短編2
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電話の子機

私が小さい頃の話。

物置がわりに使っているような部屋で3歳年下の弟と遊んでいる時、電話の子機を見つけました。

幼かった私達二人は電話が大好き。特に内線で父や母と話すのが面白くて仕方ありませんでした。

弟を「お母さんに電話しよう!」とそそのかし、内線ボタンを押す私。嬉々として母が出るのを待つ弟。

ふ、と弟の表情が曇りました。「なんか、変な音がする」と子機を渡してきます。

おそるおそる子機に耳を当てる私。子機からは「う゛う゛ぅぅぅ……」とわざとらしいうめき声のようなものが聞こえました。

紛れもない人の声でした。私は「ははーん、お母さんが私達を驚かそうとしているんだな」と思い(事実、そのような悪戯好きな母でした)、子機に弟と二人で「おまえは誰だ!」「お母さんでしょ!」と大声で言いながら笑っていました。

それでも内線の相手は呻くばかりでした。

痺れを切らした私達が電話を切り、電話本体のある居間へ行きました。

母は台所に立っていました。

「お母さん、電話に出て怖い声だしてたでしょ!」

「知らないよ。そんなの」

「嘘だ!」

「本当だって」

この辺で私達二人はもう怯えていましたが、母が嘘をついて私達二人をからかっているのだということで納得しました。

ですが、実はこの数ヶ月前に電話を買い換え、子機の本体は既に業者に引き取られていました。捨てそびれた子機だけが物置に放置してあったのです。

もちろん、それは私も知っていたのですが、幼く物を知らなかった私は内線ボタンを押せば家の中の電話に繋がるものだと思い込んでいました。

本体の無い子機はどこに通じるのでしようか?もしかしたら、混線していた?

混線していたとしたら、電話の向こうの人はどうして呻いていたのか。

今となっては知りようも無いのですが。

怖い話投稿:ホラーテラー のろさん  

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