つい先日。
思い切って、使わずにしまい込んでいた生活品を処分することにした。
数年前の大学生だった頃に買ったビデオカメラ。
結局一度も使うタイミングがないままにしまい込んでいた。もったいないが型も古いので処分しようと手に取った。
まだ使えるのか電源のスイッチを押すと起動した。
作業を忘れ、操作をしていると何かが録画されているようだった。
全く撮った記憶がないが再生した。
このビデオカメラを買った日に、部屋でカメラを座っている自分の前の床に置いたままの状況が録画されていた。
カメラのレンズはベランダの窓の方を映していた。
俺はビデオカメラの後ろに座っていたので、自分は映っていなかった。
取り扱い説明書を読みあさっているであろう俺のページをめくる音だけが聴こえていた。
カメラを置いたとき知らずに録画ボタンを押してしまったんだろうなと思いながら消そうとした。
するとカメラが180度回転し、座って説明書を読みあさる私が映ったので手が止まった。
一瞬の違和感。
「あれ?部屋には俺しかいなかったけど、今のは俺が動かしたように見えなかったぞ」
巻き戻して見直すと、俺はあぐらで両手には説明書。
俺とビデオカメラとは少し距離が離れている。
手を伸ばしてカメラに触れて回した動きが映っていない。
ありえない。
しかもカメラに映っている俺はそのことに全く気がついていない。
不思議に思いながら少し怖くなった。
すると説明書を読む俺の背後で、キッチンと繋がるドアが開いていた状態が映っていたのだが、その開いたドアの上から逆さまで髪の長い女の顔だけが現れて、俺の顔を睨んでいた。
するとヤモリのように壁や天井をつたって俺へと近づいてくる。
俺の真上まで来たとき、チャイムが鳴った。
大学の友人と夜の街へ遊びに行こうと迎えに来てくれて、俺はそのまま出かけた。その様子を天井に張りついたままじっと見ている女。
すると女はビデオカメラの前に移動して顔をアップで覗かせた。
「ちっ」と舌打ちしたところで映像が終わった。
血の気が引いたが、すぐにお寺に持って行った。
お寺に入ると、受付にいたいつも明るく笑顔で挨拶してくれる御住職の奥様が、俺を一目見て絶句していた。
「早く本堂に!!」それだけ言うと急いで御住職を呼んで処置していただいた。帰り際に奥様が、「危なかったね、カメラのレンズから女が上半身だして、〇君に抱きついてたよ」
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話