中編3
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夜の霊園にて

元墓石屋です。

元といっても一月足らずで辞めてしまったのですが…

この話は私が退職するきっかけ、また先輩のAさんに関わる多くの人が不幸になった話です。

勤めていた墓石店は私を含め5人の小さな会社。

道路向かいには大きな霊園があります。

社長以下従業員はいい人ばかり、と思っていました。

先輩Aさん31才既婚者。

最初は年下だけど明るくてしっかりした人だなって思っていました。

しかし二週間もすると、Aさんの非常識な行動が目に付くようになったのです。

表では上司にへつらい猫をかぶり、裏では会社の唯一の女性Sさんをしつこく口説いたり(Sさんに相談を受けました)、機嫌が悪いとお客様にも無愛想。

極めつけは会社が管理している霊園での肝試し。

「Yさん(私)、夜の霊園はハンパじゃないですよ〜」

仲間や知り合いの女の子を連れて、ちょくちょくやっていたのを自慢気に話していました。

そんなある日、仕事を終え部屋でゆっくりとしていると携帯が鳴りました。

時刻は10時過ぎ、着信はAさんでした。

「もしもしお疲れ様です」

「Yさん?Aです!すぐ霊園に来て!」

それだけ言うと電話は切れました。

正直こんな時間だし、明日も仕事だったので気が乗りません。

しかし先輩からと言うこともあり、私は着の身着のまま霊園に向かいました。

20分後駐車場に到着すると、Aさんの車が止まっていました。

横付けして車から降りると、霊園から怒声にも似た悲鳴が響き渡りました。

ギャアァァー!!

こっちに来るなぁ!!

ただ事ではない!そう感じた私は霊園の中に駆けつけると…

霊園の丁度真ん中あたりの大木の下に、数人の人影が見えました。

木の陰で照明が遮られ顔は見えませんが、声からするとAさん達のようです。

近くまで行くとAさんと友人らしき男性が1人、それに若い女の子が2人。

酒盛りしていたのか?レジャーシートを敷いた上にビール缶が散乱しています。みんなへたり込んでわめいていました。

「どうしたんですか!?大丈夫ですか!?」

「あ…あ…お……」

Aさんはじめ全員パニックに陥り声にならない様子でした。

私は1人離れた所に倒れている女の子を抱えると、女の子は虚ろだった目をカッと見開き呟きました。

『…お…前も…私た…ちの眠り…妨げ…るの…か?』

しわがれた男のような声。

私は慌てて振りほどくと女の子は倒れてしまい、その周りには怒りに満ちた顔で立ち尽くす人達の姿がありました。

男や女、老人に子供もいたと思います。

それを見たAさん達は、我先にと逃げて行ってしまいました。

怖いが女の子を置いて行くわけにもいかず、どうしていいか分からなくなった私は、両手を合わせ目を瞑り必死に謝り続けました。

「ごめんなさい!ごめんなさい!許して下さい!」

かなりの時間が経ったと思います。

「ん…っ!」

女の子が目覚めた声で我に返り、目を開けるとそこはいつもの静かな霊園の風景でした。

私は女の子を放って逃げ出すAさん達に腹が立ったが、駐車場に行くと車はありませんでした。

携帯に掛けても繋がりません。

仕方ないので女の子を家まで送り届け自宅に帰ったのですが、翌朝社長から聞いた言葉に凍りつきました。

昨夜Aさんは車で事故ってしまい意識不明の重体、同乗者の女の子と男性は即死したと。

事故の原因はAさんの飲酒運転との事でしたが、そんなはずないのです。

Aさんは肝臓が弱く下戸なんですから…

私はショックで座り込んでしまったその時!

入り口を見ると、外に見覚えのある人達が立っていました。

それは昨夜霊園でみた人達で、昨夜と一つだけ違うのは怒りに満ちた顔ではなく、不気味に笑っているのです。

私は辞める旨を社長に伝えました。

あれから数週間、未だAさんの意識は戻っていないそうです。

期待に添える話だったか分かりませんが、私が墓石屋を辞める事になった話でした。

読んで頂きありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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