中編7
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Jさん一家とお盆

Jさんと知り合って翌年の夏のお盆にJさん一家と和尚様のお寺で会うことになった

和尚様も会いたい一心で心待ちしていた

そのお盆の日のために一般客の予約は取らずに部屋を空けてもらった

この3日間はJさん一家と私の家族だけになった

F子とS君も東京から駆けつけてきた

JさんとF子の初対面の時だ

F子がJさんに挨拶したときに

Jさんの顔が一瞬びっくりした顔になった

「あのぉ・・・F子さん・・・モデルさんをしてるんですか?」

「はい・・そうです」

「どこかで見たことがあるなと思ってたんですよ・・・そっか・・・モデルさんだ

わしの息子の嫁がF子さんの写真集を買ってきて見てましたから

まさか・・・実物に会えるとはね・・・うれしいです

今回は息子夫婦が忙しくて孫だけを連れてきたんです

強引にでも息子夫婦を連れてこればよかった」

「そんな・・・」とF子は照れ臭そうに顔を下に向けた

Jさんの孫は男の子と女の子

男の子は仁と同年代

女の子は葵より一つ年上

お互いの家族の紹介を終え夕食の時間になった

お寺ならではの和尚様の奥さんの手作り料理

質素だけどとても美味い

Jさんも一口食べて「おいしい」と連呼していた

お互いの家族についての話になり和気あいあいの中で夕食は終わった

オヤジと和尚様とJさん

初対面なのに意気投合

まるで昔から知っていたような感じだとJさんは嬉しそうに話していた

食事のあとはお寺の庭で花火を楽しんだ

子供たちのはしゃぎようは私たち子ども時代と同じだと感じた

花火が終わりお寺の近くの山へ登ることになった

一般の登山客もたくさん登っていた

両家の子供たちをS君が引き連れて登って行った

お寺からよく見えるのでJさんは安心していた

「よく見えますね・・・ここから孫たちが見えるので安心ですな

山の頂上に神社があるんですね

えへーー広場になってるんですか・・・

そこから京都市内がよく見えるんですね

いい場所ですよね

ここのお寺の特集を読んだことがありますよ

一度来てみたいと思っていました

まさか実現できるとは夢にも思っていなかったです

ここのお寺に入った時の静寂さはびっくりしました

時間が止まってるような感覚が襲ってきたんですよ

それに日本庭園の美しさ

それもよく見える部屋からみる庭はなんか幻想的ですよね」

「そうなんです・・・特別に部屋を貸してもらってるんですよね

わたしもはじめて日本庭園を見て感動しました

本当に時間がのんびりと過ぎてゆく感じですよね

特にお盆の3日間は一般客がいないのでなおさら静かですよ」

子供たちが山から下りてきた

うれしそうな顔

葵と女の子はお互いに手をつなぎながら下りてきた

頂上の広場で少し遊んだらしく子供たちはすぐに仲良くなったようだ

この山は

30分で頂上に着くので普段着で登る人が多い

お散歩にも最適な山だ

頂上にはこれといったものはないが東屋と木の椅子があり

座って京都市内がよく見える

夕涼みにはいいかもしれない

実際、多くの人が登ったり下りたりしている

本堂では和尚様の説法があり宿泊客やお寺へ来た人たちは喜ばれている

とにかく面白いのだ

難しい仏教の話ではなく世間的な話をしながらちゃんと仏教の教えを話している

私の子供たちも退屈せずにちゃんと最後まで聞いているからね

たまにオヤジのチャチャが入ると爆笑の渦になる

Jさんの家族も笑いが絶えなかった

「本当に面白い和尚様ですな・・・これなら難しい仏教の世界でも興味がわきますな

わしも和尚様の弟子入りをしようかと思いましたよ

みんなに歴史を話したいですね」

もう夜も10時過ぎ

本堂には人がほとんどいなくなった

子供たちは仏間で寝ることになった

Jさんは一人静かな部屋がいいということで和尚様の寝室の隣の部屋になった

子供たちは昼間の疲れが出たのかもう寝てしまった

Jさん、私、S君、和尚様、オヤジの5人は仏間でいろいろな話をした

特にJさんの話は去年に私たちと知り合ってから家の中で不思議な現象が起きるようになったと話をしだした

「F君たちと知り合ってから間もなくのこと・・・昼間だったかな

私が一人家にいると・・・2階から足音が聞こえてきたんですよ

私以外に誰も家にはいないはずですからね

ドタバタドタバタと子供が走り回る音がしたんですよ

もうびっくりしましたよ

私は幽霊など信じていない派でしたからね

でもいろいろな現象を見て徐々に信じるようになったんですよね

某番組の心霊特集でよくある「人の視線を感じる」というものを体験したときは心底恐怖を感じましたよ

誰かに見られてるな、と思いそっちをむくと誰もいない

しばらくするとまた視線を感じる

またそっちを見る、何もない

気のせいかなと思ってるとまた視線を感じる

でもさっきの視線じゃないと気付いて気になるほうを見ると何もない

落ち着け、落ち着けと自分で言いながら・・・ふと視線を横に向けたときに・・・

いたんですよ・・・押入れの隙間からじっと見ていたんですよ

目と目が合った時に相手の顔の表情が「ニッ」と笑ったんですよね

私、ゾッとなって反り返りそうになりましたよ

気になって

もう1度見るともういなかったんですよね

もうね心臓がパクパクと脈打ってる感じが伝わってきて

さらに怖かったです」

とJさんが話してるときにパタパタと廊下を誰かが走っていく音が聞こえた

「え・・・なにか廊下のほうで聞こえましたけれど・・・」

「確かに聞こえた・・・」

子供たち全員は仏間で寝ている

S子たちなのか・・・

違うような気がする

「誰でしょうね、廊下を走っていく人はね?」

「ですよね・・・」

まぁ気にせずに談話を楽しんでいた

「あぁ・・・隙間から誰かが覗いてますなぁ」とJさん

「どれどれ・・・あぁ・・確かに覗いてますわい・・」

「え!・・・」と私は恐る恐るその隙間の方向を見た

確かにギョロギョロと目が動いていた

私は内心「うわぁ・・・」と心の中で叫んでしまった

「F君、今、あっちを見ておどろいて「うわぁ・・」と心の中で叫んだんじゃない?」とJさんから言われた

「はい・・・」と小さな声で返事をした

「やはり・・・和尚様・・まずいことになったよ」

「さようですな・・わしゃが大きな声を出しますから

その隙間に目がけて塩をおもっきし投げてくだされ」

「はいはい・・・おもっきし投げてやりましょう」

和尚様は読経を読み始めしばらくしてでかい声を

上げた

「今ですわい!!!」

「おうりゃ!!!!」とJさんは隙間の方向に塩の塊を投げつけた

ドダンパタン、パタパタと逃げ出す足音がした

「ふぅ・・・うまくいったわい」

「さようですな」

私は単にきょとんとした顔で隙間を見ていた

「あはははは・・・F君、相当びっくりしてますな

あれはここら辺に住んでいる妖怪ですよ

別に悪いものじゃないから

たまにああやって隙間から覗いて見てるんですよ」

「さよう・・・久しぶりに出てきましたわい

でも・・・月に4回ほど出てくるのに最近は見なかったですわい

何かここら辺の土地に異変でも起きてるんじゃないかと心配ですわい」

「はじめてみました・・・初耳ですよ、和尚様・・・妖怪がいるなんで・・・」

「あははは!!!確かに!!いつもなら餓鬼たちが現れてどうのこうのでしたからのぉ・・・」

「和尚・・・わたしもはじめてこの土地に来たのであんまし言いたくはないのですが

ここら辺の土地はわしの住んでる土地とよく似ている雰囲気ですな

ここら辺の土地はもしかして痩せてますかいのぉ?」

「ええ・・・ここら辺の土地は痩せていてなかなか作物が出来ずに昔は餓死者をようさん出しましたわい・・・」

「そうですか・・・同じですな・・・わしの住んでる土地周辺も痩せていて作物が出来ずに餓死者が出たと古い資料に載っております・・・」

「なんか因縁を感じますわい

Jさんとは今回初めてお会いしましたけれどなぜか古い知り合いのような気がしておりますわい」

「わしもそうおもいますわい

和尚様は今回初めてお会いしましたけれどなぜか遠い昔にお会いしたような感覚に陥っています

もしかしたら・・・遠い昔に私たちは会っていたのかもしれませんね」

「俺もよう・・・そう気がしてるんだよ!なぜか他人とは思えん!

クソ坊主と初めて会ったときに感じた感覚と同じだよ」とオヤジも同じ感覚だと話した

「私もです・・・皆さんとは何か他人とは思えません

「いずれ・・・ここのお寺へ集まれ」と見えない運命の糸に操られて来たように思います」

確かに他人とは思えない

遠い昔に何かしらの関係があったに違いない

あっという間の3日間だった

運命の歯車がやっと動き始めたような気がした

やっと役者が揃ったのかな・・・

今の科学者の中には「過去・現在・未来は同じ空間にある」という主張をしてる人がいるがもしかしたらその通りかもしれない

人間が勝手に「時間」という概念を作り出しただけかもしれない

つまり・・・過去・現在・未来は同じ空間の中にあるということだ

ほんの1CMの横のところに「過去または未来という時間」が存在しているのかもしれない

Concrete
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