ある晩俺は友人ABの三人で近所で密かに評判になっている心霊スポットへ行く事にした。
五年前に一家惨殺事件が起きて今は空き家のままになっている少し大きめの屋敷だ。
道中俺達はとりとめの無い話をしながら目的地に向かった。
「覚えてるか?あの時の事件は酷いもんだったよな」
「そりゃニュースでは凄惨だったものな。首を切断されていたり手足バラバラにされていたりしたそうだからな」
「しかもまだ犯人捕まってないみたいだし、怨念とか相当なものじゃねえかな?」
午前三時頃屋敷に到着した。五年間放置されていたので雑草は蔓延り放題だったが外観は思ったより汚れてなかった。俺とABの三人は携帯電話で連絡を取り合う事を決めて、中へと入った。
元々が古めの屋敷だったので中はかなり傷んでいたが、家具が倒れていたり誰かが持ち込んだらしい空き缶やゴミが散らかっている以外はさほど普通の空き家と変わらない。さすがに広さがそれなりにあるので少々不気味だが。
俺は電話を他の二人にかけた。
「ようA、俺の方は異常無しだ。そっちはどうだ?」
「この部屋壁が黴だらけだな。だけどこれといって何も無いぜ」
「お〜いB。どうだそっちは?俺の方は何も無いけど」
「俺の方も異常無しだ。何も無いとなるとちょっとガッカリだな」
俺達はそんな調子で時折電話しながら屋敷内を全て探索してみた。結局三人共全く怪奇なものは見たり聞いたりしなかったようだ。無事に三人共屋敷から出て門の前で落ち合った。
「何も無かったなあ」
「俺も何も見なかった」
「俺もだ。何か少々残念かもな」
「俺の方も何も見なかったな」
皆何も変なものを見聞きしなかった。あの屋敷には怨念は残ってないようだ。少々拍子抜けしたが…安心出来た。俺は皆の言った事を反芻した。
「何も無かったなあ」
「俺も何も見なかった」
「俺もだ。何か少々残念かもな」
「俺の方も何も見なかったな」
俺は家に脱兎の如く急いだ
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話