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中編3
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忘却の町

「母さーーん!!」

夢か…何度見ても嫌な夢だ。

「どうしたの良夫?またお母さんの夢を見たの?」

「うん…母さんが殺された夢」

そう言うと亜希子がそっと抱き寄せてくれた。

俺の名前は空野良夫10才。目の前の女性は亜希子。年は…分からないや。俺達は今、銀河超特急929(ナインツーナイン)でアンドロポフを目指して旅をしている。

母さんをロボット野郎に殺された俺は、砂漠で倒れているところを亜希子に助けられた。

亜希子はアンドロポフに連れて行ってくれるなら929の定期をくれる、と言う約束で一緒に旅をしている。

ガラガラ

「え〜次の停車駅は『忘却の町』停車時間は1日と3時間6分です」

「車掌さん!相変わらず素っ裸なんだね♪忘却の町ってどんなところ?」

と、白い悪魔へら○ょんぺに帽子を被らせたような車掌さんに尋ねた。

「良夫さん、次の駅は降りてみてのお楽しみですよ」

車掌さんの薄ら笑いを見て興味を持った良夫は、タイタンのお婆さんに貰った宇宙戦士の銃【コスモスガン】の手入れを始めた。

「良夫、無理して降りなくてもいいのよ?」心配そうな亜希子が言う。

「いや、1日も列車に乗ってるなんて暇だよ!亜希子は降りないのかい?」

「ええ…私は列車の中で待ってるわ。……くれぐれも出発時刻に遅れないようにね。…遅れたら置いていかれるわよ」

そう心配する亜希子に「大丈夫大丈夫!亜希子は心配性なんだから!必ず時間までには戻るよ」

そう言って俺は駅に降り立った。

町は思ったよりさびれていて空っ風が冷たかった。周りを見ながら歩いていると、突然呼び止められた。

「おい坊主!お前929の乗客だな?定期と有り金全部出しな!」

しまった!多分銃を抜いても間に合わないだろう。少し考えていると、男はスタスタと歩いて店の中へと消えていった。

「どうしていなくなったんだ?」気になった俺は銃を手にその店に入った。

カランカラン

「へいらっしゃい!…な…なんだあんた強盗か!?ここには何もないぞ!?」

よく見ると、さっきの男がカウンターの中でグラスを片手に震えていた。俺は

「おい!お前さっき定期を盗ろうとして銃を向けたな?」

「へっ?俺そんな事してないよ。勘弁してくれよ〜」

「若いの銃を下ろしな…」

カウンターに座るお爺さんが俯いたまま呟いた。帽子を深く被り、顔はよく見えないが立派な顎髭を生やしている。

「この星はな…忘却の町、ここに住んでいる者は数分前の記憶すら失われてしまう。悪い事は言わん。早く……」

「?」

「…お前誰だ?わしはなんでここにいるんだ?」

俺はここにいちゃいけない気がしてきた。早く929に戻らなきゃ!はや…く…

俺は頭がボーっとしながら何とか駅にたどり着いた。

「なんで?なんで929がいないんだ!?2時間しか経ってないのに…どーしてなんだよ!!」

その頃列車内では…

「車掌さん、私何か忘れているような気がするんだけど…気のせいかしら?」

「由紀子さん、多分気のせいですよ!それにしても列車も何であんな星に止まったか…」

「まぁ車掌さんたら、私由紀子じゃなく美雪よ。そそっかしいんだから。ウフフ」

「あ、これは失礼しました。美雪さん、次の星まで結構ありますからゆっくり休んで下さい」

宇宙には様々な星がある。

人は誰も時の流れに逆らえない。人は誰も過ぎた時を戻せない。たとえ過去に帰っても、そこにはただ思い出の風が吹いているだけ…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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