短編2
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ホルマリンベビー後

結局、あの子は流産していまい、精神的に病んでしまったと、噂が流れた。

そんな頃、あたしは理科教師に呼び出された。

ひと気がない、おかしな時間だった。

あの時、何か見なかったか?

冷たいその目は、教師のものではない。

あたしが思わず後ずさった時だった。

あの子が現れた。

大きな筒状の硝子瓶を愛おしげに抱え、頬ずりをしている。

唇には微笑を浮かべているが、目がおかしい。

そして硝子瓶の中では、液体に、赤ん坊が浮いていた。

ヒィともヒァともつなかい声を理科教師があげる。

『私の…、私の赤ちゃん…』

コツコツコツ

ゆっくり、こちらに近づいてくる。

『私の…私の…私と…』

『あなたの』

理科教師に向けたその目は、完全に白目だった。

気を失った、あたしが目を覚ました時、そこには誰もいなかった。

『校長?』

私は黙りこんでしまった校長に声をかけた。

『あぁ、ごめんなさいね。ちょっと、ぼうっとしちゃったわ。』

校長はごまかすように、コーヒーを飲み干した。

『あたしもそろそろ帰ります。先生も無理はいけませんよ。』

少ししの雑談の後、校長は校長室へともどっていった。彼女も言った通り間もなく帰るだろう。

私は白衣を脱ぐと今は保健室の倉庫になっている部屋へ向かった。

彼女、思い出してたのかしら。

キャスター付きの棚を動かすと地下室の入口が現れた。

見下ろすだけで、開けはしない。

入口を足で踏み付ける。

彼女を始末する用意を、あいつがしていてくれたおかげで、私はあいつらの始末ができた。

新校舎を建てる際、理科室は保健室へと改築され、理科準備室は倉庫となった。

私にはこれ以上ない幸運だった。

あいつらはこれからも、この下だ。

私は容貌がよほど変わったのだろう。

後から赴任してきた彼女は、私に全く気づかなかった。

『あぁ、いけない。』

入口を元通りに隠すと、私は保健室へ足早に戻り、ロッカーのカギを開けた。

『よーしよし。いい子ですね。ママはお仕事、終わりましたよ〜。もう、帰らなきゃいけないけど、また明日来ますからね〜』

私の様に馬鹿な男に騙される女をつくらない。

仕事には情熱を傾け続けている。

あやす度に、ちゃぷんちゃぷんと中の液体が揺れ動く。

暗い校舎に赤ん坊の泣き声が響いた……

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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