中編3
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私に霊感はありません

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怖い話の古典的なものに、

「ゆうれいの 正体見たり 枯れ尾花」

というものがあります。

怖い怖いと思っていると、何でもない物でも

得体の知れない何かと勘違いしてしまう事があります。

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私は怖がりなのですが、

霊感などは全くありません。

しかして怖い話は大変好きでして

「親指の爪に黒い縦線が入ってれば ”見える人”だ」

と聞いては自分のをしげしげと見つめ、

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「人をあつめて怖い話でもやろうか」

ともなれば、いい話が作れないかと

ウンウン唸っておりました。

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そんな私の想いに応えたのか、

いつからか視界の隅(すみ)に

得体の知れないものがチラつくようになりました。

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彼らはどこにでもおりました。

黒い影

白いワンピースを着た人

顔がよくみえないなにか

目を見開いた女性の頭だけ...。

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一瞬しか目に映りませんが頻度は多く

週に4回は見ていたと思います。

この話をするのは非常にウケがよく

楽しかった。

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でも、すぐに気づきました。

彼らは全部、見間違いでした。

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例えるなら

お風呂で頭を洗う際に感じる視線。

ラップ音だと騒いでた家鳴り(やなり)の音。

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彼らが見えるときは

花壇に捨てられた黒いシャツであったり、

古くなって折れた白い柵であったり、

まるで答え合わせをするように

見間違えた物が置いてありました。

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悔しいじゃありませんか。高校生ですもの、

自分が特別だと思える何かが欲しくてたまりません。

どうしても本物を見たい、

そこに何かいる証拠が欲しい

そう思った私は、

見間違いをすることが無いよう

自分の部屋を空(から)にして、

丸一日過ごしてみることにしました。

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がらんとした白い壁紙の部屋に、

私と椅子ひとつだけ。

両親は帰りが遅く、時間はたっぷりとあります。

カチ....カチ....カチ....カチ....

時計の秒針がいやに存在を主張してましたが、

何が見えるでも起こるでもなく。

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正直飽きていた私は立ち上がり、

座っていた椅子に携帯のカメラを向けました。

写真だけ撮ったら、下らない妄想はこれで

おしまいにしようと思いました。

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shake

ピピッ.....ピロリン♪

画面に写ったのは普通の部屋。

ため息をつきながら後にしようとした

その時でした。

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「ん」

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写真中央、椅子の脚。そこから伸びる黒い影。

夕方も近かったのでそれかな?

とも思いましたが、

部屋の照明と窓から差し込む日光に

黒い影は逆らって伸びています。

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画面を拡大してみると、

影は部屋のあちこちに

うっすらと点在しており、

その線をつないだ形は

まるで、

椅子を取り囲むようになっておりました。

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咄嗟に目の前の部屋を見ましたが、

変わった様子はありません。

より鮮明な写真を撮ろうと思い、

再びカメラを構えました。

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が、電池が切れています。

何もこんな時に!

そう思って電源ボタンをガチガチと

何回か押していて

ふと、気づきました。

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液晶に写った私の顔

その真横から

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黒いもやが同じ画面を覗き込んでいます。

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硬直した私がどうすることも出来ず立ち尽く

していると彼は、いや、彼らは言うのです。

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男女すらつかない、

ざわざわと耳障りな声に

寒気が止まらず、

へたへたと座り込んで、

いつしか気を失ってしまいました。

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就職して、

一人暮らしをしている今でも

見間違うことはあります。

しかし、

声のようなものを聞く事はありません。

余談ですが、あの部屋にいわゆる

”いわく” の類いもありません。

仕事で心霊スポットに行くこともありましたが、

やはり霊感は無いようで、

何も感じませんでした。

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一人暮らしは快適です。

積読や、

ハンガーにかけっぱなしの服、

一部屋にひとつのミニテーブル、

書類などが散らかっておりますが、

快適です。

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なぜなら彼らは、

見間違いなのだから。

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