去年の今頃仕事を終え地下鉄に乗り込むと、左側に40才くらいのビシッとしたスーツ姿のサラリーマンが立っていた。
(会社帰りなんだなぁ)
と思い視線を戻そうとしたが、なんかおかしい事に気づいた。
グレーのスーツに鞄。
一見普通に見えるがズボンのファスナーが開いている。前の座席には大人しそうな若い女の子が座っている。
(コイツまさか露出狂か?)
そう思っていると、女の子は震えているようだった。
俺は咳き込みながら近づいて行くと……!?
ファスナーから青白い華奢な手が飛び出していた。
俺は驚いてしまい見入っていると、女の子と目が合った。
女の子はどっちの意味か分からないが、助けを求めているように見える。
どう考えても心霊現象だが、手の事は言っても信じてもらえないだろう。もしかしたら女の子も見えてないかも知れない。
「高橋さん?」
俺はわざとらしく男に声をかけた。
男はこちらを向く。
「あ、すみません間違えました」
そう言ってる合間に女の子は会釈して立ち上がり、隣の車両に移動していった。
結局男は俺が降りるまでファスナーを開けっ放しだったが、うねうねと動く手がとても恐ろしかった。
怖い話投稿:ホラーテラー 電車男さん
作者怖話