ペットの猫「タマ」が最近異常な程食欲旺盛になってきているので、飼い主のAは心配していた。
食事を特別な餌に変えたわけでもないのに、突然よく食べるようになったのだ。
昔から太っていたタマだったが、この事でさらに体重が増した。
心配になったAはタマを連れて動物病院に行った。
先生「食欲の増加の原因は不明です。しかし太ったのは間違いなく食べ過ぎのせいです。できれば食欲を抑える為の薬を出したいのですが、原因がわからないので今は出す事はできません。暫く様子を見て、何かあればまた来て頂けますか」
A「はい」
不安を抱えたまま自宅に帰ってきた。
A「タマ。ごめんな。原因がわからないから、今はお前を治してやる事ができないんだ」
タマ「ゴンゴン」
A「ん?」
変な鳴き方をしたタマだったが、Aは「大丈夫だろう」と思い、気にしなかった。
タマに少しだけ餌をあげて、Aはベッドで眠った。
翌朝、目を覚ましたAは悲鳴をあげた。
なんとタマが昨日の何十倍にも巨大化していたのだ。
タマが突然暴れ始めたのでAは止めに入った。
しかしタマはそんなAを後ろ足で蹴飛ばし、吹っ飛ばした。
A「う…タマ…」
タマはAよりも身体が5倍くらい大きくなっていた。
タマ「ゴンゴン ゴンゴン」
A「ゴンゴン?」
A「タマ!ゴンゴンてなんだ?」
タマが答える筈もない。その前に猫なので喋る事はできない。
そしてタマ突然走り出し、ある扉を開けた。
タンスだった。
タマはタンスの中にあった何かを取り出した。
それは「タンスにゴンゴン」だった。
タマはそれを口に入れようとした。
A「タマー!そんなの食ったら死んでしまうぞ!いいのか!!」
タマがAの方を見て鳴いた。
タマ「ゴン」
これがタマの「うん」という返事なのかは分からないが、Aはタマを止めにかかった。
しかし遅かった。
タマはタンスにゴンゴンを飲み込んだ。
A「あ…あ」
しかし次の瞬間!
タマが小さくなり始めた。
A「は…」
タマはみるみる小さくなり、ついに元の大きさまで戻った。
Aは状況を理解できなかった。
しかしAは思った。
A「もしかするとタンスにゴンゴンこそ、タマの特効薬だったのかも知れない。だからタマは(ゴンゴン)と鳴いていたのかも知れない。特効薬だと知っていての事か、私に特効薬だと知らせる為か。どちらでもいい。タマは元に戻った」
それからというもの。タマはタンスにゴンゴンしか食べなくなったという。
今ではタマはAと元気に暮らしている。
餌はもちろんタンスにゴンゴンである。
怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん
作者怖話