8月の怖話アワード受賞作品に対するオカルト研究家・ホラー作家でもある山口敏太郎氏による動画書評が公開されました。下記の上位7作品全てをレビューしています。

先月に引き続いてのアワード受賞作品のレビューです。レビューにより作品の雰囲気が増してくる気がします!
話に対する感想や補足など今後の作品に活かせる点もあるかと思いますので、是非ご覧ください。

▶ 怖い話グランプリ 8月書評 - YouTube

動画を文字に起こしました。

こんにちは、山口敏太郎です。8月の書評をですね、今からしたいと思います。

大変遅れて申し訳ありませんでした。8月の書評をアップします。上位7作品、それと次点ということで8位も紹介するんですが、8位は前回と同じ「コンビニ」ということで、コンビニの店員さんが霊的なものを見るという話。前月と同じなんで割愛してタイトルだけ紹介ということです。

神七ということで1位から7位までの紹介なんですけども、一本一本紹介していきたいと思います。

7位:

投稿者:neo

これ僕シンプルなんですがすごい好きです。怪談の王道の手法をとってまして、何か日常生活に怪しい物が迫ってくる。そして、それを本人ではなくて最初、隣人とか周りの人から指摘されるというくだりは最高です。

壁に焦点を当てたのは非常にベターはベターなんですけども、壁というのは民俗学における境界ということで、あの世とこの世の境目ということなので、いい部分に焦点をあてたかなと。

なんとなく中にこの何か死体が埋まっている的なことを匂わすようなエンディングで、それが霊的なものなのか物体的な死体なのかは別としてですね、この「壁」という作品は、僕は直球で面白かったなという印象を受けますね。

6位:ビデオ

投稿者:廃ジェム

ビデオという架空の世界とリアルが最後シンクロするんですね。ビデオを見ていると、リアルに霊的なものが迫ってくるのと、ビデオという仮想の空間とリアルという現実空間が交差すると、そして霊的なものが最後実際に来て迫ってくる。

というところが、これまた直球でなかなか僕は好きな作品ですね。大変面白い作品です。

5位:思い出した?

投稿者:すぐる

これは非常に良い作品だと思います。オチが二段落ちになってますね、なかなかうまいですこれ。

ネタバレになるんで詳しくは言わないんですけども、幽霊ではないかと思われたものが人間だったというオチ。その後もう一個重ねてですね、人間ではないかと思われたものが幽霊という。

普通オチはどっちかだけを持ってくるんですけども、このツーパターンを組み合わせて二段落ちにしたという構成力はすごいあると思いますね。

王道の心霊スポットに行ってしまって霊的な事件が起こるという。最初の設定は普通なんですけども、最後のオチで一気にまくし立てて、うまいと思わず言ってしまった印象があります。大変おもしろかったです。

4位:咒紋〈二〉

投稿者:らいと

これはジャパニーズホラーと称してますね。らいとさん、先月も1話目が入賞しまして、今回も4位で入賞してますね。非常に面白くなってきてますね。

トキコさんという、1話にも出てきてるちょっとエキセントリックな女性なんですけども、それがキャラクター化しつつかるかなと、もう一歩進むとキャラ立ちが進むのかなという感じがしますので、もっともっとトキコさんを前面に出してもらってもいいのかなぁという印象があります。

タトゥー=呪い、タトゥーを刻まれること=呪いを刻まれた、みたいな。事実タトゥーはですね、魏志倭人伝にもありますように、魔除けとかそういった意味合いがあることは皆さんご存知だと思うんですけども、そういったところに焦点を当ててるというのが非常に面白いですね。

そして、描写がリアルですね。上位作品の中で、らいとさんの文章はリアルです。多分ですね、日常生活を送られている間にかなりいろんな人を細かく観察されているなと。そういった印象があります。とくにコンビニの店員との心理的な駆け引きですね。そこなんか非常にうまいですね。

また、飲み屋のシーンもまたリアルに書いてます。おねーちゃん方がいらっしゃる飲み屋に行ってどういう感じで男が飲んでるかっていうのを非常に冷徹な目で観察されてうまくまとめてらっしゃいますね。その緻密な観察力と、不可解な死に様の事件が起こること。この対比が非常にいいですね。

リアルに淡々とした日常を描くと同時に、非日常を大胆に描ききってしまうというところがコントラストを奏でていて、僕はすごい好きですね。

3位:コインランドリー

投稿者:言葉遊びの弟子。

オチ一発で決めてきた。ショートレンジで技を決めている感じで上手いです。

子供がゴミ箱などの狭い空間に入ってしまい、悲運の最期を遂げてしまうというのはよくあるんですが、現実の事件としてもゴミ箱に入ってしまって、そのまま回収されて死んでしまった子供の話もあります。

その後、霊的な現象が発生するのは「クロユリ団地」のような話に発展するんでしょうが、この話もその後、怪現象があったのではないかと連想させますね。

場合によっては続編や、実話怪談であれば追加取材をやっていただいて何か不可解なことが起こってないか調べるのも良いのかなと思います。

ジャパニーズ・ホラーとしてやられているのであれば、大作の前振りとして良い感じがします。非常に面白かったです。

2位:こっちにきました

投稿者:

これもいいですね〜。

子供の頃遊んでた友達が姿を消してまた帰ってくるという感じなんですけど、子供の頃転校していった友達いたよね?なんて話したら、同級生にそんなやついないよ。なんて話だったり、

小学校の頃からの友達が中学生になり久しぶりに会って、小学校時代の曖昧な記憶ってのは掘り起こしてみると結構怖かったりしますよね。

それをうまくオンラインゲームというシチュエーションに当てはめていますね。最後の実際に亡くなった友達がバーチャル空間を経て出てくるというオチが最高ですね。

実際パソコンをシャットダウンした瞬間、モニターに異様なものが映るというのが実話怪談でも聞いたことがありますので、良い落とし方をしてるなぁと思いました。

幽霊というのはバーチャル空間に馴染みやすくて、幽霊の存在を感じさせるものがよく散見されますので、今風でよく織り込んでいるなと思います。

キャラクターとしては、おいも・マジポテトというキャラが良いアクセントになってますね。怖い流れをうまく緩和してくれてて良い感じがします。怖いキャラばかりではなく、時々こういう人が入ってくれると面白いと思います。

1位:忘れてはいけない

投稿者:

かつて封じた記憶が戻ることによって恐ろしい真実が明らかになる。

アメリカでは退行催眠が流行っていまして、その催眠師により与えられた情報によって偽装記憶が作られ、親を訴えるケースが出てきて社会問題になっているんですけど、それを連想させるような感じですね。

人間の記憶そのものが怖いというのが非常に出ていて、最後の陰惨な結末に至った時の霊能者っぽいおばさんとのやりとり・攻防戦が非常に盛り上がっておもしろかったです。

出来れば最後にお父さんに無駄な足掻きをしてもらったほうが話としてはまとまったのかなという印象があるんですが、やはり一位になって当然のような最後の最後の恐ろしい結末ですね。

ということで8月のチャンピオンは遥さんということでおめでとうございました!

後の方々も非常に惜しい作品がありましたのでどしどし応募して下さいね。

9月末まで、第9月期怖い話受け付けておりますので、振るってご応募お待ちしておりますので、是非皆さん、頑張って下さい。