中編3
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金髪の女

そんなに怖い話ではなく、ちょっと不思議に思った話です。

ひと月程前飲み行ったのだが、待ち合わせしていたSから「ちょっと遅れるから○○ビルの下で待っててくれ」と連絡があった。

指定されたビルに行くと、ビルの手前で金髪美女がアクセサリーを売っていた。

年は20代、髪はキャップを被っていたがストレートのロングではっきりした目鼻立ち。

『キレイな女だなぁ』とみとれていると、俺に気づいた美女が声をかけてきた。

「オニサーンナカカテクダサーイ」(多分、お兄さん何か買って下さい)

「ヤスクスルヨ。サービスサービス!」

俺は買う気もないのにスケベ心からちょっと覗いてみた。

彼女はナンシーと言っていた。俺が指輪を手に取ると

「Oh〜オニサーンメェタカイネー!ソレタタノセンエンデース!」

千円ならいいか、と俺はシルバーで龍が彫ってある指輪を買い、別れ際ナンシーは「サンキュー」と投げキッスをしてくれた。

ほどなくしてSが到着し、飲み屋に入った。Sのボトルが入っているスナックだった。

飲んでいるとSが「〇〇が指輪なんてめずらしいな。ちょっと見せて」と言い出した。

俺が装飾品を身に付けるのが嫌いなのを知ってるのでそう言ったんだろう。

「そこで金髪の姉ちゃんから買ったんだ。……千円で」

「千円?随分安モンだなぁ。擦ったらメッキ剥がれるんでないか?」と笑いながら擦り始めた。

「俺とナンシーの愛の証に何てことするんだ」とふざけて言うと、一瞬Sが顔を「ナンシー?」と聞き返した。

そして指輪を見ていたSが顔をしかめた。

「どうした?」と聞くとSは「指輪の内側見てみろ…」と言い、俺に指輪を返した。

俺が見てみると、そこには乱雑に『呪』と彫ってあった。

Sは「言いたくないけど、それ何かヤバいんでないのか?安モンだし捨てるか姉ちゃんに返した方がよくね?」と言っていたが、俺は言われるまでなく帰りにナンシーに返すつもりだ。

それから店を出てナンシーの所に向かうとまだテーブルを広げていた。

俺が「ナンシー!」と声を掛けると下を向いてた女が顔を上げた。

全くの別人だ。金髪だがショートで、光○靖子似のどっからどうみても日本人。

「あれ!?ナンシーじゃないの?」と言うとその女は、「ナンシーって誰?てか、お兄さん客?」とギャル丸出し。

「いや…さっきこの指輪買ったんだけどさぁ…」と見せると

「そんな指輪見たことないし。それにお兄さん見るの初めてだよ。てゆーかナンパ?そーゆうのマジウザいんですけどぉ」

関係ないが、こういう日本語聞いていると外国人のカタコトの日本語の方が気持ちいいと思った。

俺はカチンと来たのを隠しつつ「これ持ってても付けないからあげるよ。いらなかったら捨ててもいいから」と指輪を置いてその場を立ち去った。

あとからSが言っていたのが

「俺が見た時からあの姉ちゃんだったぞ。お前、あの姉ちゃんとナンシーとか呼び合っちゃう仲なのかと思ってた」と。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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