中編4
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リトル貞子?

大学に入って、数か月経った頃、クラスのひょうきん者Hが浮かない顔をして言った。

「俺んち、なんか臭いんだよね・・・」

「大家に文句言っても、原因がわからん言うし、そんなに気になるんなら、出てってもいいみたいな言い方しやがるし」

「だったら、出てけばいいじゃん」と俺。

「簡単に言ってくれるけど、そこ家賃安いんだよねー」

「へえーいくら?」

「1万5千円」

「どうせ、風呂無し、トイレ共同のボロアパートだろ」

「いや、狭いけどバストイレ付きだぜ、たいして古くもないし」

「マジッ?それ絶対いわく付き物件じゃん」

俺は、俄然興味が湧いてきた。話には聞いた事があるが、まさかこんな身近で!ラッキー!!

「特に真夜中は最悪!突然臭いがきつくなって、俺、猫飼ってるんだけど、あのアパート引っ越してから、夜中、まじ吠えるんだよね、猫が吠えるって、俺初めて知ったわ」

「そこ絶対何かある!!」

うれしー!とはさすがに言わなかったが、俺はその時、確かにわくわくしていた。

さっそく、田舎が一緒で学部の違うTに電話した。

「耳寄り情報ゲットー!!心霊確実スポット取材に行くから、カメラ用意してくんない?」

Tはまじで将来映画監督目指してる、おちゃめな奴で(言い方古!)映画研究会に属している。

次の日の夕方、TとHと俺3人で、Hのアパートへ向かった。

部屋のドアを開けると、確かになにか臭う。鼻をつまむ程じゃないが、嫌な臭いだ。

さっそく3人で臭いの元を探した。俺は正直、臭いよりも、お札がどっかにあるんじゃないかと、気になって仕方なかった。

Hの飼い猫は台所の隅で丸くなっている。吠えるなんて信じられない程、おとなしそうな猫だ。

結局、臭いの元も、お札も見つからず、真夜中に起こるという不可解な現象を撮る為に、暗視カメラを2台設置して、Hを残してアパートを出た。

「いいのが撮れたら、呪のビデオ送ろう」

「しかしHも、そんなとこよく住むなあ」

その時、アパートから、40過ぎくらいのおばさんが出てきた。Tは、おばさんのところへ行き、二言三言、言葉を交わして、戻ってきた。

「どした?」

「いや、今度ここに住みたいと思ってるんですけど、家賃いくらくらいですか?って聞いたんだよ」

「そしたら?」

「6万5千円だと」

二人にんまりして、

「絶対じゃん!」

「完璧!」

はしゃぎながら握手した。

次の日、Tの住むマンションの一室に、噂を聞いたクラスの連中合わせて25名が集結した。

「久々に金縛りにあったよ」Hが言うと、

みんなのテンションが一気に高まった。

Tが再生ボタンを押す。画面は、深夜12時を表示している。部屋の中央でHがピースしながらベッドに入った。

「さすがH!余裕だな」

みんなが笑ってHを見た。Hは笑っていなかった。

「俺、なんか見ちゃいけない物を見ちまいそうな気がする」Hがそう呟くと、場の空気が急に張りつめ、重いものになっていった。

映像は続いている。特に変わった様子は無い。重い沈黙・・・。

誰も喋らない。時折、誰かが唾を飲み込む音をさせるだけだ。Hの言った言葉が現実になるんじゃないか?という期待と恐れが異常なまでの沈黙を支えていた。

画面が1時25分を示した時、猫が突然、まさに吠えた。

「ギャーオウー」

猫は部屋のある一点を見つめてさらに吠える。

「ギャーオ、ギャオ、ギャーオウー」

猫の視線をたどっても、なにも見えない。

「なんか見える?」

「いいや」

みんながざわざわし始めた時、Hが叫んだ。

「お、俺、今、なんか見えた」

「何が?」みんなが一斉にHを見る。

「いや・・・ごめん、見間違いかも」とH。

「ほんと、びっくりさせるなやー」

「たのむでー」

みんなの避難を浴びていたHが今度は絶叫した。

「うわー見える、見えるだろ、赤ん坊!」

皆、画面を見るが、なにも見えない。

「嘘やろ、見てみい、赤ん坊が、腐った赤ん坊が這ってるやん!」

「どこにー?」

誰かが、Hに声をかけた時、部屋中に生臭い、異様な臭いが、突然降って湧いたように充満した。

「わー」

Hは叫び、Tの持つリモコンを奪い取って、電源を切った。

「いま、赤ん坊が、画面からこっちに出てこようとしとったやん!!眼球の無い赤ん坊が!!」

結局、おかしなものが見えたのは、今まで堂々とそこで寝ていたHだけだった。

「押し入れや、最初、見間違いかと思うとったけど、押入れから出てきた。眼球の無い、腐れ切った赤ん坊が」

言うまでもなく、Hのアパートへ行って、押入れを調べる事になった。

でも、恐怖で「行きたくない」という者が続出、結局アパートへ行ったのは5人だけだった。

押入れの底の板は、明らかに新しいベニヤが打ち付けてあった。

苦労して、その板をはずし、5人が見たものは、一か所だけ腐りかけた、古いベニヤ板だった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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