中編4
  • 表示切替
  • 使い方

転ばない理由 3

ザワッと鳥肌がたち急に寒くなってきました。

体は寒いのですが、膝だけはジクジクと熱をもっていて自分の足じゃないような気がしてきました。

猫の重さが微妙に邪魔に感じました。

そんな考えを察したのか、くるくるっと丸くなり寝る体勢になりました。

目だけは俺から外さずに。

あらあらクロちゃんよっぽどあなたが気に入ったのね。楽しそうに言いました。なぜか、この猫は気味が悪かったです。

眠いなら寝ればいいのに片目だけ閉じて開いてる方の目は俺をガン見。

猫ってこんな事するっけ?

猫も気になりますが、さっきの話しの俺と似たような人が呟いていたこと。

避けれなくなった。

かわせなくなった。

何を?

今までは避けれてたから転ばなかったのかな?

解りません。

おばさんに聞いてみました。

その人は何が避けられなくなったか言ってましたか?さあ、ブツブツと独り言みたいな感じだったから解らないと言われ答えが出ません。

何が避けられない。何をかわせない?

俺はたぶん今までは避けてきた。

それが今日いきなり避けれなくなった。

今日は何をした?

今まではしてなくて、今日した事は、解らない。

普段と何も変わらない1日。

特別な事は何一つしてない。

どれくらい考えていたか解らないですが、気が付くと見慣れた風景で物凄く安心しました。

家から一番近い病院に送ってもらいました。

車を降りようとしても、クロがどいてくれません。

おばさんがクロちゃん、バイバイは?と言っても動こうとしません。

そんなやり取りが何回か続いた時、おばさんが急にキレました。

クロ!!もういいでしょ?もういいじゃない?

満足したでしょ?

その人じゃなくてもいいでしょ?

私が居るでしょ!

言う事きかないと、また爪抜くわよ!

え?なに?なんか色々と気になる事を一気に怒鳴った。

爪抜くってなに?

その人じゃなくていい?

訳が解らなくなりました。優しそうな雰囲気は消えヒステリックなおばさんが凄い形相でクロを睨んでいます。

クロはいきなり、おばさんに飛び掛かりタックルを決め外に逃げて行きました。俺を車から降ろそうとドアが開いていたのがまずかったです。

クロは病院の塀に上りこっちを見ていました。

おばさんは怒鳴りながらクロを追っかけて行きました。

俺は助けてもらったのに、これ以上あのおばさんと関わり合いたくないと思い足を引きずりながら、病院に入りました。

自動ドアをくぐった瞬間に足に違和感があり転びました。

受付にいた看護師さん達が飛んで来ました。

ストレッチャーに乗せられ治療室に直行しました。

怪我の具合は6針縫いました。骨には異常がないみたいでした。

以外と軽かったと思いました。

治療が終わり会計を待っていると、近くに居た子供が母親に何か言っています。子供特有の空気の読めない大きい声で。

あのお兄ちゃんだよ。

あのウィーンのドアの所で寝てる人を蹴っ飛ばして転んだの。俺を指差しています。

はい?ウィーンのドアって自動ドアの事かな?

寝てる人?居ないし。

それに、そんな所で寝ないよ。

母親がコラ!っと叱っています。誰も居ないでしょ?あのお兄ちゃんはそんな事してないでしょ?

足が痛い痛いで倒れたの。

これも子供特有のムキになり嘘じゃないもん。見たもん。と喚いています。

子供が俺に近付いてきて言いました。

お兄ちゃん見えるよね?

キックしたよね?

俺が固まっていると母親が近付いてきて、すみませんと頭を下げました。子供は嘘じゃない、嘘じゃないと泣いていました。

なにも見えないよ。

俺なんか蹴っ飛ばしたの?考えて居ると名前が呼ばれ会計を済ませました。

喚いていた子供はジュースを飲みながらニコニコしていました。

物につられたか。

こっちに気付いたのか手を振りながら、もうキックしたらダメだよーっと元気いっぱいでした。

母親はまた頭を下げました。

なんか居づらくなり外で親の車を待とうと思いました。

なにも見えませんが気になったので自動ドアの端の方から出ました。

外に出るとクロが居ました。おばさんの姿も車もありません。

諦めたのかなと思いベンチに座るとクロが太ももの上にちょこんと乗り、低くにゃーと鳴きました。

クロを撫でながらさっきの事を考えてました。

寝てる人を蹴飛ばした?

自動ドアの所で寝てる人なんか居ないよな?

でも微かに違和感があったのは確か。

なんとなく怖い。

クロがにゃーと鳴き手を嘗めています。

良く見てみると、前足の爪がありませんでした。

代わりにカサブタがついています。

爪抜くって…。

あのおばさん何してんの?

気持ちが悪くなりました。そうこうしてるうちに親が迎えに来ました。

それと同時にクロは立ち上がり何処かへ行きました。

親に話しましたが、へえーってそれだけでした。

色々、自分で考えてみました。

今までどうやって避けていたかは解りませんし、なぜ急に避けれなくなったかも解りません。

ただ、目に見えないだけで何かが道やドアの前などいろんな所に居るのかもしれないですね。

何もない所で急に転んだ時はもしかしたら…。

あの赤黒い手も、知らないうちに蹴っ飛ばして怨みをかってしまったのかもしれないですね。

あと、クロは家の近所で立派?に野良をやっています。

怖い話投稿:ホラーテラー 鍵仁さん  

Concrete
コメント怖い
0
2
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ