長編10
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黒子の【怪】

ソレが届いたのは一ヶ月位前の事だった

母親方の祖母が老人ホームに入ると連絡があった

俺(K)「仕事で入園する時は行けそうにないな…」

母「あら、そう。入って落ち着いたら来てあげて」

と母が軽く言う

程なく実家から荷物が届いた

ダンボールを開けると糠の懐かしい匂いが…(漬物?)

中を見るとバケツ程の大きさの容器とその上に子供の頭位の石が置いてあった

容器の横に手紙がある

~婆さんがKにだって~母より

我が母ながらまぁ簡潔な手紙である

俺「漬物は好きだけどなぁ~…」

と頭をかきながら何気なく部屋の四隅を見る

…と

ソレがいた…

オカッパ頭、顔は真っ白で目はギョロッと(俺を凝視…)

黒の着物を着た女だ

正座をしてジ~っとコチラを見てなさる…

(あ~…また?またなのかい?)

頭を抱えながらいつもの通り先生に連絡をする事に

(先生というのは俺の会社の後輩のTである)

ポンと携帯を取り出して電話…

慣れたものである

その間も女はジッとコチラを見ている

(うん…目がギョロッとしてるね…)

Tが電話に出る

T「はい、お疲れさまでー…」

と言い切る前に…

俺「また??」

T「…はい?」

俺「またなのかい?」

T「いやいや、意味不明ですよKさん…どぉしました?」

俺「ん…あぁスミマセン取り乱しました…つまりアレだよ、ん~…そのぉ~…今すぐ来いッ!」

黒い髪を忘れない

黒い着物を忘れない

あの目を忘れない…

糠の匂いに鼻が慣れ始めた頃にTは来た

T「くっさ…Kさんの部屋くっさっ!!」

のっけからそんなテンションのTに少し苛ついたが堪えて本題に入った

俺「で、今度は何を連れて来ちゃったの?俺は?」

隅の黒女をチラッと見ながら聞く

するとTがキョロキョロして一言…

T「え?…何かいます?」

……

俺「オ、オイオイ、先生?冗談はよせよ…居るだろ…ほら!そこに…黒い着物のオカッパの…」

正直…心底テンパっていた…

そもそも俺が何故に毎回怖い現象に遭遇しても少し余裕があるリアクションが取れるか?

と言われればTの存在が無くして語れないだろう

奴が居れば何かしらの対策や方法を介して俺を助けてくれるだろう…

っと、勝手に思っていたからだ…

軽く口をパクパクさせた後でTが俺をからかっているのかも?!

と思ったがどうも本気で見えないらしい…

T「気配はするんですけど…んー、見えないですね。ま、悪い感じもしないし時間が経ったら何処かに移るんじゃないですか?」

と適当な言葉を吐き捨てTは帰って行った

(薄情な奴だ…)

…あれ?

解決してなくね?このままですか?

確かに前に霊体験をした時の様な悪寒は感じない

でもこのままでもいいものか…

俺「ん~…」

チラッと隅を見る

相変わらず黒女はこちらをジッと見ている

(悪い感じはしないが…怖いな…)

黒子との生活が始まった

色々と考えたがまぁ害は無さそうなので気にしない事にした(まぁ…無理だが…)

黒女の視線を感じながら軽く夕食を済ませ明日も早かったので床につく事にした

俺「さて~、電気を…」

黒女と目が合う

(…消せない…消せるわけない…)

明るいと良く眠れない派だったが諦めて電気、TVをつけっぱなしで眠りについた

(金縛りとかならないよな?)

と、心配したがなる事はなかった

その代わり翌朝恐ろしいモノを見た

目が覚めると朝になっていた

昨日の事が夢ならいいなと思い、部屋の隅を確認…

(あぁ…居る…正座してこっちをジッと……ん?)

汗が吹き出た

昨日は穏やか(?)な表情だった黒女の顔が酷く歪んでいた…

そしてその目は俺でなく台所をジッと睨みつめているのである

訳が分からずこちらも台所に目をやる

視線は昨日届いたダンボールに注がれている様に感じた

(まさか…)

体を起こしダンボールの中から糠漬の容器を取り出した

黒女はジッと見ている

(あぁ…コレかぁ)

黒女が糠漬と一緒に我が家に来た事を理解した

が、苦渋の表情の訳はわからなかった

少しビクビクしながら苦しそうな黒女を尻目に出勤した

帰宅した時…

黒女は更に苦しそうな顔をしていた…

俺はどうしたら良いのか分からなくなっていた

胸は罪悪感で何故かいっぱいだった

今にも泣きそうな黒女の表情に戸惑っていた

このまま消えてくれれば良いんだが…

少し考えた後で何かが引っかかっていた

見殺しにしちゃダメだ…助けなきゃ…

と、何処かで思った

ソレは自分の良心がそうさせたのか、分からないがとにかく助けたいと強く思った

(でも助けるって言っても…)

途方に暮れていると携帯が鳴った

母からだ

母「あ~、K?糠漬届いた?」

K「あぁ…うん、届いたよ…」(別のもな…)

母「ならいいわ♪婆さんからの最後の贈り物になるかもしれないんだから大切にすんのよ!?」

(縁起でもねぇ)

母「あ、そうそうちゃんと糠は毎日手でかきまわして空気に触れさせなきゃダメよ?す~ぐカビちゃうんだから」

(…!?それか!!)

母との電話を切った後ですぐに台所へ行き糠を混ぜてやった

するとみるみる内に黒女は表情を和らげていった

(ってか、良く見ると子供か?8~10歳位に見える…若返った?)

母との話を思い出す…

母「婆さんは毎日糠の手入れしてたわね~、入園の何ヶ月か前も何かブツブツ言いながら手入れしてたわ!黒子ちゃんがど~のこ~のって楽しそうに糠に話しかけてたっけ…今思えばあの頃からボケが進んでったのかもね…」

俺「黒子…か…」

ボソッと呟くと黒子はジッとコチラを見てニコっと微笑んで見せた

黒子が家に来てから2週間が経った

うちには些細な変化が起こっていた

毎朝起床してから糠を手入れするのが俺の日課になった

糠を手入れするうちに黒子の表情はドンドン明るい感じになっていき1週間が経った頃には常にニコニコな表情になっていた

どうやら手入れは黒子にとって無くてはならない空気の様なものみたいだ

毎朝手入れをするのでついでに朝飯でも作ってやれと糠漬と一緒に朝食を取るとすこぶる体の調子が良い(黒子効果?)

会社でTにその事を話すと

T「う~ん、ホントに今回は分からない事だらけですね。黒子は霊というよりもっと高等な存在なのかもしれませんね。その証拠に…それ…」

と言ってTが俺の肩を指差す

俺「…?どうした?何もついてないぞ?」

T「そぉ!そぉなんですよ!霊体質のKさんにここ数日、全く霊が付いてないんですよ!前は2~3日に一回は必ず何かくっつけてたのに今は全然…あ…。」

言い掛けてTはしまったというような顔をした

(コイツ…いつも見てみぬふりしてやがったな…)

そんな事を思いつつ俺もこの生活が満更でもなく、正直楽しんでいた

変な夢も見ていた

子供の時分、黒子と実家でお手玉や鬼ごっこをして遊ぶ夢だ

俺は黒子と幼い頃出会っていた…そんな気がしていた…

そんな頃に…

事は起こった…

その噂はいつもの居酒屋で聞いた話だ

【血染めのDVD】

内容は確か…DVDを数枚借りて家に帰ると何故か借りた覚えのない一枚が紛れ込んでいる

そのDVDはホラーものなのか所々に血の跡が付いている

興味本意で中を見ると…翌朝目を刳り貫かれ死んでしまう…

血染めのDVDは完成する…

と、こういうものだ

これは最近この辺りでそういう手口の殺人事件が2~3件起きていて

話題性のある事件に尾びれ背びれがついた不謹慎極まりない怪談話だ

…と、思っていた…

で、今俺は家に居るんだが…

何故か借りた覚えのないDVDが机の上に転がっているのをジッと見ている

借りてない…断じて借りてないぞ

うーん、と唸っていてもしょうがないのでTに電話をする

(何とかしてもらおうか)

その時チラッと黒子の顔が見えた…

怒っている様な、険しい顔をしている

(ん?糠の手入れ今朝した筈だが…何で睨んでる?)

おかしいなと思いながら手に取った携帯を見る…

携帯はDVDと入れ替わっていた

確かに携帯を手にした筈だった…

もう一度…DVDを机に置く、携帯を手に取り電話を…

またフッと黒子に目をやると手には何故かDVDが握られている…

(今度はパッケージから出して手に取っている…)

ゾッとした…

幽霊も怖いが自分自身の制御が効かない方が100倍恐ろしい…

DVDを叩き割り、今度は黒子をずっと見ながらTに電話をする

手には…

携帯…はぁ、と溜め息をつく

T「…はい、お疲れ様です」

Tが電話に出たが相槌をうてないでいた…

何故なら黒子がDVDデッキを凝視していたからだ…

しかも割った筈のDVDが口を開けたデッキにセットされている

俺「あ…」

声にならない声が出た後でゆっくりとデッキに吸い込まれていくディスクを見送った…

黒子の表情が更に曇った…

そんな気がした…

DVDはゆっくりと再生される

消えていた筈のTVがつき、画面に何かが写り出す

画面の確認よりも再生を止めるのが先だと思い

リモコンで停止ボタンを連打

が、効かない…

(当然か…)

TV、DVDのコンセントを抜いた

これなら、と思ったが画面はついたままだった…

(オイオイ…反則だろぉ…)

と思っていると…携帯から声が…

藁にもすがる思いでTに話をすると

T「Kさん…今回はマジにヤバイです…。悪霊とかもぉそういうレベルの話じゃありませんね…。すぐに部屋から出て下さい…でうちに来て下さい、まずはそれからです。」

(悪霊とかのレベルじゃないって…じゃあ何んなのよ…)

と思いつつ支度をする

画面は見ない様にしていたがチラッ見えたソレが信じられずに釘付けになった…

映像は荒いが何処かの商店街を歩いている

(っていうかこれって家の近く?えっ!?すぐそこだぞ…)

それに気付くと画面が酷くブレて見にくくなった…

(これは…走ってる?誰かが…)

ヤバイ!と思い玄関のドアに手をかける

不意に画面が砂嵐になってドアを映し出した

家のドアだ…

画面から少し音が聞こえてくる…

女の…狂ったような不気味な笑い声だ

ピ~ンポーン、ピ~ンポーン、ピ~ンポーン、ピンポンピンポンピンポン…

絶望の音色が部屋と俺の耳に響き渡っていた

画面には青い顔をした俺がドアの覗き穴越しに映されていた

覗き込まれている…

逃げ道は…ない…

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン…

ドン…ドンドン…ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

狂いそうだった…俺は玄関から一歩も動けずジッとドアを見つめていた

ハッとして鍵を確認してから前にTから教えてもらった簡易的な結界を張る

出入口、窓際の全ての前にコップに入れた日本酒を…

それから心の結界…広い、青空の下、緑の丘に立っているイメージをする

悪寒を感じた時、悪いモノの気配を感じた時にする心の結界だ

ある程度これでいつも難を逃れるのだが

イメージに何かが入って来たのを感じた

空を暗雲が覆い、草木は枯れ血の雨が降ってきた…

(あぁ、今回は本当にダメなんだ…)

心の中で少し諦めた時

ドア越しに声が聞こえてきた

「…ずぃ…ばせん…すぃ゛ばせん…ハサミを貸じてぐださ…い…」

(ハサミを?何故……?)

手足がガクガク震える

そうか…この女…俺の目をえぐる為のハサミを借りようとしているんだ…

恐怖に意識が朦朧としたが一気に目が覚めた…

TVの画面にソレが映し出されていたからだ

バサバサのショートカットに目は飛び出ん程に見開かれ

赤黒いロングコートを着た女がコチラをジッと見て笑っている

ドンドンドンドンドンドンドンドンピンポンピンポンピンポンドンドンピンポンドンドン…

「貸ぜー貸ぜーはやぐあげろぉぉ――はははははははははははっ…」

頭がボーっとする

もう開けて楽になろう…

そう思った時…

ドアに手をかけたその時、俺の手を包む優しい感触がした

この感触を俺は知っている…

確か幼稚園の頃

留守番で家に独りでいる時に寂しくなって泣いている俺の頭を撫でてくれた…あの手だ…

よく独りになると必ず一緒に遊んでくれる黒い着物を着た女の子がいた

小学生の頃も遊んだと思うがよく覚えていない…中学、高校に上がるともう忘れてしまっていた

(あぁ、黒子…俺は君を知っていた…忘れてしまっていたけれど思い出したよ…温かい手を…優しい笑顔を…)

込み上げてくる温かい感情を掻き消すが如くドアは鳴り続ける

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

「開げろぉ~…開げろぉ~ハ…ハ…ハハハハハハハ―刳り貫い…でやるょー」

それでも黒子の顔をジッと見る俺…

黒子は俺の頭を軽く撫でるとドアを開けずにスッと外に出た…

と同時に外からもの凄い女(?)の悲鳴が聞こえてきた…

覚えているのはここまでだ…

気が付いた時にはTが横に居て心配そうにコッチを見てる

T「大丈夫ですか…Kさん…一体何が…」

事態を把握しきれていないTがキョロキョロ部屋を見ながら俺に問いかける

俺「…んー、何だか知らんが助かったみたいだな…」

T「え!?どういう事ですか?アレは大体助かるとかそういうレベルの相手じゃなかった筈なんですけど…」

俺「俺にも良く分からんが…黒子が…」

部屋の隅をみる…

そこにはもう黒子は座って居なかった…

胸の奥でズキンと何かが痛んだ

怖い話投稿:ホラーテラー 独りさん  

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