長編19
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化け物屋敷とお友達

楓が久しぶりにお友達を家に連れてきた

クラスメイトで一番の仲良し

久しぶりのお友達との夕食

あまりにも家族が多いのでM子ちゃんはびっくりしてた

「楓ちゃんの家族って多いんだね」

「うん!じいちゃん、ばあちゃん、パパ、ママ、お兄ちゃんや妹たち、おじさんやおばさん・・・確かに多いね」

「うちは、パパとママと私の3人だけ」

「じいちゃんやばあちゃんと同じだよ、一人っ子だよ」

賑やかな夕食時を過ごしてM子ちゃんは葵たち妹と遊びだした

「いいな、楓ちゃん、妹ちゃんたちがいてさ」

楽しいひと時を過ごした

仏間でオヤジと一緒にラジオを聞いたりオヤジの下らない話を聞いたりして

夜はどんどん更けていった

「ねぇ・・楓ちゃん、今さっきから隣の部屋から人の声がするけど・・・誰かいるの?」

「ううん・・・隣はね、パパの書斎室でパパはここにいるから、誰もいないよ」

「そう?・・・」

「気のせいだと思うよ、M子ちゃん」

私は気になり書斎室へ見に行った

別に誰もいないし変わった様子は無かった

「誰もいないけどな・・・」

オヤジは聞こえたようだ

「せがれ・・俺も聞こえたぞ・・・子供たちは仏間で寝てもらおう」と小声で話してきた

私はリビングへ行きおふくろとカナちゃんママは旅館の間で寝てもらうように頼んできた

オヤジはラジオの音を少し大きめにした

「さぁさ・・子供たちはもう寝る時間だよ」とわたしは子供たちに言い聞かせた

「うん!わかったよ、パパ」

「M子ちゃんはこの仏間で楓と一緒に寝ておくれ」

「わかりました」

娘っ子たちはおしゃべりに夢中になりなかなか寝付きそうもない

わたしはそれを横目で見ながら少し窓を開けて外を見ていた

もう午前0時に近い

人の声や足音が少なくなってきた

少し眠くなってきた

書斎室へ行き横になった

仏間から誰かが廊下へ出る足音がした

私は慌てて起き上がり廊下へ出た

M子ちゃんがいた

「M子ちゃん、どうしたの?」

「あ・・おじさん・・・トイレへ・・」

「そっか・・・トイレはそこの奥だよ、わかる?」

「う・・ん・・・」

「ついてきて」

「うん」

しばらくしてM子ちゃんが出てきた

「M子ちゃん、今度トイレへ行きたかったらオヤジかまたは私を起こして一緒に行ってほしいな」

「なんで?・・私一人でトイレへ行けるよ」

わたしは短めに説明をした

「え・・・そうなの・・・ちょっと怖い・・・わかった」

一応は家の中と外には結界は張ってある

念のためにM子ちゃんには説明をした

廊下はあの100均ライトがあるから明るいのだがトイレや浴室辺りは暗くて少し不気味だ

「パパ、私もう寝るね」とS子が書斎室へ来た

「おう・・・あ・・・それとな・・・M子ちゃんが・・」

私は今さっきのM子ちゃんが気になっていることをS子に話をした

「おっちーー、わかったんだぞ・・・寝室へ行くからね、パパ、無理しないでね」

ゆっくりとコーヒーを飲みながらネットを見ていた

外は一気に静かになった

しばらくすると雨の音がしてきた

仏間へ移動した

やはり書斎室は狭すぎる

仏間の部屋の小さめなライトが点いていた

オヤジは目を開けていた

「せがれ・・・いまさっきから書斎室の方でザワザワと人の声がしてるぞ」

「え・・全然聞こえてなかったぞ」

「そっか・・今夜は何かザワザワ感がすごい・・・書斎室辺りで集まってるんじゃないか」

「マジか・・・全然わからなかった・・・」

「それとな・・廊下を歩く足音もたまに聞こえてきた

家族の足音じゃない・・・なんか落ち着かないな」

「珍しいな、オヤジにしては・・」

「まぁ・・俺は寝るぜ」

全然わからない・・・聞こえないし・・・・

部屋の小さな灯りがポツンと部屋を照らしていた

コーヒーを飲んだせいか眠気が無くなった

部屋の明かりをつけるわけにもいかずしばらくボーとしていた

タンタン・・・タンタンタタタタ

え・・・何だ?廊下の方から聞こえてきた

子供が廊下を走ってる音みたいに聞こえた

息子たちの足音じゃない

もっと小さい子が走る音

「せがれ・・・今の音聞こえたか?」

「なんだ・・・寝てないのか・・・聞こえたよ、小さい子が走る音に聞こえた」

「俺もだ・・・どうも今夜は幽霊たちも落ち着かないようだな」

たしかに・・・空気感が違う気がする

深夜なので静寂さもあるのだが何かが違う

起きているのは私とオヤジだけだと思う

カーーン

「何だ今の音は?」

「なんか金属を叩いた音だな」

トイレや浴室のある方向から聞こえてきた

金属などは温度差があると音が鳴る

「金属の温度差で鳴ったかな」

「かもな・・・でもな・・あっち方向はな・・・」

「まぁ・・あんましよくない・・・あそこで一人で30分いろと言われたら断るかな」

「正直、俺もあそこは良くない場所だと感じてる」

「え・・・オヤジが・・・」

「あぁ・・・昔からだぞ、おまえが生まれた後からな、なんか、雰囲気が変わったんだよ・・もともと、あそこは勝手口があってそこから出入りしてたからな・・・いちいち玄関からより勝手口から出入りしたほうが都合が良かった・・・でもな・・不思議というか・・あれは・・・」

オヤジは昔話をしてくれた

私が生まれて1か月後・・・おふくろがいつものように勝手口から出入りをしていた

ところが・・・おふくろが外へ出て用事を済まして勝手口から入ろうとしたら鍵がかかっていた

もちろん、家には赤ん坊の私しかいない

玄関や窓など全て用心のために鍵を閉めていた

おふくろは慌てて勝手口のドアノブを回した

完全に鍵がかかっていた

おふくろの脳裏には泥棒が入ったのかもと赤ん坊がいるし

もし泥棒が赤ん坊に手を出したらという恐怖が湧きおこり

パニックになった

おふくろはオヤジが帰ってくるのを待った

30分後にオヤジが帰ってきた

おふくろが外にいるのを不審に思ったオヤジはおふくろに話かけた

おふくろの話を聞いてオヤジは咄嗟に勝手口の小さなガラス面を素手で割った

そこから鍵を開けようとしたのだが鍵は閉まっていなかった

おふくろやオヤジがガチャガチャと何回もドアノブを動かしても開かなかったのに

・・・中から開けようとしたら鍵はかかっていなかった

オヤジとおふくろはお互いの顔を見て首を傾げた

とにかく開いたので慌てて赤ん坊のいる部屋へ入って行った

赤ん坊は無事だった

落ち着いてから勝手口のことについて話し合ったそうだ

お互いに鍵は閉まっているのを確認している

けれど本当は鍵は閉まっていなかった

不気味に感じたらしい

「あの勝手口・・・微妙というか・・・なんか・・・得体がしれないというか

もう勝手口を使うのはやめた方がいいと思う」とおふくろが提案してきた

「俺もそう思う・・・今日から勝手口を使うのはやめよう

あそこらへんにビールのケースとか置こう」

ということで今は完全に勝手口は鍵を閉めて使わないようにしている

これが我が家の化け物屋敷のひとつ

文章では本当に伝わりにくい

一度深夜に勝手口あたりに一人でいるとわかる

空気感というか雰囲気が違う

夜遅くにお風呂入っていると何気に人の気配を感じることがある

特に強い風が吹いてたりすると

ガタガタガタガタ

と風が勝手口のドアノブに当たって音をたてる

わかっていても背筋がゾクッとする

小さい時に怒られて罰として勝手口辺りに居なさいというのが一番怖かった

それも深夜に一人

その場から逃げ出せばいいと思うけれどちゃんといないとまた罰としてそこにいないといけなくなる

匠や仁も怒られて私と同じように罰として立たせるのだがあんまし効果はない

家族が増えて誰かがトイレやお風呂場に来るからね

お風呂場の反対には物置というか荷物置き場がある

洗濯物を干す部屋にもなってるけど

ここは少しも怖いと感じたことはない

その荷物部屋の裏が仏間だ

たまに荷物部屋の洗濯物が落ちる音が聞こえる

ちゃんと固定しているのになぜか落ちる

まぁたまにしか起きない現象だけどね

たまに人の話声が聞こえる

もちろんその物置き場には誰もいない

仏間の横の和室は本当に不思議だ

中に入ると静寂さの中にいる

仏間の横が国道なので昼間は本当にうるさい

騒音だらけ

ところがこの和室は一気に静かになる

リラックスできる場所

昼寝部屋には最高の部屋だ

怪異現象も少ない

まるでホテルか旅館の部屋のよう

まぁ置物が少ないのもあるけれど

戸を開ければ庭がよく見える

葵が毎日庭の手入れをしているのでとても綺麗

夜は月の光に照らされると別世界にいるみたい

これで月見もできる

2階の廊下はまさに霊道

ここが一番の元凶だ

和尚様も言っていたのだが「ここは霊が通る道、いろいろな現象の元、この家の元凶だから・・・なるべく夜は出ないでほしい・・特にお子さんの夜中10時以降の外出は避けてほしいですわい・・」と強く念を押された

どうしても子供たちが用事があるときには送り迎えに行っている

本当に現象が多い

娘たちの部屋から人の声や足音、何か物が落ちる音、ラップ音は当たり前

階段を上り下りする足音など

昼間でも聞こえる時がある

「パパ・・・起きてる?」と楓が目をこすりながら話しかけてきた

「どうした?」

「落ち着かない・・廊下と物置部屋からザワザワとしてる感じ・・・

じいちゃんがいるからいいけど・・・パパも仏間にいてほしい」

「そっか・・・オヤジも同じこと言ってたよ」

「じいちゃんも・・・ねぇ・・・今夜、すこし変じゃない?

M子ちゃんがいるからかな・・霊たちもなんか落ち着かないという感じ・・・

こんなことはじめて・・・いろいろなお友達を連れてきたけど・・・」

「そっか・・・まぁ・・・M子ちゃんは関係ないと思うよ・・・

楓はM子ちゃんをどう見てるの?」

「う・・ん・・・正直ね・・・M子ちゃん・・・学校では仲いいんだけどね・・・

この前・・・休みの日の時に・・・M子ちゃんを見かけたんだけどね・・・手を振って「M子ちゃん」と声を出して挨拶したんだけど・・・こっちを見てね・・フンという感じで無視して行っちゃんだよ・・・学校ではお互いに挨拶するのに・・・なんか感じ悪い・・・

ほかのお友達にも聞いたんだけどね・・・みんな同じこと言ってたんだ・・

M子ちゃん・・・表と裏を使い分けしてるみたい・・・・」

「そっか・・・」

「楓ちゃん・・・それ本当か・・・俺もな・・・原因はM子ちゃんかと思ってる・・・

このザワザワ感・・なんか変だぞ・・・」

「じいちゃ・・・・」

「まぁ・・・やめよう・・・」

「そうだな」

「何とか寝るね、パパ」

娘たちはやっと寝たかな

夜も2時を過ぎた

今日は日曜日でM子ちゃんも今夜までは泊っていく

「せがれ・・・あかん・・・寝れん・・・どうもなぁ・・この部屋全体がざわついてる・・・霊たちがなんか話しかけてくる・・・いつもならよく聞こえるんだが・・・

「俺は全然わからん・・・」

「あかん…ダメだ・・・俺よ・・・リビングへ行くわ、せがれ・・ここにいろ」

「わかった・・・」

朝が来た

娘たちがリビングへ行った

リビングは朝食の準備で大忙し

オヤジがソファに座っていた

「オヤジ・・寝れたか?」

「いや・・・あかん・・・霊たちが耳元で騒いでいた・・・頭に来てよ「おまえらうるさい」と言ったらシーンと静かになってよ・・・あれから声は聞こえなくなったけど・・・

もう朝が来てたよ」

「そっか・・・」

「今のところ・・・ザワザワ感はない」

朝食が終わった

「匠兄ちゃん!もう時間がないよ」

「お・・・急ごう」

「どこへ行くんだ?」

「パパ!この前話したじゃん、もうすぐ試合だって、今日は練習だよ」

「あ・・・」

匠と仁は慌てて出て行った

「せがれ・・・ボケるの早いんじゃないか」とオヤジに笑われた

「パパ、わたし実家へ行くね、ママが話があるんだって・・・夕方ごろには帰ってくるから・・・子供たち、よろしくお願いするんだぞ」

「え・・・うん・・わかった」

「Fさん・・・社長のお供で商店街へ行ってきますね」

「F・・・商店街へ行ってくるわね・・・あいつ・・飲食代を全然払ってないのよ、その飲食代も払わなきゃ・・・それと今後の商店街のことも話し合いがあるからね・・・夜になるかも」

おふくろとカナちゃんママは出て行った

「おい・・・オヤジ・・・無銭飲食しちゃダメだろ」

「あいつらが・・・銭はいらん・・と言うから・・・」

「子供じゃないんだぞ・・・」

「うるせーー!!!しばくぞ」

高校生か!

不良め

「楓ちゃんの家族って面白いね・・・」とM子ちゃんは笑ってた

よく見るとオヤジと娘たちだけ

嫌な組み合わせだ

「うるさい連中はいなくなった!じいちゃんと公園へ行こう」

「やったーー!!!」

「せがれ、公園へ行く、留守番してろ」

オヤジと娘たちはさっさと出て行った

さてと・・・のんびりするかな・・・

ソファに座った

ウトウトと寝てしまった

夢を見た

小学生の時の夢

下校の時だな

いつもの4人

おしゃべりしながら家へ

私は欄干にしがみついて川を見ていた

「おっちー!!!F兄ちゃん!ダァ!!」とS子が勢いよく私の背中を押した

「わっ!!!」

ドボン

用水路へ落ちた

前日の雨で用水路の水が増えていた

水の勢いが強くて流された

「ぎゃやあはは!F兄ちゃん、おぼれてる」とS子が大笑いしてた

「え!!!F!!!!!、大丈夫か!」とS君は慌てて追いかけてきた

その後にS子とF子もついてきた

なんとか岸にたどり着いた

服はビショビショ

「F兄ちゃん、大丈夫?何で用水路で泳いでたの?」とS子が言ってきた

「おいおい!S子、おまえがFを押したんじゃないか!!!」

「おっちーー!!!違うんだぞ!びっくりさせようとしただけなんだぞ」

「何がびっくりだ!押したじゃないか」とS君は激怒していた

「おっちーー・・・」

「家へ行こう、F、すまん・・・S子の奴・・・」

濡れたままS君の家へ

S君の母親が玄関を開けて私を見て驚いていた

「なに・・・どうしたの?」

「かあちゃん・・・S子がFを突き飛ばして用水路へ落ちたんだよ」

「え!!!S子!!!あんたは何したの!!!Fちゃん、早く家へ入って・・服を持ってくるからね・・・」

母親からS子は説教された

ついには泣き出した

「おばさん、いいんです・・・もういいです・・・かわいい妹だから・・・」

「おっち・・・F兄ちゃん・・・すまんだぞ・・・」

「Fちゃん・・・本当にごめんなさいね・・・毎回毎回、イタズラされて・・・」

本当にS子のイタズラ?はひどかった

本人は加減をしてるつもりだろうがこっちはいつ死ぬかという恐怖しかなかった

最悪なのは中学生の時に4人で電車を乗ろうとホームで待ってる時だ

S子が「アニキ!!ホームより後ろへ立つんだぞ!!」と言いながら背中を押した

私は不意を突かれてバランスを崩しそのままホームへ落ちた

もうすぐ電車が来る

まわりの大人たちがびっくりして駅員を呼んできてくれた

駅員がホームから降りて私を支えてホームへ引き上げてくれた

間一発だった

S君が激怒してえらいことになった

遊びに行くのを止めてS君の家へ

両親はS君の話を聞いて真っ青な顔になっていた

いつも静かなS君の父親が怒りだした

みんなびっくり

S子が泣き出した

ついでにF子までもが泣き出した

さすがのS子も反省したのかしばらくはイタズラはしてこなくなった

その話を娘たちに聞かせた

「パパ・・・ちょっとイタズラじゃないよ、それ・・・ママって・・・時折・・・なんか変なことするよね・・・パパ・・・怒らなかったの?」

「不思議とね・・・パパは・・・怒りの感情が出てこなかったんだよ・・・」

「ねぇ・・パパ・・・大丈夫なの?・・怒らないとけいないよ」

不思議と怒りという感情が出てこなかった

何だろう・・・

S子が失敗しても怒りの感情が出てこない

この件でS君の両親はS君とS子を連れて謝罪に来た

うちの両親はびっくりしてただけ

「うちの子はいつもボォーーとしてるからね・・・S子ちゃんに起こされないと立ったまま寝てる子なのよ・・・S子ちゃん、ありがとね」とおふくろはS子の頭をなでていた

これを見たS君とS君の両親は口を開けたままになっていた

自分の子供がホームに落ちて電車に轢かれそうになったのに・・・

S君の両親は相手の親から相当な怒りの言葉を浴びせられるだろうなと思っていたらしい

とくにオヤジから

ところが全然怒っていない

後にS君から聞いたのだが

うちへ帰って両親はびっくりしたのと呆れていたと話してくれた

むしろ、私は両親から怒られた

「ぼうず、いつもボケッとしてるからだ!シャッキとしろ!Sちゃんをみてみろ、いつもビシッとした顔をしてるだろ!しっかりしろよな!」

「そうだよ・・・S子ちゃんは全然悪くない・・・いつもボォーとしてるからだよ・・・

もし道路だったら、轢かれて死んでるところだよ、ホームに落ちたから助かったんだよ」

なんか・・・違う気がするけど・・・当時としては「そうなんだ」と思った

後日に両親から怒られたことをS君に話した

「え!!!怒られたのか!!!すまん・・・S子の奴・・・」

昔の思い出か・・・・・

耳元で「F兄ちゃん!!!起きないと車に轢かれるんだぞ!!!」

キィーーーーーーーーー!!!!!

ええええええ

目が覚めた・・・・

ハァハァハァ・・・・・

息切れ・・・

夢か・・・・・

なんかリアルというか昔の思い出・・・・

顔中、汗まみれ・・・・

心臓がパクパクしてる

なんなんだ・・・・

耳元で囁いたのはS子だけど・・・・

私は半身起こして辺りを見た

誰もいない

時計を見たらもう午後3時過ぎ・・・

それにしては・・・夢・・・リアルすぎる・・・・

ガチャ

玄関のドアが閉まる音がした

誰かが帰ってきたな・・・

あれ・・・誰もリビングへ入ってこない

私は起きて廊下を見た

誰もいない

確かに玄関のドアが閉まる音がした

おかしいな・・・・

しばらくすると

「おっちーー!!!!ただいま!!!」とS子の声

「おっちー!!!パパ、いたんだ!」

「うん・・留守番してた」

「そうなんだ」

「S子・・・今さっき帰ってきたんだよな?」

「そうなんだぞ・・・」

「S子が帰ってくる前に玄関のドアが閉まる音がしたんだよ・・・待ってもリビングへ誰も来ないしそれで廊下を見たら誰もいない」

「え・・・ほんと?・・・玄関のカギはきちんと閉まってたんだぞ・・・おかしいんだぞ」

「気のせいだったのかな・・・夢を見てて起きたからかな・・・」

「おっちーー!パパ、どんな夢を見たんだぞ」

私はS子に夢を見た話をした

「おっちー・・・おかしいんだぞ・・・私、パパを川へ突き落したことないんだぞ・・」

「え・・でも夢の中だから・・・」

「パパ・・・川じゃなく道路なんだぞ・・・交差点で4人で待ってて・・私が背中を押したらパパがヨロヨロと道路へ出て・・・そしたらトラックが走ってきてパパの目の前で急ブレーキをかけたんだぞ・・・目の前で止まったんだぞ・・・パパ、トラックの運転手にすごく怒られたんだぞ・・・原因を作ったのは私だけど・・・Sアニキが激怒して遊びに行くのはやめたんだぞ・・・家に帰って私、両親から怒られたんだぞ・・・」

「え・・・そうだったかな・・・覚えがない」

「うそぉ!もう少しで轢かれるところだったんだぞ・・・」

記憶が全然ない

思い出せない

死にそうになったのなら鮮明に記憶してると思う

夢から起きる前のS子が耳元で囁いたのは本当にあったことなのか?

確かに起きたら汗と心臓がパクパクしてたけど

「パパ・・・大丈夫?・・・私・・もうそろそろ夕食の準備しないと」

S子は厨房へ行った

なんかよくわからん・・・

もう午後4時過ぎかぁ・・・

ちょっとトイレへ行くかな・・・

すっきりした

「S子!!!少しは休憩したらどう?」

シーーン

返事がない

「え・・S子!!おい!!返事しろよ」

シーーン

え・・・無視された?

私は少しムッとして厨房へ入った

誰もいない・・・

え・・・S子はどこだ?・・・

どういうことだ?

確かにS子は厨房へ行った

「パパ、起きてよ、いつまで寝てるのさ」

「よく寝てるね、パパ」

なんか騒がしいな・・・

目を開けた

匠と仁が立っていた

「やっと目が覚めた」

「パパ!起きてよ」

え?・・・寝てた?・・・じゃあ今さっきのは夢!?

時計を見たらもう午後6時過ぎ・・・

オヤジや子供たち、おふくろやカナちゃんママがいた

「あれ?ママは?」

「ママ・・まだ帰ってきてないよ、パパ」

「もう6時過ぎてるぞ・・・まだ・・実家にいるのかな」

「かもね・・・」

「パパ、ちょっと迎えに行ってくる」

「え・・子供じゃないんだから、そのうち帰ってくるよ、パパ」

「いや・・ちょっと気になるから行ってくる」

なぜかわからないがS子を迎えに行かないといけない気がした

交差点付近に差し掛かった

「パパ!!!危ないんだぞ!!」

え!!・・・ドン!

私は後ろから押されてよろめいて交差点の真ん中へ出てしまった

ギィーーーーーーーー!!!!

すごいブレーキ音

ぶつかる!!!思わず目を閉じた

ガシャン!ドン!!!

え・・えええ・・私は目を開けた・・・車はどこ?

周りが騒がしい

よく見ると私の反対側の方でトラックが止まっていた

運転手が慌てて車から出てきた

周りの人も横断歩道に群がっていた

「大変だぁ!!!子供が轢かれたぞ!!」

「119番!!110番!!はやくしろ!!!」

えらい騒ぎになった

私も慌てて事故現場へ行った

子供が倒れていた

女の子だ・・・・

頭から血を流している

え・・・えええええ・・・・・

私の頭の中が真っ白になった

そんな馬鹿な・・・・

何度も目をこすった

間違いない・・・

M子ちゃんだ・・・

私は慌ててオヤジに電話を掛けた

「おい!オヤジ!!そこにM子ちゃんはいるか?」

「M子ちゃん?・・・いるはず・・・・楓ちゃん・・M子ちゃんは?・・・え・・・

いない?・・・今さっきいたぞ・・・せがれ・・・M子ちゃんがいない・・・」

「えええ・・・家にいるんじゃないの?・・・そんな・・・」

「おい・・・せがれ・・どうした?」

「M子ちゃんが轢かれた・・目の前で倒れてる・・・そんな・・・」

「うそだろ!ちょっとまて!!本当にM子ちゃんか?」

「間違いない、服装も同じだよ・・・」

「マジか・・・・俺も現場へ行く、待ってろ」

オヤジが来た

「おい!!せがれ!!!」

「オヤジ・・・遅いぞ‥今さっき救急車で運ばれたぞ」

「そっか・・・本当にM子ちゃんだったんだよな?」

「そうだよ・・・間違いない・・・」

「せがれ、急いでM子ちゃんの家族に連絡しろよ」

「そうだった!!!」

私は楓からM子ちゃんの家の電話番号を聞いていた

なかなか出ない

何で出ない

やっと出た

「もしもし・・○○(M子ちゃんの苗字)さんのお家ですか?

大変なことになりました・・・M子ちゃん・・車に轢かれまして救急車で運ばれました」

「はい?・・・どなた様ですか?…○○さん?・・はぁ・・・あのイタズラ電話ですか?・・・え!・・・すいません・・・うちの娘は2日前に確かに車に轢かれました・・

昨日・・・お通夜で今日は葬儀です・・・今、すごく忙しいんですよ・・・切りますね!」

え?・・・私は自分の耳を疑った

お通夜・・・葬儀・・・2日前に轢かれて死んだ・・・・

はぁ?・・・まだ夢を見ているのか

「オヤジ・・・なんか変だぞ・・・M子ちゃん、2日前に車に轢かれて今日葬儀だと言ってた・・・」

「え?・・・葬儀?誰の?」

「だから!M子ちゃん」

「冗談はよせ、M子ちゃんは今さっきまでいたんだぞ」

しばらく沈黙が続いた

「オヤジ・・・S子を迎えに行ってくる、先に帰っててくれ」

「わかった・・・」

もう頭の中はパニックだ

どうなってるんだ・・・

S子の実家に着いた

義理母が出てきた

「婿殿?どうしたの?」

「S子を迎えに来ました」

「あれ・・S子ならもうずいぶん前に家を出たわよ、途中で会わなかったの?」

「え・・・いいえ・・・会わなかったです」

突然、私のスマホが鳴った

「すいません・・S子さんのお家族さまですか?私、○○病院の看護婦です・・・奥様ですかね?・・・今さっき救急車で運ばれましてバッグの中身からお家族の方の連絡先がわかりましたので・・・ええ・・車に轢かれたようです・・・はい・・・命に別状はないです・・大至急病院へ来てほしいです・・はい・・・わかりました」

もうどうなってるんだ!!!!

「お義母さん・・大変だ、S子が車に轢かれて今病院にいる、これから病院へ行きます」

「えええ!!!S子か・・・轢かれた・・・ちょっとまって、お父さんに言ってくるから・・」

義理母は慌てて義理父へ連絡しに行った

しばらくすると両方が出てきた

「F君、歩いてきたのか・・・車に乗りなさい」

義理父の車に乗って病院へ向かった

その間にオヤジにS子が轢かれたことを話をした

病院へ着き主治医の所へ行った

幸いにも軽症で2、3日すれば退院だと聞かされた

義理の両親も安堵の顔をしていた

おふくろが来た

「F!!!、S子ちゃんはどうなの!!!」

「おふくろ・・・S子は2、3日で退院だよ」

「そうなの・・・良かった・・・もうびっくり・・・」

「あれ・・オヤジは?」

「あいつは家にいるよ・・・大体のことは聞いたからね・・・用心のために私が来たのよ」

さすが、おふくろ・・・・

おふくろは義理の両親と話し込んでいた

私はその間にオヤジに電話を掛けた

「そっか・・・よかった・・・」

「ところで・・・M子ちゃんは?」

「それがよ・・・ちょっとな・・・俺も今、頭がパニックになってる・・・

確かに昼間、公園へ楓ちゃんたちと一緒に連れて行った・・・家に入るまでは一緒だったんだよ・・その後に電話がかかってきて・・・辺りを見たらM子ちゃんがいなくなってた・・・それと・・・M子ちゃんの靴が玄関に残ってるんだよ・・・」

「え?・・・靴?・・・」

「そうだよ・・・だから、頭がパニックになってる・・・M子ちゃんはもう死んでるんだよな・・・でも・・・M子ちゃんは確かにいたよな・・・靴もあるし・・・どうなってるんだよ」

「ありえん・・・幽霊と話したり遊んでいたということか・・・どうみても生身だったぞ・・・ちょっとまて・・・じゃあ、俺があの事故現場で見たのは誰だよ・・・・

ま・・ま・・・まさか・・・あれはS子・・・いや・・・そんなはずはない・・・たしかに子供だった・・・でも・・・声をかけてきたのはS子・・・え・・・」

結局、M子ちゃんの葬儀には間に合わなかった

お墓の場所をおしえてもらい娘たちとお墓参りをした

楓の動揺は激しく3日ほど笑顔が見れなかった

クラスのみんなも急な訃報を聞いて全員が沈黙したらしい

S子は無事に退院した

S子の話だと

ちょうど真向かいに私がいたので声をかけようと横断歩道を渡ったんだそうだ

すると、小さな女の子がいきなり出てきてS子を押したそうだ

そのはずみで横断歩道の真ん中へよろよろと足がもつれたところで車が突っ込んできたらしい

もしあのまま真ん中じゃなかったら確実に車にあたっていた

あの小さな女の子は間違いなくM子ちゃんだとS子は言った

もしかしたらM子ちゃんがS子を助けてくれたのかな

でも・・・私が見たのはS子じゃなかった

小さな女の子だった

顔はうつぶせで倒れていたので顔は確認はできなかった

どうなってるんだろ

あ・・・あれは・・・M子ちゃんが轢かれたときの場面だったのか・・・

不思議と言えば不思議

でもなんか変

夢と現実が交錯してる感じ

時間軸がずれてる?

Concrete
コメント怖い
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