宮下君の語り(病院に現れた者)

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宮下君の語り(病院に現れた者)

俺の友人にね。F県に住んでる宮下君(仮名)って人が居ましてね。

彼、看護師してるんですよ。

病院ってのは命のやり取りがありますからね。

そういった怖い話しはよく聞きますよね。

宮下君はF県でも有名な心霊スポットなんかも行った事あるんですけど、そこでは何も無かった。

でも、彼の職場である病院では何度か幽霊をみてるんですよ。

そんな彼が、職場で体験した話しを聞かせてくれました。

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看護師って仕事はね。当時男性のなり手少なかったんですよね。

力仕事も多い。

宮下君は病院でもかなり重宝されてたんですよ。

看護師の仕事にも大分慣れて来た時、担当していた患者さんの将吉さん(仮名)ってお爺ちゃんが居ました。

将吉さんかなり、宮下君を気に入っていたんですよ。

なんでも、事故で亡くしたお孫さんに似ているって理由だったんです。

宮下君、看護師の仕事にも慣れてきてます。

将吉さんに対しても、朝の検温の時も

お爺ちゃん。おはよう。身体の具合はどう?検温の時間だよ。とか言ったり、

昼食の時なんかもね。

お爺ちゃん、昼飯の時間だよ。

なんて言って将吉さんに寄り添っていたんですね。

たまに来る将吉さんの家族なんかは、宮下君の方が男前だよ、なんて言ってましたけどね。

でも、将吉さんを宮下君が担当してからは、かなり、元気になってました。

それはそうですよね。

将吉さんは、毎日孫がお見舞いに来てくれてるなんて思ってるんです。

病は気からなんて言葉ありますよね。

図らずとも、宮下君の存在は将吉さんに元気を与えていたのですね。

病状は良くはなって無かったのは現実なんですが…。

宮下君のシフトが夜勤のある日の事。夜の見回りをしていました。

何度経験しても夜の病院は不気味なんですよ。

フロアを回り、何事も無く最後の病室まで来るという時。

最後は将吉さんの病室なんですね。

病室の前に黒い影が見えた。

宮下君は入院患者が徘徊してるのかと思いました。

たまにあるんですよ。

宮下「誰か居るんですか?」

宮下君は声を掛けてみました。

懐中電灯を持ってますけどね、本人に当てちゃ相手が眩しがるといけない。

患者の可能性が高いですからね。

相手からの返事はありません。

そこで、宮下君は相手に近づく事にしました。

患者さんなら、顔見れば分かりますから。

宮下君は少しずつ、その影に近づきます。

病室の前には非常灯が僅かに灯ってます。

薄っすらと見えてくるそれは、黒いフードの様なものを被っている様に見えました。病室の方角に向いて俯いている。

誰かな?

こんな深夜にあんな黒いフードを被って…。

宮下君。少し怖くなってきました。

それはそうですよね。深夜の病院に黒いフードを被ったモノが居る。いくら仕事に慣れてきた看護師でも気味が悪いですよね。

すると、黒フードの者が宮下君の方に顔を向けたんです。

それは、赤い目をして何より驚いたのは、宮下君にそっくりだったんです。

宮下君が驚いたと同時にそれは消えたんですね。

病室に異常は見られなかったので、ナースステーションに帰り、仮眠をとりました。

たまにあるんですよ。そう、金縛りです。

でもね。

宮下君、不思議と怖くは感じなかったそうです。

怖く感じない時ってね。宮下君にとっては望ましく無い事が多いんですよ。

自分が担当してる患者さんとか、気に入ってくれてる患者さんが亡くなる時の挨拶って事が多いんですよ。

その朝ね。将吉さんが、亡くなっていた事が確認されました。

ご家族からも感謝されたんですが、宮下君もそれなりにショックは受けたんですね。

その後からね、宮下君。見かけるんですよ。

病室の前に立つ黒いフードを被ったモノを。

男性だったり、女性だったり違いはあれど、毎回、共通してるのは、黒いフードを被って、顔を見ると赤い目をしてるんです。

そして、それが現れた病室から死者が出るそうです。

宮下君はね。

言ってましたよ。

その黒フードは死神かなんかで、その人の親しい人が迎えに来てるんじゃないかって。

将吉さんの時は、彼のお孫さんが迎えに来たんじゃ無いかってね。だから、自分に似ていたのかなって。

そんな事あるんですかね。

でも、宮下君の体験談聞くと、ありそうですよね。

俺が、看護師に聞いた話しでした。

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@天津堂
そうですね。俺もそう思いたくなる噺でした。

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