長編17
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気まぐれ

オヤジの悪い癖で恐ろしい目にあった

その悪い癖とは「気まぐれ」

何の拍子もなく物事を言い勝手に実行していく

今回はそのオヤジの気まぐれでまさかの事態となってしまった

おふくろの実家は周囲をおよそ広さ1kmほど囲んだ場所にある

この広さの場所には禁断の場所がたくさんある

特にF子が住んでいるスタジオから北側は雑木林になっており古い館や使いみちのわからない建物がある

この屋敷の後継者たるおふくろさえもわからないという

だいぶ古い建物の解体と処分はしたが全部までには時間がかかりそう

特に今回の方角からいえば北西の位置にある雑木林は誰も近寄らないし手入れもしていないので荒れ放題

昼間でも不気味な場所だ

去年の7月頃だ

夜なのに蒸し暑さで3人娘たちと縁側に座って涼しんでいた

葵たちが毎日きちんと手入れしている庭を見ながら雑談をしていた

月明りで周囲が何となくぼんやりと光ってる感じ

時折ムッとする風が吹いていた

オヤジがラジオをもって現れた

「お!ここにいたか、誰も仏間に来ないから変だと思ったぞ」

「うん!蒸し暑いから縁側に座ってるんだよ、じいちゃ」

「蒸し暑いぜ、風もなんかな、それにしても虫の鳴き声がすげぇな」

「でしょ、今夜はすごいよ、じいちゃ、田んぼのカエルも大勢鳴いてる」

「不気味だな・・・時折吹く風も生暖かくて気味が悪い・・・」

「もうそろそろ、中に入ろう」

私はそう言って全員仏間に行かせた

仏間は冷房が効いていてすごく涼しい

その代わり、国道沿いだから車の騒音や人の話し声などよく聞こえる

「蒸し暑いからみんな外に出ているんだろうな、まだ駅前の方もお店開いてるし・・・

そろそろ・・・午後9時か・・・」

ポトン・・・隣の干し物部屋から物が落ちる音がした

「落ちたね・・・パパ」

「だな・・」

誰もいないはずなのになぜか洗濯物が落ちてる

まぁ、犯人はわかってるけど

霊道沿いから外れた幽霊の子供たちが走り回ってて洗濯物を落としていく

時折、笑い声やギャギャと騒ぐ子供たちの声が聞こえる

「パパ、小ちゃい子達、来てるね」

「うん、今日は元気に走り回ってるね」

もう慣れた

はじめはびっくりしたが原因が幽霊の子供たちだとわかり少し落ち着いた

S君が来た

「今さっきさ、リビングのTVでな、ソロキャンプの特集を見ていたんだけど・・・

なかなか良いな、と思って見てた」

「へぇ~~、ソロキャンプね・・・そんなにいいかな?」

「わからんけど、見ててなんかこう自分もしてみたい気分になったよ」

オヤジの体が少し動いたように見えた

・・・やばい・・・

この動きは「気まぐれ」の発動準備の動作だ

「Sちゃん、そのソロキャンプってのは一人でテントの中で寝るんか?」

「そうっす、おやっさん、一人で料理をして夜はテントの中で寝るんですよ」

「おお!そっか!なんか面白そうだな」

うわ・・・やばいやばい・・・

どんどん2人の会話が弾んでいった

「よぉし!我が家でもキャンプをするか!」

うわぁーーーー最悪だ

ついに「気まぐれ」発動

「じいちゃん、キャンプするの?私たちもしてみたい」

「してみたいんだぞ」

ゲ・・・娘たちまでも・・・

「でもじいちゃ、場所はどこにするの?」

「そ・・そうだな・・・おおお!!あいつの実家が良いぞ!!」

「え!ばあちゃんの・・・」

「そう、そう、ほら北側のほう、雑木林だろ、あの辺りにテントを張ってな、キャンプすればいい、最低限の安全はあるからな、あそこで少し慣れてから、どこかいい場所見つければいい」

「ええ・・じいちゃ・・・北側の方はやめた方がいいと思う・・・一応、ばあちゃんに話をした方がいいと思う」

「何で?あそこが雰囲気あっていいだろ?」

「いや・・その・・あそこらへんは・・・ちょっと・・・」

楓の危険予知が作動してる

スタジオの北側はあまり手入れもしていないし誰も行きたがらない

昼間でも薄暗くて不気味だから

だから新しい建物は南側に建ててある

じいやばあやの住む家

従業員の住んでいるアパート2棟

それに撮影スタジオ

南側は整備されていて夜でも散歩ができる

花壇のまわりには椅子を設置したから休憩もできる

一転、反対側の北側は雑木林がうっそうと茂り手入れもしていないから荒れ放題

おふくろも入ったことが無いエリアがたくさんある

もちろん子供の私たちも知らない

昔にF子とかくれんぼしてて迷いえらいことになった

祖父や祖母からすごく怒られた

もちろんおふくろも怒ってた

滅多に怒らない祖父や祖母から怒られてびっくりした

「じいちゃ・・・やめたほうがいいよ」

「楓ちゃん、雰囲気があってあそこならキャンプができるぞ」

「じいちゃ・・わかるけど、北側の雑木林付近はやめたほうがいいよ、南側の芝生があるところでいいと思う」

「南側・・・ダメ、雰囲気が無い、街灯もあるし近くに建物があるし雰囲気が無いからな」

こりゃダメだ

やる気満々

「よぉし!明日、テントやらを買いに行くぞ!色々準備して楽しみだ!」

うわっ!

勝手にキャンプしようとしてる

おふくろが来た

「やかましいわね、あんた、静かにしなよ」

「明日な、キャンプ用品買いに行くぞ」

「はい?キャンプ?」

「そうだよ」

「キャンプってあんた一人で?」

「いや、家族でだよ」

「家族?、場所は?」

「実家だよ」

「はい?私のところ?」

「そう」

「聞いてないよ、勝手にキャンプとやらしないでほしいわね」

「練習だよ、そこで練習してほかの場所で本格的にキャンプするんだよ」

「あんたさ・・いつも思うんだけど、気まぐれはやめておくれ、計画性もないし単に気まぐれでするのなら許可しないよ」

「気まぐれじゃないぜ、SちゃんがTVを見てて教えてくれたんだよ」

「おやっさん・・・」

「あのさ・・TVを見てすぐに行動するのはダメでしょ、キャンプなんて一度もしたことないでしょ」

「ないよ、だからさ、練習するんだよ」

オヤジのしょうもない説得でおふくろは折れた

結局、条件としてオヤジが一人でキャンプすることになった

「え!俺だけ?何でだよ?」

「あんたさ・・・いつも人を巻き込むんだよ、今回は一人で練習しなよ」

「え・・・一人で・・・せがれ、お前はやるよな?」

「うわっ!話を振るなよ、今回はやめとく」

「せがれ・・・」

オヤジ以外はスタジオと義理母の所で泊まることになった

翌朝、早速キャンプ用品をオヤジは買いに行った

「パパ、じいちゃ、やる気満々だけど・・・あんまし良くないことが起きそう」

「パパもそう思う、嫌な予感がする」

「パパもそう思うんだね、私もそう感じるよ」

早速、おふくろの実家へ移動

普通の旅じゃないので手荷物は少ない

それでも大人数

オヤジの気まぐれでね

そのオヤジは朝からルンルン気分で楽しげ

それを私と楓が見ていてお互いに「心配だね」という顔

お昼過ぎに着いた

「せがれ、俺よ、ちょっと下見に行ってくる」と言い一人で雑木林の方へ行ってしまった

「パパ、じいちゃ、一人で行ったの?」

「そう、下見に行くってさ」

「なんか・・・嫌な予感がする」

「パパも・・・」

1時間ほどでオヤジが帰ってきた

「遅かったな、オヤジ」

「あぁ・・テントを張る場所が見つからずによ、ウロウロしてた、一応、見つけてきたけど、あとで、テントを張りに行くからよ、一緒に来い」

「わかった」

「じいちゃ、私もついていく」

「お!楓ちゃんも一緒に行こう」

「じいちゃ、アタチも行く」

結局、3人娘も一緒に行くことになった

1時間後にオヤジと一緒にテントを張る場所へ行った

「せがれ、ここだよ、いいだろ?」

「え・・まぁ・・・」

もっと雑木林の中かと思ってた

雑木林の少し手前に小さな空き地があった

そこにテントを張るつもりだ

「せがれ、テントを張るから手伝え」

1時間ほど、四苦八苦しながらテントを張った

「ありがとよ、せがれ、もうこんな時間か・・・ここで一人キャンプするぜ」

もう午後5時を過ぎていた

雑木林のせいなのかなんとなく周囲が暗くなってた

「オヤジ、何かあったら連絡するんだぞ」

「おうよ、わかってる、ありがとよ」

3人娘とテントを後にした

「パパ・・・まだ雑木林の手前だったね、でも・・・なんとなく不気味な場所だよね」

「そっか・・不気味なのか・・・」

「うん、じいちゃ、雑木林の奥へ行かなきゃ良いけど・・・奥は入らないほうが良いと思うよ」

葵がしきりに後ろを振り向いていた

「どうした?葵」

「パパ、じいちゃ、大丈夫かな?何か後ろで聞こえたんだぞ」

「え?何を聞いた?」

「んんん・・・わかんないんだぞ、でも何か聞こえたんだぞ」

「楓は聞こえた?」

「ううん、私は何も・・・」

葵は何を聞いたんだろう

スタジオへ戻った

出前の寿司が並べてあった

大きな声でおしゃべりやカラオケ大会をして夕食時を楽しんだ

夕食も終わった

「パパ、じいちゃ、きちんとキャンプしてるのかな?」

「さぁ・・どうだろうね」

「ちょっと心配だから、パパ、あとで見に行こうよ」

「そうだな、1時間後に見に行こうか」

1時間後

オヤジのいる場所へ

オヤジは食事をしていた

「お!来たか、バーベキューは美味しいぞ、なんかな、一人でいるのも良いもんだな」

オヤジは肉を焼きながら楽しそうに話しかけてきた

心配して損をした

「大丈夫だな、戻ろう」

「うん!」

ところがおよそ1時間後に私の携帯が鳴った

「せがれ・・・@;j;foiv・・・」

雑音がひどい

最後が聞き取れなかった

無線機なら雑音が出るのはわかるがスマホでこの雑音はおかしい

「せがれ・・・早く・・・はや・・・@:hっdkしs」

え・・・何だ?

「オヤジ、雑音がひどい、もう1度言ってくれ」

「;:j@dっl  せ   @:;l:l  れ」

急に背筋に何か冷たいものが触ったような感じがした

オヤジに何か起きたのではないか

「パパ、どうしたの?」

「いや、オヤジから電話が来て、雑音がひどくてなにをしゃべっているのか・・・わからん」

楓にも聞かせた

「え・・・すごい雑音だね、スマホってしょ、それも距離は500メートルしか離れてないよ、何でこんなに雑音が入るの?」

「わからない」

「でも・・パパ、じいちゃ、スマホを忘れてるよ」

え!?

楓は右手にオヤジのスマホを持っていた

「これ、じいちゃのスマホだよ」

確かにオヤジのスマホだ

待て・・・じゃあ・・・この声は誰だ?

家族全員の顔が私に向けてきた

「アニキ、ちょっと、パパのところへ急いで行ってきてよ、何かあったんだよ」

「F、留守番はするからな、様子を見に行ってほしい」

S君からも言われた

「パパ、私もついていくからね」

「あたちも、ついていく」

3人娘と一緒に急いでオヤジのところへ行った

オヤジは一人で酒を飲んでいた

「お!どうした?」

今さっきの出来事をオヤジに話をした

「あ、あれ、本当だ、スマホがない、楓ちゃん、ありがとよ」

楓は持っていたスマホをオヤジに渡した

「いや・・あのな・・・今さっきな、雑木林の奥からな、なんか人の話声が聞こえた気がしていたんだよ、てっきり警備員たちかと思ったけどな、「今日は俺がキャンプするからこの辺りのパトロールはしなくていい」と言っておいたから、警備員じゃないよな・・・

気のせいかな・・・」

私は雑木林の方を見た

暗闇の世界だ

「オヤジ、ソロキャンプはやめたほうが良いかも」

「おいおい・・・せっかく準備してこうやって楽しんでるんだぞ、酒もうまいし、肴もうまい!それによ、静かでいい、家にいると車の騒音や人の声で騒がしいからな

たまにわよ、一人でいたほうが良いぞ」

「そっかな、あんまし良くないことが起きそうなんだよな」

「なに?ケチ付ける気か!」

「いや、そうじゃなく、オヤジの身になにか起きそうな気がするんだよ」

「何も起きやしないぜ、大丈夫だ」

「じいちゃ、パパの言う通り、私も心配だよ」

「え!?楓ちゃんもなにか気配を感じてるのかい?」

「うん!朝から何か気配を感じてるんだよ、じいちゃ、今なら間に合うよ」

「まぁ・・ちょっとな・・俺も・・ちょっとな・・今さっきも話したけどな、人の足音や話声よ、せがれ達が行った30分後辺りから何かしら周りが騒々しいというが

誰かに見られてるという感じはしたんだよな、屋敷内だから賊じゃないと思うけど・・・

どうしようか・・・」

オヤジは腕組をしながら考えていた

私も周りから人に見られてるという感じはする

霊感が無い私が感じている

「まぁ・・最後までキャンプするぜ、ここまで準備したんだからな」

「オヤジ、大丈夫か?霊感の無い俺でも何かしら背中がゾクゾクしてるんだぞ」

「じいちゃ・・・みんな待ってるよ」

ジジジッガガガガッガ・・・・

「じいちゃ、ラジオがおかしいよ」

「電池は新しいのと変えたばかりだぞ」

ソ➗️・hk@k::お:¥¥¥  ロ¥:@@@

オ・・ソ・・・gっっl::っl:;l@j@j@

「なんだ?雑音がひどいな、何か話してたな・・・」

「全然、わからん、ここらへんって電波は弱いのかな、スマホの受信柱は5本全部表示してるけどな・・・」

突然、私のスマホの着信音が鳴った

私はその番号を見て固まってしまった

オヤジの携帯番号からだ・・・

「おい!せがれ、どうした?」

私はじっとスマホの画面を見て動きが取れなかった

「おい!」

オヤジが私のスマホを覗いた

「お・・・い・・・マジかよ・・」

オヤジもびっくりした顔になった

「パパ、じいちゃ、・・・え!!!!」

楓も私のスマホを見た

「パパ、パパ!一応、出たらどう?」

あっと我に返った

私は咄嗟に受話器アイコンをタップした

雑音がひどい

私はスピーカアイコンをタップした

セ・・・@::k:っk@っぅぅガ:::h:hッpッlg;レ

ガガーーガガーー

確かにオヤジの声だ

オヤジは唖然としたままだ

「俺の声だ、・・・どうなってるんだ・・」

「え!パパ、今、足音聞こえなかった?」

楓が突然言い出した

「え?いや・・・」

パキパキ・・・・

「え・・聞こえた・・・」

「パパ、人の声も聞こえる」

段々と足音が近づいてくる

「え・・・誰だろう?警備員?・・」

「いや・・・違うぞ、・・・」

足音が確実にこちらへ来てる

「こりゃあかんぞ、オヤジ、葵を背負え、俺はカナちゃんを背負う、楓はパパの手を握って絶対に離しちゃ駄目だぞ」

「うん!!!」

スマホから・・・

((逃さんぞ・・・))

私はびっくりしてスマホを放り出してしまった

「オヤジ、スタジオまで走れ!!」

「おう!!!」

子どもたちを背負い、一目散にスタジオまで走った

もう、心臓が止まりそうだ

およそスタジオまでの500メートルを全力疾走した

なんとか無事にスタジオへ戻れた

もう息切れ

「大丈夫かい?」

「大丈夫、おふくろ、この家の施錠を全部閉めて」

「え!?何かあったのかい?」

おふくろに全部話しをした

「そりゃ・・・施錠は全部閉まってるよ・・・」

おふくろに警備会社へ連絡をして

スタジオや寮など警備員を配置してもらうように頼んだ

少し落ち着いた

2階の一番奥の北側の部屋へ行った

北側の窓からそっと外を覗いた

そこから雑木林がよく見えた

誰もいない

オヤジのキャンプテントが見えた

そこにも誰もいない

しばらく外を見ていた

何も変化なし

子どもたちはもう寝るように言った

オヤジからなにかあったかを聞いた

「まぁ・・・別にどうのこうのというのはなかったけどな

料理をして酒を飲んで・・・しばらくしたら雑木林の方から人の話声が聞こえてきたかな・・・気のせいだと思って気にしてなかったけどよ

そしたら、せがれ達が来たんだよ」

突然、何か悲鳴のような叫び声が北側の方向から聞こえてきた

「おい!何だ今のはよ?」

「悲鳴?叫び声?」

「動物の声かな?」

「またか・・・」

S君が小声で言った

「またか・・・たまに雑木林の奥から叫び声みたいなのが聞こえてくる時がある

はじめは動物かな?と思ってたけれど、今回の件ではっきりわかったよ

人の声だ」

「そう、Sアニキの言うとおり、たまに聞こえてくる」

「ちょっとな、そういうことは言ってほしかった、もし本当に人だったら不法侵入だよ、警備の仕方も変えないといけない」

「悪かったな、F、あまり、そう、気にしていなかったからな」

人の叫び声にしては少し違う様な気がする

もし人だったらこれは大変なことだ

「おふくろ、一度、北側の雑木林を調べないといけないかも、外部からもし入れたとしたら大変だぞ」

「そうだわね、ブロックの堀や壁が壊れているのかも、でもね、毎日、屋敷のまわりをパトロールしているからね、もし壊れていたら報告があるはずよね、人が侵入したとは思えないけどね」

みんな、黙ってしまった

「一応、施錠だけはすべて見てくるよ」と私はスタジオの施錠がかかっているか全部見てきた

すべて施錠はしてあった

「オヤジよ、北側の部屋からたまにでも良いから自分のテントあたりを見てて欲しい」

「おう!わかったぜ、おチビちゃんたちもいるからな、あの部屋にいるぞ」

そろそろ眠くなってきた

スタジオの出入り口のドアノブがガチャガチャと鳴った

全員がギョッという顔になり出入り口のあたりを見た

「今、ガチャガチャとドアノブが鳴ったような気がしたけど」

「鳴ったと思う、確かに聞こえた」

「おいおい、誰だよ?」

「誰って・・・ここ屋敷内だぞ」

「そうだよな・・・」

しばらくすると、また、ガチャガチャとドアノブが鳴った

「う・・・外に誰かいるんじゃいのか?」

「え・・・家族全員、スタジオの中だぞ、子どもたちとオヤジは2階の北側の部屋にいる、あとはここにいる・・・」

「誰だろ・・・アニキ、モニターで見たら?」

「お、そうだな・・・」

S君がモニターを見た

「え・・・誰もいないぞ」

「うそぉ」

しばらくして

((オーーい、開けてくれ、入れてくれ))

「え・・声が聞こえたぞ」

「Sアニキ、パパの声のようだったけど」

「たしかに、おやっさんの声が聞こえた」

「いや、オヤジは2階へ行ったぞ」

「F、すまんが、確かめてきてくれ」

「わかった」

私は2階へ行った

オヤジはラジオを聞きながら部屋にいた

子どもたちは全員、もう寝ていた

「おう、どうした?」

「オヤジ、ずっとそこにいるよな?」

「いるぜ、たまによ、外を見てるぜ」

「あのな、今さっき、ドアノブがガチャガチャと鳴ってしばらくしたらオヤジの声がしたんだよ」

「いや、俺はずっとこの部屋にいたぞ」

「だよな、おかしいな」

「絶対に開けるなよ、俺はずっとこの部屋にいるからよ」

「わかった、いてくれ、子どもたちを見ててくれ」

「おうよ」

とりあえずはオヤジは2階にいた

「ちゃんとオヤジは2階にいたよ」

「え?・・・じゃあ、今さっきのは誰なの?Fアニキ?」

「わからん・・・」

しばらく全員が黙ってしまった

ガチャ

「え!!!今、ドアの鍵が開いた音しなかった?」

「聞こえた・・・ドアの鍵が開いた音」

スタジオには南側の出入り口と北側の方に緊急用の出入り口がある

いつもは南側からスタジオに出入りしている

北側は一度も使われたことはない

もし北側から誰かが侵入してきたら必ずスタジオの部屋に現れるはずだ

しばらく待ったが誰もこない

2階へ行くにはスタジオを通って左隅の階段を上らないと2階へは行けれない

階段の方も見たが誰もいない

背中に冷たいものが通り過ぎていったような感じがした

「誰も来ないよな・・・確かに音がしたんだけどな・・・足音もしない」

外からは足音はした、間違いなく巡回している警備員たちの足音

警備会社から何も連絡が来ないということは外には誰もいないということだ

私は警備責任者にキャンプの所にも2人、警備員を置くように頼んだ

ついでに私の携帯も拾って持ってきてほしいと頼んだ

しばらくするとドアをノックする音が聞こえて警備員の声がした

私の携帯を持ってきてくれた

私は携帯を受取り、異常がないか調べてみた

外見は大丈夫そうだ

一度、義理母のところへ連絡しようと思い電話をしたがなぜか繋がらない

放り出したときに地面に当たって壊れたのかと思った

ものは試しに自分の家へ電話をした

もちろんだれも出るわけがない・・・(ないはず・・・)

しばらくすると、受話器を取る音がした

私は「えっ!」と叫んでしまった

「せがれか・・どうした?」と言い、ガチャンと切れた

私は固まった

間違ったのかと思い履歴を調べたが間違いなく我が家の電話番号だった

そんなバカな・・・家に誰かがいる・・・声の主は間違いなくオヤジの声だった

「どうした?F」

とS君が私を呼んだ

私は今さっきの事象を話をした

「え、それはないはずだ、おやっさんは2階にいるし家には誰もいないはずだ」

「たしかに、オヤジの声で「せがれか・・どうした?」と聞こえたんだよ」

「マジか?俺、ちょっとおやっさんと姪っ子たちを連れてくるわ」

そう言って2階へ行ってしまった

しばらくするとオヤジと3人娘たちが来た

「おいおい!せがれ、Sちゃんから聞いたぞ、家から俺の声がしたんだろ?」

「そう、確かにオヤジの声だったよ」

「俺はずっといたし、今もここにいるぜ、一体誰だ?」

「わからない」

「ちょっと待てよ、俺もかけてみる」

とオヤジは自分のスマホで家に電話をした

「まぁ・・かけてみるぜ」

オヤジはそう言いつつ電話をかけた

しばらくすると

「まぁ・・誰も出ないな・・・」と切りかけたときに

ガチャ

誰かが受話器を取った

「え・・・」とオヤジのびっくりした声

しばらくは無言

「誰だ?」とオヤジは叫んだ

すると・・・

「お前自身だろ」と言い切れた

スマホは誰でも聞こえるようにオープンにしていた

全員が固まった

「おい・・・何だよ、今のはよ」

「オヤジ・・・な・・・いたろ・・・」

「いた・・俺自身かは知らんが・・・誰かが家にいるぜ」

葵とカナちゃんが今にも泣き出しそうな顔をしていた

「S君、葵とカナちゃんをそのソファに座らせてあげて」

「おう」

「パパ、怖いんだぞ、今さっき、2階にいるときも外からなんか聞こえてたんだぞ、じいちゃが傍にいたから、あたち、怖くはなかったんだぞ、でも、怖いんだぞ」ともう泣きそうな顔をしながら話しかけてきた

全員が動揺していた

今までは誰かが家にはいたから気にしていなかった

今回はたまたまオヤジの気まぐれで全員が家から離れていた

私は心配になり義理母の家に電話をかけた

だが、誰も出ない

まだ夜の8時過ぎだ

義理母の家にはS子とカナちゃんママと息子たちと義理の両親がいるはずだ

誰も出ないということはありえない

直接、S子にかけてみた

「誰?パパ?どうしたの?」

「いるじゃないか!何で固定電話に出ないんだよ、今さっきからかけてるんだぞ」

「え?固定電話?パパ、電話はかかってきてないんだぞ」

「嘘だろ、こっちから何回もかけてる」

「でも、パパ、かかってきてないんだぞ」

「え・・マジかよ」

またも全員がびっくりした顔になった

「あのさ、こっちでいろいろとやばいことが起きて心配になったから固定にかけたんだけどな」

「そうなんだぞ、こっちも・・・ちょっとあったんだぞ、パパ(オヤジ)はそこにるんだぞ?」

「いるよ、ずっといる」

「おかしいんだぞ、15分前かな、誰かが玄関の戸を叩く音がしたんだぞ、「おい!開けろ」と声がしたんだぞ、その声がパパ(オヤジ)の声だったんだぞ、ウチのパパ(実の父親)が様子を見に玄関を開けたら誰もいなかったんだぞ」

それを聞いた全員がもうパニック寸前になりかけていた

「こりゃかんあかんぞ、せがれ、「俺」がなんかいるぞ」

「あんたさ、いつもの行いが悪いから、いろいろななんか変なものが出てきたんだよ、どうするのさ」とおふくろは少し怒った顔でオヤジに文句を言ってきた

「「どうするのさ」と言われてもな・・・な、せがれよ」

振るなよ

知らんよ

結局、全員が眠れずに朝を迎えたよ

Concrete
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