健二「なあ、お前等…裁きの穴って知ってる?」
一恵「裁きの穴?何それ?」
俊三「俺は知ってるぜ!確か、その穴に入ったら…罪を裁かれるとか…。」
健二「そう。その穴に入ると…無罪の人間は無事に穴から地上に戻れるが…有罪の人間は地上に戻れず、そのまま地獄に堕ちるらしいんだ…今度行ってみない?」
一恵・健二・俊三は大学で知り合った友人で、現在は夏休み真っ最中である。
一恵「いや!!心霊スポットなんて!!」
俊三「一恵…びびってんの?お前…この話信じちゃってんの?」
一恵「びびってないわよ!!私はオカルトなんて信じないから、怖がる必要なんて無いわ!!」
健二「はは!!じゃあ決まりだな!!」
一恵「でもソレとコレとは話が…」
俊三「よっしゃ!!確か裁きの穴は…○○県だったな。車で2日くらいか…じゃあ早速向かおうぜ。」
一恵「ちょ…。」
こうして三人は、俊三の車で裁きの穴へと向かう事になった。
―2日後 午後11時―
俊三「2日間走りっぱなしで疲れるわ~。おい健二!裁きの穴には後どれくらいで着くんだ?」
運転中の俊三が健二に問いかける。
健二「ほら、あのトンネル。あのトンネルを抜けたらすぐらしい。」
トンネルの中は明かり一つなく真っ暗だった。このトンネルが心霊スポットと言われてもいいのでは…と思える程の不気味さを感じつつ、3人を乗せた車はトンネルを抜けた。
健二「よし、ここで停めてくれ。ここからは徒歩だ。」
俊三「いや~遠かったな。これで裁きの穴は実はありませんでした…なんて事は無いよな、健二?」
健二「情報では確かここら辺に…お!これじゃね?きっとこれだよ!!」
健二はそう言いながら、穴にかぶせてある蓋を持ち上げた。
一恵「え?これが裁きの穴?何か想像と違う…。」
地面にマンホール程の穴がポッカリと開いている。穴の直ぐ近くに注意を促す看板があるものの、見た目は特に変わった様子も無い普通の穴である。
俊三「はぁ?これが裁きの穴?俺はもっとこう…でっかい穴を想像してたぜ…拍子抜けだな!ったく…。俺一番乗り~!!」
ピョン!!
健二&一恵「あ!!俊三!!」
俊三は裁きの穴へと飛び込んでいった。俊三の突然の行動に二人は呆然とし、穴の前で立ち尽くしていた。
―裁きの穴・内部―
俊三「よっと…。なんだよ!思ったより浅いんだな。飛び込んで3秒ほどで着地とはね。上にいる健二と一恵は見えるかなっと…え!!!」
そう言って上を見上げた俊三は仰天した。
俊三「空?…おいおい!!穴の中に入ったのに空がある…どう言う事だ!?しかも…夜だったはずなのに、青空じゃねえか!!おーい!!健二!!一恵!!聞こえるか~!!」
俊三の呼びかけに、健二と一恵の返事は無かった。しかし、すぐ近くから別人の声が聞こえた。
男「お前!!何いきなり叫んどんのじゃ!?驚くやろうが!!それに…変な服装しおって!!」
そこには、男が立っていた。男は40~50歳程に見える。
俊三「あ…すいません。あの~ここ…どこですかね!?」
男「は!?」
俊三「ここ…何県ですかね?それに…おじさんの格好…なんか古臭いですね。」
男「お前阿呆か?ここは広島じゃ!!」
俊三「広島?おっさん冗談キツイって!!穴の中に広島?はははは!!」
男「貴様…!!」
男は俊三に向かって銃を向けた。銃の先には刀が付いている。
俊三「ちょい…待ち!!すいません!!まじで…すいません!!」
男「失せろ!!餓鬼が!!」
俊三は「は、はい!!」
俊三は男から全力で逃げた。やがて、男の姿が完全に見えなくなった。
俊三「たく…なんだよ!!あのおっさん!!」
ゴオーー
俊三「ん?飛行機か?」
ピカ!!!
俊三がそう言った瞬間…空に強烈な閃光が走った。
ドオオオオオオン!!!!
俊三「!!う…!!あ…熱い…あつ…ぃ…あ…っ」
閃光は俊三を容赦なく襲い、一瞬で俊三を黒焦げにした。
―地上―
健二「…俊三が入って30分…か。」
一恵「ねえ健二…もしかして…この穴、本当に地獄に通じてるんじゃないかしら…?」
健二「はは…そんな馬鹿な…。俊三の事だ。もうすぐしたら帰ってくるさ。」
しかし、それからしばらく待っても俊三は返っては来なかった。
一恵「う…ああ…。」
健二「一恵?どうした!?」
一恵「俊三は地獄へ行ったんだわ!!そうよ!!そうに違いないわ!!」
一恵はパニックを起こし、暴れだした。
健二「おい!!落ち着くんだ!!そんなに暴れたら…危ないぞ!!」
健二は一恵を押さえつけようとした。
一恵「放して!!…あ!!」
健二の手を振り払った一恵はバランスを崩し…
一恵「きゃ!!きゃあああああああぁぁぁ…」
健二「か…一恵ぇー!!!!」
穴の中へ落下した。
―裁きの穴・内部―
ドサッ…
一恵「…う…ん?…ここは…どこ?」
一恵は見た事も無い町並みに戸惑っていた。
一恵「ここが…地獄?…いえ、そんな風には見えないわね。この町並みはまるで…外国のような…ん?う…!!」
戸惑う一恵の鼻を、悪臭が襲った。
一恵「何?この臭い…。何かが焦げたような…腐ったような…。」
男「~~~~~~!!!!」
一恵の後ろから男の叫び声が聞こえた。日本語ではない、外国語の声が。その声を聞きつけ、次々と男達が集まってきた。
一恵「え…何?この人達…?あ…痛!!!」
男が一恵の髪を鷲摑みにした。そして、一恵を引きずり始めた。
一恵「痛い!!ちょっと!!放してよ!!」
男「~~~~~~!!!!」
男には日本語が通じなかった。一恵は100m程引きずられ、大きな路地へ連れ出された。
一恵「あっ!!!」
そこには地獄絵図が広がっていた。広場に集まっている群衆。その群集の中心には、何人もの女性の死体が転がっている。ある死体は黒焦げ、ある死体は首を切られている。そして、次々に女性が虐殺されていく。
一恵「こ…これって…魔女狩り…!?いや!!逃げなきゃ!!」
男「~~~~~~~~!!!!」
外国人の男達には、一恵の黒髪が邪悪に思えたのだろう。一恵をギロチンへ引っ張っていく。
一恵「離してよ!!!」
一恵は必逃げようと必死にもがいた。しかし、男の力はとても強く、逃げる事は不可能であった。
ストン…
一恵「ひっ!!」
ストン…
一恵「いやぁ!!」
次々に切り落とされて行く女性の首…そして、遂に一恵の番がやって来た…。
一恵「いやああぁぁぁ…あ…」
ストン…
一恵「ぐぇ…」
ゴロゴロ…
一恵の首は虚しく転がり落ちた…。
―地上―
健二「一恵が穴に落ちて…2時間…か。…くっくっく…!!あっはっはっは!!」
健二は一人で不気味に笑い始めた。二人が穴から出てこない事を喜んでいるのだ。
健二「本当だったんだ!!この穴は…本当に地獄に通じてたんだぁ!!あははは!!!俊三!!一恵!!ざまあみやがれ!!」
健二は顔を穴に近づけ喋りだした。
健二「一恵ぇ…お前…俺と付き合ってる癖に!!俊三と寝やがったんだよなぁ!?この娼婦がよぉ!!俊三!!てめぇも…俺の女と寝やがって!!しかも何回もよぉ…!!お前等は地獄に行って当然なんだよ!!あっはっはっはっは!!!」
一恵は、健二と付き合っていた。しかし俊三の誘惑に負け、体を許してしまった。やがて、一恵と俊三は頻繁に会うようになり、どんどん親密になっていった。健二が二人の関係に気付いてしまうほどに。…健二は二人の裏切りに怒り、二人を地獄に落とそうと考えたのである。
健二「ざま~みろ!!お前等が悪いんだ!!」
健二は穴に顔を覗かせ叫ぶ。…その時である。穴の中から手が4本伸びてきた。2本は黒焦げの腕、もう2本は血まみれの腕である。
ガシッ!!
健二「う!!何だ!!おい!!放せよ!!う…!!なんだよ!!お前ら!!うおぉ!!うわぁぁぁぁぁぁ…」
健二は4本の腕によって、穴に引きずり込まれていった…。
―裁きの穴・内部―
健二「うわあああ!!く…暗いぃ!!…ん?何だ?何か…声が聞こえるぞ!?」
健二は、暗い穴の中を落下しながら「謎の声」に耳を傾けた。
謎の声「地獄とは幻か…否…地獄は実在する…では地獄とはどこだ…地獄とは…貴様等の歴史だ…貴様等が…地獄を作り出しているのだ…私は…“その場所”に貴様等を送り込むだけに過ぎぬ…地獄は…貴様等の愚かさ…罪深さによって生まれるのだ…」
健二「地獄の正体が…俺達の歴史だって!?」
ドサッ…
健二は地面に着地した。そこは鉄格子で囲まれた収容所で、その壁面には鉤十字のマークが描いてあった。…健二が立っている場所は、まぎれもない地獄である。
怖い話投稿:ホラーテラー 最愛さん
作者怖話