中編4
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じぃちゃんの気配

以前、廃屋の夜を投稿した者です。

今回は私のじぃちゃんにまつわる話です。

先に断っておきますが、怖い内容ではありません。

私のじぃちゃんは明治生まれ。

うちの母さんが嫁入りした当時は、感じのあまり良くない舅さまだったそう。

だけど、歳を重ねていくにつれ性格は穏やかになり、

私が成人した頃にはすっかりカワイイじぃちゃんになってた。

私はそんなじぃちゃんが大好きだった。

日々の出来事や、流行りの商品、時事ネタや昔話など、

じぃちゃんとの会話は飽きる事がなく、いつも楽しくて仕方なかった。

ドライブにも二人でたくさん行った。

春の桜を愛でに行ったり、観光名所の滝にマイナスイオンを浴びに行ったり、

新規オープンの店を冷やかしに行ってみたり…

じぃちゃんが「あそこ行きたい」と言えば、喜んで車を出していた私。

自他共に認める仲良しな私達は一緒にいるだけで幸せだった。

じぃちゃんは健康オタクなところがあり、

健康系の雑誌数種類を毎号欠かさずに購入し熟読。

気になる健康法があると片っ端から試しては、

経過や成果をノートに記していた。

そのせいか、足腰も頭の回転もシャンとしていて

歳のわりには元気な老人だった。

だから、叔母さんから

「おじいちゃん、肺に癌が見付かったの」

って聞かされた時は、信じられなかった。

「俺は百まで生きるんだ♪」

が口癖だったじぃちゃんに、癌?

あんなに色んな健康法やってきたのに?

逆に手広く試し過ぎて効き目が薄まっちゃったの?

聞いたその夜はショックのあまり涙が止まらなかった。

高齢という事で、手術はせずに投薬治療が始まった。

じぃちゃんには病名を伏せたままで…。

でも、頭の良い人だったから多分気付いてたんだと思う。

一度だけ「俺、癌だと思うんだ」とポツリと呟いた事があった。

私は何て言ったらいいか分からず

「そんなワケないじゃーん。」と言うのが精一杯だった。

それでも弱音を吐く事もせず、

私が回復祈願にと作ったハリボテの達磨を嬉しそうに飾ってくれていた。

何回か入退院を繰り返し、とうとう医者に

「きっと、これが最後の入院になるでしょう。」

と家族に告げられた時に、息も絶え絶えなじぃちゃんが

「遺影に・・・つかえ・・・そう・・・な俺・・・の写真・・・はある・・・の?」

と聞いてきた。

自分の死期が迫っていることを、じぃちゃんは知っていた。

私はじぃちゃんの手を握り締め耳元で

「大丈夫!あるから何の心配もいらないからねっ!」

と答えると、じぃちゃんは安心したのかニッコリと笑ってくれた。

私は泣かずにはいられなかった。

それが私とじぃちゃんとの最期の会話だった。

享年93歳だった。

しばらくは、じぃちゃんが亡くなったショックから

仕事中も思い出してはジワジワ涙ぐんでしまう日々が続いた。

でもある日、自分の近くにじぃちゃんの気配を色濃く感じることに気付いた。

始めのうちは、じぃちゃんを恋しく想う自分の気持ちが

そう感じるだけだと思っていたが、違かった。

何をしていても、じぃちゃんが傍にいる気配は日増しに増え、

私は母さんに相談した。

「なんかさ、じぃちゃんがやたら気配をアピールしてくるんだけど、

もしかして、何か言いたい事でもあるのかなぁ?」

母さんは後日、知り合いの霊媒師さんに相談してくれた。

「ウチの娘が、最近おじぃちゃんの気配を感じるって言うんだけど」

それだけ聞くと霊媒師のおじさんは

「・・・あぁ~、娘さん、最近車買ったでしょ~」

と、優しく笑いながら言ったそうだ。

「おじいさんはね、お孫さんの事を心配してるんだよ。

浮かれて運転したらダメだよ、注意するんだよ、って言いたいんだよ」

確かに。私はじぃちゃんが亡くなった後、車の調子がよくよく悪くなり

じぃちゃんとの思い出が詰まった車を手放し、新車を購入していた。

しかも、購入の際にはじぃちゃんが遺していってくれた遺産を充てたため、

いわばじぃちゃんに買ってもらったような車だった。

車を購入した人なら分かると思うが、当時の私は新車に浮かれていた。

それに、じぃちゃんと森林浴をしに出掛けた帰りの山道で

一度だけオカマを掘られたことがあった。

その事故は私の車の部品を取り替えるでけで済み、

幸い大事には至らなかったのだが、

じぃちゃんはその後、私が運転する際には

「気をつけろよ」

とやたらと心配してくれていた。

そんな話を、霊媒師のおじさんが知るハズはない。

こういう特殊な能力のある人のおかげで、私は亡き人からのメッセージを

受け取ることが出来、本当に有り難い存在だと思った。

じぃちゃんは、自分の言いたいことが私に伝わったことで安心したのか

その日を境にパッタリと気配を消してしまったので、

私は少しだけ淋しかったけれど、

亡くなった後も私を心配してくれたじぃちゃんの気持ちが嬉しかった。

私は亡くなった人の声は聞けないし、姿を見ることも出来ないけれど

思いが強ければ相手の気配を辛うじて感じることは出来るみたいです。

街中でじぃちゃんと背格好が似たおじぃさんを見掛けると

胸が切なくなって、じぃちゃんに会いたいなぁと5年経った今でも思います。

私の大好きなじぃちゃんとの話を最後まで読んで頂きありがとうございました。

皆さんも大事な人との時間は大切にして下さいね。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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