短編2
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Asuka_blog.jp/I_am_a_medium

私の手の甲には渦模様の痣がある。

 

 子供のころ、縊鬼(いき)を祓った際にできたものらしい。

 縊鬼(いき)とは簡単に説明すれば、首吊り自殺を促す鬼らしい。

祓った当初はまだ幼稚園生だったので、あまり鮮明には記憶していない。だが両親に連れられて、ある神社を訪れたことまでは覚えている。

祈祷は長時間に及んだようだが、その間の記憶はすっぽりとない。

ただあったものは手の甲に渦巻く痣と、「よくがんばったね」という言葉だけ。

 無事に縊鬼(いき)は祓うことができたと聞いている。

ただ滅することはできなかったからと、私の手の甲に呪術をかけて二度と憑かれないようにしたのだという。

こうしてその日からこの渦巻く痣と歩んで来たのであるが、どうやらこの痣はただの痣ではないらしい。

 というのも──。

 私はあの日から死者に触れられるようになった。

 神主によればこの渦巻く痣は一種の呪詛で、死者を寄って来させるものだという。

そう聞くと恐ろしいが、死者を憑かせることで縊鬼(いき)が憑けなくさせているのだ。

要は、原則として人一人に対して複数の「何か」が憑くことはできないということを利用した対抗策だ。

そういうわけであの日以来、私は死者と交流ができる。それは人から動物まで、意思の力を持つものなら何でも。

意外に感じるかもしれないが、椅子とかにだって意思がある。

 

 高校のころだったかな。

 

 文化祭の準備で体育館裏からパイプ椅子を運ぼうとしたときだった。

数十脚の椅子の中から一つだけ、ある椅子から強烈な恐怖を感じた。

私が感じたのではなく、椅子が恐怖していたのである。

私は高校生までにさまざまな超自然的現象を経験しており、その体験から言えることがある。

それは物に意思があるときは、人や動物の意思から移っているということである。

 私は鳥肌が立った。

 

 物が恐怖しているということは、それは人や動物の恐怖が乗り移っているということを意味している。

そして、人や動物の意思は簡単に移ることはない。そう、簡単に移ることはないのだ。

 死の間際などを除けば──。

 

 その椅子がなぜ恐怖するのか?

 

 その質問の答えを探そうとした私はだったが、やっぱり気味が悪くなって止めた。

今回は無料版ということで、私の身の上話を少しばかり紹介させてもらいました。

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