中編3
  • 表示切替
  • 使い方

背後の女

以前、外出先で自宅にいる夫とFaceTimeで話していた時に、夫の周りをオーヴらしきものが飛んでいたことがあった。夫はそれを、埃か虫だと言った。けれど埃はあんな動きはしないし、虫ではないことは本人が一番よく知っているはずだった。(何故ならあの時自分の周りに虫が飛んでいなかったことを、確認していたはずだから)

私も帰宅後にiPadに自分を映して、周りにオーヴらしきモノが飛んでいるのを確認した。

オーヴを見たのが去年の話。

今年になって、その時の話題がでた時だった。

夜の10時を過ぎた頃、私は

「またオーヴ見えるかな?」

とiPadに自分を映すと、オーヴを探して二階から部屋を回って行った。

iPadの画面にオーブは中々現れなかった。

一階に降りた私は、皆がいるリビングの隣の和室に、電気をつけない状態で入った。

和室はシャッターを閉めていたので暗かったが、開かれた襖から、リビングの明かりが入り込んでいたため、真っ暗闇ではなかった。

私は部屋の角をぐるっと周ったあと、和室の暗がりに背を向け皆のいるリビングに向き直った。

iPadの画面に映る自分とその背後の暗がりにじっと目を凝らす。

オーヴは現れなかった。

今日は無理かなと思った時だった。

背後の暗闇が動いている気がした。

私は画面に釘づけになった。

iPadに映る私の右肩あたりの闇が蠢いている。

動きながら少しずつ見えてくる。

人の眼。眼と鼻…顔の輪郭。

暗闇の中で少しずつ形成されていく、それは女の顔だった。

「うぎゃあー!」

唇がハッキリと形作られる前に、私は和室から皆のいるリビングに移動した。

「出た!今、女の顔」

私は家族に今みたものを説明した。

子供たちは私の興奮をしらけた表情で受け流した。

「ほんまじゃけん! 来てみんさいや」

私の金切り声に応じたのは夫だけだった。

私はiPad片手に夫と和室に入り、共に画面を見つめた。

しばらくすると、先程のように暗闇の中、女の顔が浮かび上がってきた。

正直、もう見たくなかった。

「本当だ。見えてきた…」

夫の言葉に私はiPadを閉じた。

「もうええよ」

リビングで、

「私が言ったこと、本当だったじゃろ」

私が言うと、夫は

「うん、でも顔がハッキリする前にiPad閉じたから、全部みれなかったよ」

そう言った。

子供たちは興味なさそうに、携帯を弄り続けていた。

後で娘がボソリと言った。

「前から言ってたじゃん。そこ、女の人がいるって」

私はハッとして娘を見つめた。娘は変わらず携帯を弄ったままだった。

娘は小さい頃、よく階段に女の人がいると話していた。霊能者に来てもらってからそれは言わなくなったけど、時々、和室に女の人がいるというようなこと言ってた。

それから、息子も同じこと言ってたことを思い出した。

同じ女かどうかはわからないが、本当に嫌だ。

嫌だ。そう思いながらその日も私は、その和室に布団をひいて寝た。

そんな気持ちの悪い部屋で、普通に寝れる自分はおかしいんじゃないかと、そう思いながら寝た。

Concrete
コメント怖い
4
7
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信

@あーちゃんさんこんにちは。コメント有難うございます。
このお話、もっと前に書き終えていたのですが、怖い感じに仕上がらなくて下書き保存してたものです。怖話サイトなのに、怖い表現が上手くできなくていつも悩んでいるんです。なので怖いと思って下さって嬉しいです。
あーちゃんさん、御読みくださり有難うございました。

返信

読んでいて、とても怖かったです。
タイトルから怖く感じて少しドキドキさせながら読んでいました。
私は怖かったです。

返信