落ちたのか……。」

「左様でございます。さては人でも殺しましたか?はははははは。」

「え、まあ……はい。」

「そうでしたか。まだ若いのにお気の毒に。ああ、申し遅れました。私は地獄の案内係でございます。よろしくお願い致します。」

「地獄の案内係?」

「はい。おや?ビックリされてますね?」

「ええ、そりゃ(笑) 地獄ってただ何も無い暗闇の空間ですが、本当にここは地獄なんですか?」

「左様でございます。人間の方々は地獄は鬼がいるとか、非常に苦しみを味わう場所などと認識されているようですが、そんな事は全くありません。ご安心下さいませ。」

「そうなんですね。あ、お名前聞いてもいいですか?私は……」

「私の名前ですか!?えっとー。名前はないですね(笑) 案内係として遣われている物で、人間ではないと思って頂くと分かりやすいと思います」

「人間ではない……?まあこれ以上は聞かない事にしておきます。」

「そうですかそうですか!お気遣いありがとうございます。では、今から下の世界つまり地獄の説明をさせていただきます。まずお客様は只今より無になっていただきます。」

「無ですか?」

「はい。無とはですね、つまり、成仏されずに完全に無になる事でございます。生まれ変わりが出来ないとでも言った方が分かりやすいでしょうか?」

「生まれ変わりができない?えっと、よく分からないのですが……。」

「無理もありません。上に行けば生まれ変わりが可能なのですが、下ではそれが出来ないという事でございます。」

「上って、天国ですか?」

「左様でございます。いやー、上に行けなくて残念ですが、人を殺めては下は確定してしまいます。最近は査定が甘くなり下にくる人間も大分減ってきたのですが、まあこれは今さら言ってもしょうがないですがね……ハハハハ。」

「天国に行くと生まれ変わりが出来るのですか?」

「はい。上に行きますと、まず生まれ変わりの説明を致します。そして成仏して、新しい人生を迎える準備をする訳ですね。またどこかで赤子として生まれるという事です。まあ記憶は完全にリセットされて、ランダムになるので、どこの国とかも分からないですし、希望は殆ど通らないですね(笑)」

「希望?」

「はい。生まれ変わりの書類を記入していただく際に来世に向けての希望を書けるんですよ。お金持ちになりたい、有名人になりたい等など。希望を書いて、承認の□にチェックをすれば手続き完了。順番で生まれ変わっていきます。」

「へー。あ、でも私は関係ない話しですよね?」

「左様でございます。申し訳ありません。話が過ぎました。ご気分悪くされましたでしょうか……。」

「いいえ。もう少し詳しく聞いてもいいですか?」

「お客様がお望みなら」

「疑問なのですが、そうすると人口は減り続けてしまうのではないですか?」

「お!良い質問ですね!心配ありません。そこは上の者たちが、無になる下の方々の統計をとり、1人の方からの生まれ変わりを2人、3人と調整する事が可能になっているんですよ。フフフ…この前なんか上の新人が調整ミスで急激に人口が増えた国があるみたいで大変だったらしいですよ(笑)」

「なるほど(笑)」

「時間が限られています。そろそろ無になるご覚悟は宜しいでしょうか?」

「もう1ついいですか?気になる事が。じゃあ幽霊ってのは何者だったのでしょうか?」

「ユウレイ?はて?聞いた事がございません。

人間界の何かでしょうか?」

「えーっと、人を怖がらせたり、生きてないのに人間界を彷徨うというか……」

「あー、多分非承認の方々ですかね。」

「非承認?」

「いやね。上の者たちに聞く話しなのですが、先程承認にチェックすると生まれ変われると言いましたが中にはチェックを拒否する方々がいるんですよ。死にたくて死んだ。もう元の世界に戻りたくないって頑固に拒否するようで。余程人間界で嫌な思いをされたんでしょうね……。上の者たちも、元の人生ではなく、全く別の人生と促すようですが……。承認してくれないと、完全に生まれ変わりが出来なくなってしまうんですよね。多分その非承認の方々が何でしたっけ?ユウレイ?というのになるのではないでしょうか?憶測ですけどね(笑)」

「なるほど……。自殺した人とかか。」

「ご納得していただけましたでしょうか?いやー、随分と長話になってしまい、申し訳ありません。お客様の様な理解ある方は是非、上に行って欲しかったですよ。さっきなんか状況が理解できないのか、ずっと怒鳴られましてね。うるさいので直ぐに無にしてしまいました(笑)私は悪くないと叫ばれていましたが、下に来る以上それは有り得ません」

「スーツを着て、眼鏡をかけて、身長の低い小太りのオヤジでしたか?」

「おや?ええ、確かにそのような容姿をしていましたね?お知り合いですか?」

「良かった。あいつも地獄に落ちたんだな……。」

「何か言いましたか?」

「いえ。何でもないです。最後に聞いていいですか?」

「はい。最後ですよ」

「天国に行った人に私から何か伝言等を伝える事は可能でしょうか?」

「うーん……。それはー……出来かねますね……。申し訳ありません。」

「そうですか。いや、最後に妻に感謝を伝えたくて、ゆうくんなおちゃんの事、守れなくてごめん。

来世では良い男見つけろよってね……。」

「そうですか……。理由は聞きませんが、奥様を亡くされていたのですね。因みにお名前は?いつ亡くなりましたか?」

「なおこで、昨日です」

「なおこさんの漢字は?」

「奈央子です。」

「おっと!申し訳ありません。お時間です。それでは永遠のお別れです。人を殺めた事は罪ですが、お客様の様な方がという事はそれ相応の理由があった事でしょう。では、今までの人生お疲れ様でした。さようなら。お元気で!」

「はい。悔いはありません。最後に案内係さんに会えて良かった。さようなら。」

フッ……………………………………。

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ふぅ。良い人だったな。

それにしても長話をしすぎたな(笑)

暇な物だ。

担当が日本になってから随分と下にくる人間が減った。

あの国を担当してたときは大変だったな(笑)

お!そうだ!ダメ元でやってみるか!

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プルプルプルプル

「はい。上の事務所です。」

「あ、どうもー下の案内係ですー。」

「これはこれはご無沙汰してます!」

「相変わらず上は忙しいですか?(笑)」

「そりゃあ。1日に大変な数が来ますからね。まあ日本は少ない方ですがね。」

「ですよね(笑)下は暇すぎます(笑)それで、ちょっと相談があるんですがー……。実は……。」

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「下に行った人間の伝言を上に伝えるー!?そんなのバレたらやばいですよー!!」

「まあまあ、そこを何とか! そういうの得意でしょ?あなた。」

「えっっ……。まあ(笑) お名前は?」

「ごめんなさい。名字は聞くの忘れました。名前は漢字3文字で奈央子さん。」

「奈央子さんなんていっぱいいますよー(苦笑)せめていつ来たかが分かればなー。」

「昨日って言ってました!」

「昨日?ならまだ生まれ変わってなくて順番待ちしてるかも。昨日の書類っと。お。奈央子さん1人だけいますね!」

「なんか書いてありますか??」

「希望欄に、またゆうくんと出会えますように。って。あ!思い出した!美人な若い女性だったなそういえば!」

「その人!絶対その人! その旦那様のゆうくん様からで、守れなくてごめん。愛してる。来世ではもっと良い男みつけろよとの事です。」

「ふーん。なんか悲しいですね。この夫婦に何があったんでしょうか?」

「お客様の事情を詮索しないのが我々の義務ですよ!」

「そうでしたね。もう今回限りですよ!伝えておきます。」

「あと、日本で女性として生まれ変われる様に掛け合ってみて!(笑)」

「無茶言わないで下さい!!!!!!!!」

Concrete
コメント怖い
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@ロビンⓂ︎
コメントありがとうございます。
むずかしいですねm(_ _)m

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