中編6
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今朝の夢

夢の中で私は、ショッピングセンターにいました。

見るともなしに店内を歩いると、突然まわりの人間達が

ピタリと止まって、微動だにしません。

時が止まったのではなくて、みんな意図的に動こうとしていない様子です。

私は不審に思いながらも、店内を歩いていると、小声で、

「バカっ!早く動きを止めてっ!あぁ、もう間に合わない・・・そこまで来ている」

と聞こえてきます。

どうやら、他の客が私に向かって忠告している感じです。

何の事?と思いながらも、その客の

「そこまで来ている」で、私の脳裏に蘇る記憶がありました。

あれ?このシチュエーション、知ってる?

そう気づいた瞬間に、夢の中なのに私の体は危険信号を察知して、

みるみる血の気が引いていくのが分かりました。

そうです。「そこまで来ている」と言われている得体の知れない 何か を

私は知っているのです。

この 何か が近くにいる時は、動きを止めて息を殺して、

存在を気づかれないようにしなければいけなかったのです。

このままでは、その 何か に見つかって殺される、という事を

私は知っているのです。

私は過去の夢の中で、この 何か に会ったことがあるのです。

ヤバイ・・・殺される・・・!!そう思って動きを止めた私の横を

中学生くらいの女の子が何も知らないのか、スタスタ歩いていきました。

その瞬間、私は

あ、助かった!! と思ったのです。

この子が 何か の目に留まり、攻撃されるるのは私じゃない

そう思ったからです。

自分が助かるのなら、こんな幼い女の子の命なんて差し出してしまえるのです。

その思考回路が我ながらに怖かった。

通り過ぎていく女の子の後姿を目で追いながら、

早くこの息も出来ないぐらいの恐怖から開放されたい・・・

まんじりとも動けず、その時 がくるのを待っていると

女の子がおもむろにクルリと振り返りました。

通り過ぎた時は分からなかったのですが、

女の子の顔は真っ白で、不自然なくらいの無表情です。

そして私を真っすぐ見据えると、ニタァァと笑ってスタスタと近付いてきたのです。

こんな怖い顔を私は現実世界でも見たことありません。

この女の子が 何か であると気付くのと、

逃げようとして動き出したのはほぼ同時でした。

私は必死に走っているのに、女の子はスタスタと歩いて

その差をどんどん縮めてきます。

なんで?こんなに走ってるのに何で?!

私の心はもうパニックです。

もうダメ、殺される!!

そう覚悟した時に、店内の誰かが

早くおまじないを10回唱えろっ!!

そうすれば逃げられるのに、何で唱えないんだ っ!!

と叫びました。

おまじない?

おまじない?!

おまじないっ!!

私はこのおまじないを知っていると気付きます。

前に夢で見た時に、おまじないを聞いているのです。

それなのに、おまじないのセリフを覚えてないのです。

霞がかかったようにぼやけて口から出てこないのです。

もう半狂乱になって、

お願いっ!誰かおまじない教えてっ!助けてっ!!

と泣き叫ぶ私に、また店内の誰かが

○○○○○○○○○○(←詳しくは覚えてないです)を10回、早く唱えてっ

と、教えてくれました。

有難いと思うより先に、○○~を必死で唱える私。

それなのに、耳で聞いたおまじないと、口からでるおまじないのセリフが違うのです。

違うっ!そうじゃないっ!そうじゃないっ!

私も回りの人間も、もうパニック状態です。

そして・・・

逃げ疲れ、叫び疲れて座り込む私に

ゆっくりと、でも確実に一歩一歩近付いてくる、何か・・・

もうさっきのような少女の姿はしておらず、全身真っ黒なモノに覆われた 何か が

静かに私の心に囁きました。

せっかくのおまじないも、間違っては意味ないよねぇぇぇ

そのまま私は、上半身を 何か によって、千切られてしまいました。

全身をかなり硬直させながら目を覚ますと、まだ朝の4:30。

今見た夢の内容が鮮明に残っていて、心臓はまだバクバクしていました。

ただ、起き出すには早過ぎるのでもう一度眠りにつくことにしました。

程なく、あ、また夢を見てるな・・・という感覚とともに、

この夢がさっき見た夢とまだ内容に繋がりがあるということに雰囲気で気付きました。

ただ 何か から身を潜め隠れている人間達の緊張が夢全体を包んでおり、

今回のターゲットがまだ生き長らえてる事を肌で感じました。

私も物陰に身を潜め息を殺しました。

今度の夢は、やたらと部屋数のある建物の中でした。

明るいような薄暗いような、変な感じを受けながら

この夢では 何か のターゲットが自分ではないことを感じ安堵しました。

この緊張から解き放たれたい衝動と共に、それが何を意味するのか・・・

一人の人間の命と引き替えに、己の安らぎを得ることへの罪悪感・・・

夢の中とは思えないほど、思考回路はしっかりしていました。

そして、ふいにそれは目の前に現れたのです。

まだ足下も覚束ない、小さな赤ん坊。

動くな、と言われても言うことを聞けない未成熟な生き物。

ここにいる人間全員が身を石のように固くしている状況で

建物の中を自由にヨチヨチと歩く、この小さな人間。

赤ん坊の周りを、徐々に邪悪な空気が包んでいくのが見えます。

今回のターゲットは、この赤ん坊なのです。

さっきの夢では、少女と思っていたモノが 何か の正体でした。

今回のこの赤ん坊も、もしかしたら同じ手口で 何か が化けているかもしれません。

でも、最初に自分が殺されたあの夢で、

私は確かに、一人の少女を見殺しにしようとしていたのです。

その罪の意識は、第2幕の夢でも引きずっていました。

私は悲鳴にも似た声を上げていました。

声を上げながら、赤ん坊に駆け寄っていました。

身代わりになる、というような崇高な愛のためではありません。

もう半ばヤケクソのような感情で突っ込んでいったのです。

そして赤ん坊を抱き上げた時、 おまじない の存在を思い出しました。

もしかしたら、2人とも助かるかもしれないっ?!

それなのに。

存在を思い出した瞬間は覚えていたハズのおまじないのセリフも、

いざ唱えようとすると、最初の一文字も思い出せないのです。

唱えようとしても、私の口から出る言葉は

あ、ぅあ、あぁぁぁ、あばばば・・・・

言葉を成してはいませんでした。

私の周りの邪悪な空気は更に濃度をあげてきています。

あぁ、これで私もこの子も駄目なんだな、

と諦めて抱き上げた子供に目を遣ると・・・

私が必死に抱きしめていたモノは、

人間の腰から下の形をしたずっしりと重い真っ黒な木の人形に変わっていました。

結局またもや赤ん坊に変身してた 何か の思うツボのまま殺されるんだ、と悟りました。

太腿のあたりが熱いような冷たいような、ちりちりと痛い感覚に襲われ始めました。

あぁ、今回持っていかれるのは下半身なんだなぁ

さっきの夢で私は上半身を持ってかれてるもんなぁ

やっぱり私の体を全部を 何か は食い潰したいんだろうなぁ

と、変に冷静な思考回路のもと、

自分でも妙に納得しながら力なく笑っていました。

「確実な死」を受け入れるしかできないこの状況に、ただただ笑ってしまいました。

と、ここで目覚ましが鳴ってくれたおかげで目を覚ますことが出来たのですが、

私は時々こういう夢を見ています。

読んで下さってありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー のめめさん  

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