中編3
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霊園にて

「え?本当ですか!?ありがとうございます!これから宜しくお願いします!」

昨年末不況の煽りで会社が倒産して、長い就職活動の末やっとの事で再就職先が決まりました。

新しい職場は墓石販売店。郊外の国道沿いにあり、目の前は霊園がある場所。

社長以下4人の小さな会社ですが、待遇面はしっかりしています。

仕事内容は展示ルームに来場されたお客様の応対(見積やプラン作成)・設置の打ち合わせ・霊園の清掃(市からの委託)などで、石の種類やなんか覚える事も結構多く大変でした。

みんな未経験の私に親切丁寧に教えてくれ、人間関係も良好で少しずつ環境に慣れお客様の応対も任せられるようになったのです。

ある大雨が降った翌朝、社長から霊園の清掃を頼まれ先輩のA(先輩といっても3才年下)と竹ほうきとチリトリ、ゴミ袋を持って霊園に向かいました。

「Yさん(私)、広いので手分けしましょう。俺はこちらやりますからYさん向こうからお願いします」

「分かりました」と私は奥に向け歩く。

昨夜は風が強かったから大量の落ち葉やゴミが散らばっていました。

思ったより広くて持って来たゴミ袋はすぐにいっぱいになり、私は会社にゴミ袋を取りに墓の間を通り近道しようとしました。

すると、和服の品が良さそうなお婆さんが隅にあるお墓の周りの落ち葉を拾い集めていました。

私は持っていたゴミ袋にもう少し入りそうだったので

「申し訳ありません。私が集めますよ」と、声をかけるとお婆さんは

「朝早くからご苦労様です」とニコニコと笑い、ゆっくりお辞儀しました。

「昨夜は風雨が強かったからたくさん落ちてますね」かがんで作業していると

「あなたのようにお墓を綺麗にしてくれる方がいると仏様も喜んでいますよ」

お婆さんはそう言った後

「…うちの息子もね…もう少しご先祖様を敬う心を持っていれば。全然お参りに来ないんですよ」

と寂しそうに笑った。

「いまの若い方はそういうものかも知れませんね。……お婆さんはこの近くに住んでいるんですか?」

話題を変えようと話しかけると、突然うしろから声をかけられた。

「Yさん!ゴミ袋ありますか?俺のいっぱいなっちゃったもので」

Aさんが10m程うしろに立っている。

「私もこれでいっぱいで……あれ?お婆さん…Aさんここにお婆さんいませんでした?」

と尋ねるとAさんは

「え?お婆さん?お婆さんなんていませんよ!?ずっとYさん1人で落ち葉拾ってたじゃないですか」

私はAさんに話すとAさんは

「うーん…もしかしてコレですかね?(両手をブラブラさせ幽霊のマネ)俺もここ入ってから不思議な体験はするようになりましたしね!」

Aさんはニヤニヤと笑ってる。

別に怖い思いをした訳ではありませんが、私は「誰もお参りに来てくれないので寂しくて出て来たのかな?」と思いました。

この件があって半月後、私はまた無職になりました。これとは別に本当に怖い思いをして。

その話は後日また投稿させていただきます。

失礼しました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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