短編2
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職業柄死体検案書というものを毎日見ています。

自然死(老衰)、病死以外は出来るだけ詳細なお話を聞かせてもらうようお願いしています。

ほとんどの場合が自然死、病死なんですが今のご時世自殺も少なくありません。

自殺の場合ほとんどが首吊りです。

その中で焼死と書いてある死体検案書がありました。

自殺による焼死でした。

遺族の方に自殺について聞くことは非常に心が痛いんですがやむを得ず

「…お亡くなりになられる前なにか気になることはございませんでしたか?」

言葉を選びながら私は聞きました。

母親にあたる人は私にこう答えました。

「狐が憑いていたんです」

???

なるべく顔に出さないよう日々努めているんですが意表をついた言葉に私は思わず首を傾げてしまいました。

それを見て母親は溜めていたものを吐き出すかのように一気に話始めました。

息子は神社やお寺が好きで休日になるとよく参拝に行っていました。

数ヶ月前連休を使いいつものように息子はお寺巡りをしてくると言い出ていきました。

帰りが遅いなと心配していたところ深夜遅く息子が帰ってきたのですが独り言をつぶやきながらご飯も食べず部屋に入りました。

疲れているのかな。

と放っておいたのですがおかしくなったのはその時からです…。

…母親はそこで一息つき私を見ました。

私は母親を見つめ話始めるのを待ちました。

……仕事に行かなくなり部屋の中に入ったきりほとんど出てこない。

日中は寝ているようで夜になると何やら音がする。

気になって部屋を覗きに行ったら真っ暗な部屋の中、月明かりに照らされながら踊っていたそうです。

一人で円を描くようにくるくるくるくると何度も回り名前を呼んでも気がつかない様子で

楽しそうに踊っていた。

時おり動物のような鳴き声を放ち母親は肝を抜いたとか。

母親は心配になりお祓いに何度も連れて行こうとしたのだけれどそれを察してかことごとく逃げられたり隠れられたり。

息子さんは体格のいい人だったようですが大きな身体を小さく曲げて信じれないような場所に隠れるそうです。

(仏間の隅とか洗面台の下とか…)

母親は家にお坊さんを呼びました。

お坊さんは

「狐が憑いている。

私では手に負えない」

そう言ってそそくさと帰ってしまった。

それから間もなくして

自ら火をつけ命を絶ったそうです。

事実かどうか本人にしか分かりません。

でもご本人さんはもういらっしゃいません。

書面上自殺で扱われます。

怖い話投稿:ホラーテラー じゅりさん  

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