短編2
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譲れないもの

家に帰ると強盗がいた。

強盗は、俺と妻を縛りあげ、こう言った。

「お前らのどちらかだけ殺さないでやるよ。」

俺は、妻だけは助けてやってくれと頼んだ。

妻は自分だけは生かしてくれと頼んだ。

気が付くと俺は、大きな川の前に立っていた。

どうやら三途の川らしい…

ふと隣を見ると、妻がうつむいて立っていた。

どうやら殺されてしまったらしい…

二人で川に沿ってあるいていると、小さな舟が一艘とその横にガイコツ男が立っていた。

ガイコツ男は俺達にこう言った。

「舟には一人しか乗れねぇなあ、どちらかは泳いで川を渡ってくれい!」

俺は、妻だけは乗せてやってくれと頼んだ。

妻は、何も言わず舟に飛び乗っていた。

死に物狂いで(死んでいるが)、三日三晩川を泳ぐと、大きな扉に着いた。

中に入ると、妻が俺を待っていた。

そして二人で長い長い廊下を歩いて行くと、奥では閻魔大王が腕組みをして待っていた。

閻魔大王は俺達を睨み付け言う。

「天国に行けるのは、どちらか一人だけだ!先着一名なのだ!」

俺は、妻を天国に行かせてやってくれとお願いした。

妻は、私の方が早く着いたと力説していた。

そして、妻は天国へ、俺は地獄へと行くことになった。

妻は申し訳なさそうに俺に言う。

「あなた…なんか、ごめんなさいね…」

いいんだ…

俺は、お前への愛だけは誰にも譲れないんだよ…

地獄へ向かう地獄電車に乗って、俺は地獄へ向かった、時刻は午後5時5分だった。

電車が走り出すと、俺の前に老人が立っていた。

俺は老人に席を譲ろうと立ち上がった。

と、その時、両隣の乗客も席を立ち上がり、老人に席を譲ろうとした…

立ち上がった三人は互いに顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。

老人が、俺達にこう言った。

「地獄もそんなに悪い所じゃなさそうじゃのう!」

地獄電車の中で、拍手の渦が巻きおこった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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