とある街、線路沿いの道を青年が歩く。
青年の右手には小さな赤い箱が握り締められている。
愛する彼女への指輪だ。
彼女は遠く離れた街で暮らしている。
「遠距離恋愛」というヤツだ。
なかなか会うことができないため、「今日こそはっ!」と青年はプロポーズの覚悟をしていた。
彼女とは駅で待ち合わせることになっている。
ここで青年はふと気づく
列車が通らないのだ。
この街は田舎じゃないし、5分に1本来てもおかしくない。
自分はかれこれ20分程道を歩いているから、「通っていない」と断言できる。
(何かあったのだろうか・・?)
(駅にはあと10分程で着く。
先に行って、彼女を迎えよう。)
列車のことは気になるが、歩を進めることにした。
と、その時、後ろから何かの音が聞こえてきた
「タッ、タタタタッ、タタッ、タッタタッ」
遠くから聞こえてくる感覚なのに、その音はハッ
キリと聞こえる。
青年は振り向いた。が誰もいなかった。
ただ、音は今でも続いている。だんだん近づいてくるようだ・・・
「テテッ、テッテテ、テテテッ、テテッテ、テ・・・」
遠く向こうの方に人?の様な影が見える。
人影と音は、現れた途端ピタッと止まった。
(あの音はあの人影が発していたものなのか・・・不気味だな・・}
青年は前を向き直し、歩を進める。
その瞬間!
「テケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケテケ」
奇怪な音が、高速で追いかけてきた!
青年は全速力で前に走った!
後ろから距離を保って、背中にピッタリとくっついて来るものが、「人外」だと確信していた。
だから、決して振り向かなかった。
しかし、恐怖で力が緩んだのか、右手に握っていた赤い箱を落としてしまった。
必死で拾おうとする青年。
だが、彼は見てしまった・・・
不気味に笑いながら
上半身だけで
走って追いかけてくる
愛する彼女の姿を・・!
「そレ、ワ タしに ク れ ルノ?」
怖い話投稿:ホラーテラー ドンコー丸さん
作者怖話