中編3
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ありがとう、先生①

私が小学4年生のときの話です。

私は小学生のころ人見知りで友達が少なく毎日学校に行くことが苦痛でした。

特にいじめられていた訳ではなく

ただ人と接することが苦手だったのです。

担任の先生は遠藤先生という男の先生でした。

遠藤先生は私にとても優しく接してくれました。

私は運動が大の苦手で特に水泳が嫌いでした。

夏休みが近くなったころでした。

水泳が苦手な私に遠藤先生が

「実花ちゃん(私の名前)、先生も水泳が苦手なんだ。夏休みに一緒に練習しないか?」

と言ってくれたんです。

すごく嬉しくて恥ずかしかったですが

「…お願いします。」

と返事をしました。

練習は3日に1度くらいで先生と市民プールで練習するのがとても楽しみでした。

夏休みも残り3分の1くらいになったときでした。

私を市民プールから自宅まで車で送ってくれた先生。

別れぎわに先生にこう言われました。

「実花ちゃんは先生とこんなに仲良くできるじゃないか。クラスの子達とだってきっとできるよ。新学期になったらみんなと仲良くしてあげてね。約束だよ。」

私は先生と約束したのです。

新学期になったらクラスの子達と仲良く遊ぶことを。そして先生と練習した泳ぎをみんなに披露する事を。

自宅に到着し、いつも通りお礼を言って別れました。

しかし車の窓ごしに手をふる先生の後ろに確かに何かがいたのです。

黒い影のようななにかが…

「えっ!?」

と思ったら車は走りだしてしまいました。

妙な胸騒ぎがしてその日は眠れませんでした。

次の日、信じられないことがおきました。

先生が車で事故にあい亡くなってしまったのです。

ショックで泣きわめく私をお母さんも泣きながらなだめていました。

私は残りの夏休みはずっと家に引きこもっていました。

そして迎えた新学期。

学校に行く気にはなれませんでしたがお母さんに

「先生が悲しむから」

と言われて登校する事にしました。

沈んだ気持ちで通学路を歩いていると私の少し前を同じクラスの女の子が信号待ちをしていました。

先生との約束が頭をよぎります。

あと数歩で女の子に並ぶところで私は立ち止まってしまいました。

「一緒に行こう」

たった一言の言葉がこれほど重たいものだとは思いませんでした。

迷ってる間に信号が青に変わってしまい

女の子は歩き出してしまいました。

「先生…やっぱりダメだよ…」

私は先生との約束を守れないと思い

目から涙が滲んできました。

そのときでした。

何かに後ろから背中を押されたのです。

もちろん後ろには誰もいません。

その時私は

「先生だ」

と思いました。

先生が私を後押ししてくれたのだと思ったのです。

私は走りました。

前を歩く女の子のところへ。

そして勇気を振り絞り肩を叩いて言いました。

「一緒に学校行こうよ」

女の子「うん、いいよ」

その言葉を聞けたのは遠藤先生が私を後押ししてくれたおかげです。

今でも心から感謝しています。

先生の隣にいた黒い影は未だになんだったのか分かりません。

死神だったのか、幽霊だったのか、あるいは私の見間違いだったのか。

いずれにしろ先生は亡くなってからも私を見守ってくれていました。

毎年お墓参りは欠かしません。

日々感謝の気持ちも忘れません。

今でも先生は私を見守ってくれている気がするのです。

いつもありがとう、先生。

怖い話投稿:ホラーテラー ババシャツさん  

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