中編3
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優しい彼女

俺と4つ上の彼女(以後A)とは長い付き合いである。今日はAが俺の家に来ている。久々に休みが取れたので、Aが来ていた。

でも俺は気落ちしていた。そんな俺の様子にAは慣れてしまったらしい。

「はぁ…どうしたんだろう俺……」

俺は最近何をやってもついてない。金も仕事も上司も。

「そんな時期もあるって」

Aは微笑み優しく慰めてくれる。

やはりこういう時は年上の彼女がいるのが頼もしい。

「私夕飯作るわ」

掃除を終えたAはそういい、買出しに出かけた。今日の夕飯は俺の好きなハンバーグだそうだ。

「結婚したらこんな感じなんだろうか?」

ふとこんな事を思った。

最近Aは結婚話を持ち込んで来る。俺はそのたび曖昧に反応してはぐらかしている。しかしAもいい歳だ。

じつの事を言うと俺にはもう一人彼女(以後B)がいる。Bは俺より4つ下だ。22歳の彼女と30歳の彼女似たように見えて全然違う。

俺は悩んでいた。一週間前俺はBと一緒にいた。別れを告げる為に。後めたさはあったが仕方がなかった。

でもBは聞かなかった。

「貴方の子どもが私のお腹のなかにいるのよ!」

と泣いて訴えて来た。俺は悩んだ。流石に子どもは見捨てられない。

「ただいま~」

Aが買出しから帰って来た。俺はソファアにねそべり煙草を吸いながら、

「お帰り」

とAの顔を見ずにいった。正確に言うとAの顔を見る勇気がなかった。

「♪~」

Aは上機嫌に鼻歌を歌いながら、料理を作っている。親はこういうゆったりした時間が好きだ。

俺はやはりAが好きだ。でも俺の子どもを産んだBを見捨てることは、俺には出来ない。

「ご馳走さま」

ハンバーグはとても旨かった。

この美味しいハンバーグを頂いたあとに話すのは気が引けるのだが、タイミングを逃したく無いので、今すべてを話そうと決意した。

彼女が俺に背を向けたとき俺は話を切り出した。

「なぁ俺さ…」

「何?」

「謝らないといけないことがあるんだ…」

彼女は無反応だった。俺にとっては話しやすい状況だった。

俺は話を続けた。Bの事。子どもの事。そしてBを見捨てられない事。

Aの反応は意外な物だった。それ以上何も言えずうつむく俺を優しく抱き締めてくれた。Aは泣きながら俺を抱き締めた。Aの涙が俺の肩にこぼれ落ちた。

「…有り難う。本当の事を言ってくれて、貴方の口から本当の事を聞きたかったの。私ずっとまってたの。本当の事を言ってくれる日まで。」

俺は涙が止まらなかった。Aへの想いが涙となって流れ続けた。

「泣かないで」

俺以上に泣いていたAがなんとか笑顔を作り俺を慰めた。

いつも以上に優しいA。

「大好き」

俺の涙を拭いながら言う。

「今日で、これで最後だね…」

Aが俺に言い聞かせる。

最後?本当に?

「どうして笑ってられるんだ!怒りは感じ無いのか?!」

俺は問いただすようにAに言う。

Aは俺をなだめながら、

「私本当に愛してたのよ。別れるのは辛いけど貴方なら独りで大丈夫」

独りで大丈夫?

「今日まで有り難う。愛してるわ。私後悔してないの。貴方に会えたのも、貴方に愛されたのも、貴方を守れたのも。さあもう帰してあげるわ。本当にごめん」

周りを見渡すと俺は灯のついてない薄暗い部屋にいた。部屋は荒れ果てて俺は独りだった。

Aはもういない。俺は現実に戻されてた。

Aは俺の盾となり刺されていた。そこにはBもいた。

Bは俺に捨てられると思い、俺目掛けて襲って来たのだ。

Aは俺より早くBに気付きとっさに俺をかばい、刺された。

Aは俺が襲われた理由を知らずに死んでいった。

「独りにしないでくれ」

俺が目を閉じると、Aが優しく微笑んでいた。

「しょうがない人ね」

Aはクスリと笑うと俺の手を引いた。

俺の意識は今現実(ここ)にない。でも今の俺にはそれがいいのかもしれない。

何をやってもついてない現実で生きて行くよりは、あの世でAと楽しく死後の世界を過ごす方が楽しいに決まっているし、あの世に抵抗もない。

俺は今Aと楽しく過ごしている。

「…独りにしない」

怖い話投稿:ホラーテラー 初コメハンターさん  

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