中編7
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風呂場の電気

 コピペ

 そういえば、つい先日丸一日休みの日があったんですよ。いやー珍しい日もあるもんだなって。すごく嬉しくてその日は昼まで寝てたんですよね。14時過ぎ?ぐらいまででしょうか。その日は曇りだったので、日の光は僕の眠りを途中で妨げることはありませんでした。

 いいだけ寝たので、僕はいい気分で起きることが出来ました。起きた後はPCを起動し、YOUTUBEでとってもいい音楽を聞きながら過ごしていました。すると誰かが階下に下りて行く音が聞こえてきました。

 ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ。

 親父かな? 別段急ぐわけでもなく、ゆっくりとした歩幅で階段を下っていきました。

 少しして、ぼくもそれに続くように階段を下りました。居間にたどり着くとふと違和感を覚えました。

 あれ? 誰もいない…? 誰かが階段を下りていったはずなんだけど。

 うちで飼っているダックスフンドもその日は珍しくハウスで毛布に包まって寝ていました。珍しいな、いつもなら起きたらとびついてくるのに。

 まあいいや。僕は気にせず、洗面所に行きます。洗面台の電気をつけヒゲを剃ろうと新調した髭剃りをコンセントにさします。

 僕の家の洗面所の構造は、以下の通りになっています。

   鏡

  −−−

   ↑

ド  僕

  −−−

  風呂場

 非常に簡単に書くとこんな構造です。風呂場を背にして鏡を覗き込むスタイルですね。逆に言うと、ヒゲをそるために鏡を見るということは、確実に風呂場が鏡に映るというわけです。だからこそおかしいのです。あの現象は。

 僕はひげを剃りながらふと目を上げ鏡を見ました。いつの間にか風呂場に電気がついています。

 ん? なんだ?

 僕はほんの少ししか鏡から目を離していません。なのに…

 なぜ電気がついているんだ?

 ちなみに僕が最初につけたのは洗面台の電気であって、風呂場の電気には一切触れていません。なのになぜ? 親父か誰かがつけたんだろうか? いや、そもそも誰かがあのタイミングで電気をつけることなんて不可能だ。そしてあの一瞬にして僕が気付かないうちに電気がつくことなんてありえない。

 僕は背筋が寒くなっていくのがわかりました。心臓がいつもの倍以上の音に聞こえてきます。

 僕は言い知れない恐怖に襲われ、髭剃りを手に持ちながら鏡越しに電気のついた風呂場を見続けていました。僕は気付いてしまったから。今日は家に誰もいるはずがないことに。前日の夜に今日は全員出かけるという会話を家族でしていたことに気付いてしまいました。家族はすでに全員出掛けているのです。そもそもあの階段を下りる音からありえない。おかしいと思うべきだったんです。

 僕意外誰も家にいるはずがないのに、一体誰が階段を下りるんだ…?

 考えれば考えるほど動くことが出来なくなっていました。その間も心臓の音は大きくなっていくばかりでした。鳥肌はどんどん増えていきます。まるで何かを警告するようにぞわぞわと鳥肌は体中に広がっていきました。

 だめだ。気にしちゃだめだ。

 僕は自分で電気をつけて忘れていたんだ。そうだ。そうに違いない。自分に言い聞かせるように僕は頷きました。

 そうすると不思議と体が楽になっていきました。そっと振り返り、風呂場を覗き込みます。そこにはいつも使っている風呂場が煌々と照らし出されていました。

 ふう。よかった。何もない。やっぱり自分でつけたんだな、きっと。

 僕は風呂場の電気をパチンと消し、鏡に向き直りました。

そして鏡を見ました。

 …!!?

 僕は凍りつきました。また、電気がついている…!!?

 するとその瞬間、ぞわっと今までとは比較にならないほどの悪寒が僕を襲いました。季節は夏。その日の夜は蒸し暑くて寝付けなかったほどなのに。その寒気は風呂場の奥から漂ってくるものでした。

 僕はじっと動けずに、ただただ鏡越しに風呂場を見続けることしか出来ませんでした。目を閉じることさえも出来ずに。僕は目を見開いたまま、風呂場を見つめていました。見ちゃいけない。全身全てが感覚器官になってしまったように、五感は研ぎ澄まされていきました。

 耳鳴りがひどくキーンという音は鳴り続けていて、心臓がギュッ締め付けられるように痛み、僕の体はピンと張り詰めていました。気を付けの状態で体を硬直させ、目を見開き鏡を見続けることしかどうしても出来ないのです。

 怖い。恐怖心から体は全く動きませんでした。すると浴槽から何か黒いものがゆっくりと浮かび上がってきたのです。

 怖い。見てはいけない。そうは思いつつも、人間というのは面白いもので、時におかしくなってしまいそうな恐怖心よりも好奇心が勝ってしまうことがあるのです。僕はそれが何なのか確認したいという好奇心にとらわれていました。このときすぐに逃げていれば、と今でも思います。

 その時は全身が震え上がるほど怖いのに、それを確認したいという意識が働いてしまい、僕は鏡越しにそれを見続けていました。その黒い物体はゆっくりと浴槽の中からあがってきます。

 なんだろう?

 すると、ガシッ! と、浴槽のへりを人間の手のようなものが掴みました。僕はビクッとなり、初めてそれがなんなのかがわかりました。

 浴槽からあがってくる黒いもの。それは、髪が異常に長い女でした。

 僕が気付くと同時にその女は動きを早めました。カク、カク、と間接がイカれているのか、変な動きをしながら今度は逆の手も浴槽のへりに手をかけていました。そしてガタッ! という音と共に、その女は浴槽から這い出てきました。

 白いワンピースを着た女です。体は真っ白で骨のように細く、両足はあらぬ方向にまがり、立つことすらままならない状態でした。腕で体を這いずるように出てきたのです。

 僕は今でもその女の顔だけは忘れることができません。本来両目があるところに窪みがありました。がっぽりと空洞になっているその両の目で僕を見据えてその女は、笑ったんです。ニヤッと。

 うわあああああああああああああッ!!

 僕はあまりの恐怖に叫んでいました。僕は持っているものを全て投げ出し走り出しました。

 ガタン、ドタッ! 洗面所の扉をバーン! と開け放ち勢いよく走りました。

 人間とは不思議なものです。そういう時は外に逃げるべきなのに、決まって一番安心できる場所に逃げるんです。そう、自分の部屋です。

 僕は居間をダッシュですり抜け、階段を上り始めました。2段飛ばしで階段を駆け上り、階段の曲がる部分でふと後ろを確認したのです。するとそこには、すごいスピードで匍匐前進で追いかけてくるあの女がいました。ありえないスピードなんです。

 うわああああああああああ! とまた僕は叫びながら前を向き直り走りました。

 一瞬しか確認できませんでしたがその女は、やっぱり笑っていたんです。見えていないはずのあの空洞で僕を見つめながら、口元には不気味な笑みを浮かべながら、考えられないスピードで階段を上ってきているんです。這いずりながら、僕が上る音よりも早く、ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ! という音が聞こえてきます。 早い!追いつかれる! 頭の中ではあの女の顔が映っています。

 僕は自分の部屋の扉を開けて、思いっきり閉めました。がちゃん! それと同時に、バーンッ! という、扉に何かが思いっきりぶつかる音がしました。そして何度も、バンバン! バンバンバンバン! という扉を叩く音がしました。僕は必死でごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! ごめんなさい! と謝りながら座り込んで扉を押さえていました。

 5分くらいでしょうか? 扉を叩く音が急にやみました。僕には30分にも1時間にも感じられた時間でしたが、今思えば実際の時間にするとそれぐらいだったのでしょう。扉の前の何者かの気配もなくなりました。

 はあ。やっと終わった…。一体なんだったんだろう。

 僕はあの顔を思い出しただけでガタガタと震えてしまい、あまりにも怖かったため、爆音で音楽をかけることにしました。音が大きければ大きいほど、安心しました。ピースフルな曲調が聞きたくて、好きなバンドの曲を爆音で流すことにしました。そして1、2曲聴いたところでやっと恐怖心は薄れ、mixiでも見て恐怖を紛らわそうと思ったのです。とにかく部屋の外には一歩も出たくありませんでした。ドアを開けるとそこにまだいる気がして…

 そしてネット開き、mixiを開いたところで、

 ジジ…ジジ…

 なんだ? 曲が途切れ途切れになっていました。配線の接触が悪いのかな? その間も曲は途切れ途切れに爆音で流れ続けていましたが、ジジ…とという音と共に、ブツン、と切れてしまいました。そしてスピーカーは何も音を出さなくなってしまいました。iTunesでは曲が流れている状態だったため、やはりスピーカーの故障だと思い、スピーカーに耳を近づけたところ、

「逃げるなぁぁーーッ!!」

 スピーカーから女の低い叫び声が聞こえてきました。僕はそこで気を失いました。

 夕方、帰宅した母親に起こされました。僕は部屋の真ん中で倒れていたそうです。母親が僕を起こし、最初に聞いたことが、

「あんた、なあに、これ…?」

 母親に言われて僕は外側から自分の部屋のドアを見ました。僕の部屋のドアノブには、長くて黒い髪が大量に巻き付けられていました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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