短編2
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同級生

小学四年の頃、よく一緒に遊んでいた女の子がいました。

彼女は一つ年下の弟と、どこへ行くにも一緒でした。

一人っ子だった私は、とても仲の良い姉弟を羨ましく思う反面、少し違和感を覚えていました。

姉よりも体格が良くて、性格もしっかりしているのに、自分の友達とは一切遊ばず、常に姉と行動を共にしている。

歩く時はもちろん、可能な限りはずっと手をつないだまま、ことあるごとに見つめ合って微笑み合う姿が、私には不思議でした。

そんな彼女は、私と同じクラスだった間に、苗字が2度変わりました。

それが何を意味するのかは解りませんでしたが、出会った時の苗字が違う苗字に変わり、しばらくしてまた元の苗字に戻ったのです。

ある日、彼女が学校を3日ほど無断で休みました。

担任に様子を見てくるようにと、プリントを託され、彼女の家を訪ねました。

この辺りでは、よく見かけるタイプの古びた小さな借家。

その玄関や窓は全開、家の中は家財道具がことごとく破壊され散乱。

そして、何枚もの血まみれの布団が外に放り出され、泥だらけに…

玄関先には点々と落ちた血の跡、割れて残ったガラス窓には、手形が崩れたような形の血の跡が所々に付いていました。

もちろんそこには、彼女も弟も家族の姿もありませんでした。

翌日、見たままを担任に報告すると、とても驚いた様子で、それからはバタバタと忙しそうでした。

数日後、『○○さんは急ですが転校して行きました』と話があっただけで、詳しくは教えてもらえませんでした。

あの姉弟は、荷物も持たずに一体どこへ行ってしまったんだろう?

あれは、誰の血だったの?

そんな不可解な出来事も、記憶の奥に沈みかけていた、5年後…

中学三年生の修学旅行先で、彼女とすれ違ったんです。

すれ違いざまに、『大丈夫だったの?』と聞いた私に、

『うん、元気にしてるよ』と笑顔で答えてくれました。

『弟は元気?』

『…………』

彼女の返事を待つことなく、観光客の人混みに押し流され

『じゃあね、バイバイ。』

『うん、バイバイ。』

もう、25年も前の出来事ですが、手をつないで寄り添って帰って行く姉弟の後ろ姿を、今でも時々思い出します。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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